第19話 ①白いパンはおいしかった
秋のブドウの収穫を終えると、3m四方ほどの大きな桶にぶどうを入れ、女性陣が足踏みをしてブドウをつぶす。キャッキャかっやといって踏む。太ももがあらわになったりする風物詩だ。
それを絞り機にかけてブドウの汁を樽に移す。あとは寝かせておけばぶどう酒ができる。
〇×△
搾りかす、ぶどうの皮の部分は捨てずに、納屋の涼しいところに運んである。
煮沸消毒したツボに、きれいな水とともに入れておく。1日のうち少しの時間は日光が照る場所に置いておいて1週間。パンの酵母が出来上がる。
普通は、このまま使うけど、町に売りに行くにはかさばるんだなー。
5個ほどのツボをいったん大きな平たい鍋に移し、ぶどうの皮はきれいに取り除いた。
母さんにお願い。
「水魔法で、この酵母の入った水のうち、水だけを目に見えないくらい細かくして空中に捨て去ってください」
「なんてむずかしいことをいうの。レベル3だとはいえ、そういうのやったことないわ」
少しの間鍋をにらんでいたけど、意識を集中させていたら、水面が波立ってきて、シュワシュワと何かはじけるような音がして、水面がだんだん下がってきた。最後は茶色の粉が残った。
「ありがとう。この酵母でパンを焼きますね」
〇×△
酵母3、塩1、砂糖5、小麦粉60、バター2、水40の割合でこ配合する。きれいな石の板の上で混ぜてこねる。この国はこういう作業台に使えるマーブルがたくさん産出するようだ。
大きめの器に入れて、ちょっとあたたかいところで1時間。膨らんだのを確認して手をぐーにしてたたいてつぶす。打ち粉を振りながら食べやすい大きさに分けて丸めた。濡らした布巾をかぶせてちょっとあたたかいところで1時間。2倍くらいに膨らんだら焼きだ。
もうすごく香ばしい匂いがしてくる。家族中が集まってくる。白くてふっくらしたパンは、食事前にはなくなってしまった。




