聖女候補
イリーナ院長に、修道院を案内してもらった。
修道院は、礼拝ができる広い講堂があり、また教室のような部屋があり、他にも聖教者と言われる牧師達が使用する個室等の様々な部屋があった。
「広いですね。私のいた孤児院とは大違いです。迷子になりそう。」
「ふふっ。じゃあここはしっかり覚えておかないとダメな場所よ。」
「ここは?」
広い場所。数十人が座れる机と椅子、カウンターがある。
「食事はここでとります。朝と昼と夜の3食あります。」
腹が減っては戦はできぬ。確かに一番大事。
「はい。食事の用意などは?」
孤児院では、皆で料理と配膳をして、後片付けもしていた。
「基本的にお料理は、料理人の方が準備してくれます。」
数が多くて、自分たちだけでは難しいのかな?
一度外に出て、別館に入った。こちらは小さい部屋が沢山ある。
「ここが寮になります。貴女の部屋はそこよ。荷物をおいていらっしゃい。」
「はい。」
「あと、服が用意されているはずだから、着替えてから、さっき案内した院長室まで来てくださる?」
「はい、わかりました。」
院長室は講堂のすぐそばだったと思うから、何とかいけそうだ。
入った部屋には、ベットと机が一つあるだけの小さな部屋だった。
壁には鏡があり、女の子の部屋なんだなと思ったりもした。狭いとはいえ、大部屋だった孤児院に比べると、遥かに高待遇と言える。
クローゼットといえるかわからないが、収納があり中には修道服と言って良いのかわからないが、3着のワンピースがあった。
これを、着てこいと言うことか…。
今着ているのも、一応ワンピースではあるが丈も長いし飾り気もない。修道服と言うかシスター服はちょっとカワイイ感じで、少し恥ずかしさを感じるな。
下着も数着置いてあった。旅をして来て汚れているから着替えられるのはありがたい。
単純にありがたいんだらね。
心を殺して?着替えを行う。サイズも問題なさそうだった。
顔がちっちゃくて、目が大きくて、色白で髪の毛は金髪で…。着替え終わって鏡を見るとローザちゃんは、思った以上に可愛い。
旅は、ローザの体力では体力的にキツかったが、バラックの作る冒険者飯が予想以上に美味くて、しっかり食べられていた。
血色も良くなっていて、目覚めた時のやつれきっていた感じとは別人のようだった。
そう言えば、瑛太もこっちの飯が美味いと言っていたそうだ。体力の基本は、食事にある。体力をつけるという目標。何とかなりそうだ。
自分なりに身だしなみを整えて、院長室に向かう。何とか迷わずに行くことができた。
コンコン。
「ローザです。」
ノックして名乗ると、どうぞと言う声がして部屋に入る。
院長室は、机がありイリーナ院長が、座っていた。所謂テンプレな校長室って感じの部屋だった。
机の傍には、一人の女の子が立っていた。年は、私と同じ位だろうか。
水色のキレイなロングストレートの髪型に、目鼻立ちが整った上品な顔立ち。体格は小柄だが、落ち着いた佇まいをしていた。
「紹介するわね。こちら聖女候補で、つい先週からいらしているミリアさんです。」
「ミリア・ハートランドと申します。」
両手でスカートを持ち上げて、挨拶してくれた。
所作が余りにも自然で美しく、見惚れてしまった。完璧なカーテシーと言うやつだな。
「こちらは、同じく聖女候補のローザさん。」
「あ、はい。ローザです。宜しくお願い致します。」
マネしようかと思ったが、やったこと無くて無理だし、曖昧な笑顔を作ってしまったように思う。
「よろしくお願いいたしますわ。」
ミリアさんも笑顔を返してくれた。
「二人が候補と言っても、聖女というのは競うわけではありません。お二人とも仲良く。」
聖属性の魔力持ちは珍しく、世界に数人しかいない。
なので、仲良くしたいものだが、どうだろう?
優しそうな顔してるけど、貴族の娘って事で、悪役令嬢みたいだと仲良くできるか不安だし、イジメられたらどうしよう。
なんて思ってたけど、ミリアちゃんは普通に良いコでした。
「よろしくお願いします。ミリアさま。」
「ミリアとお呼びください。私の方が年も下ですし。」
「でも、貴族様に向かって呼び捨ては…。」
「かまいませんわ。ここでは、皆平等のはずです。そうですわね。院長先生。」
院長先生が微笑む。
問題ないってことか。