新しい命
数カ月がたった。
お腹は大きくなり、何だか不思議な感じ。
お腹の中に、生きている何かを感じる
近頃では、動いたりすることもわかり、愛おしくてしょうがない。
とはいえ、体は重いし、不安で一杯なのだが…。
本当にちゃんと産めるのだろうか?
本当の女だったら…。もう少し不安もなかったかな。
それでも、転生してから、女の子になって毎月血を流し、結婚してからは毎日のように愛する人を受け入れてきた。大丈夫、大丈夫だよ。
それでも、ピータにお腹を擦ってもらいながら、ゆっくりする時間が、本当に幸せ。
もう、エイタの事は良い。
元気にしているようだし、グレートじゃなくて、グラント・ムタとして活躍しているそうだし
たまにピータに様子を見に行ってもらっている。
旦那様にも、たまに息抜きを。と思って、ソーディアムまで、お使いをお願いしている。
身重の身では、受け止めきれんのでな。
悲しいけど、コレって戦争なのよね。
まぁ、戦争ではないが…。
他の女と…。とか考えると、悲しくてしょうがないが、溜まるものは、本当にしょうがない。
と思ってたんだけど。
「エイタさんに、秘技を習ったから大丈夫だぜ。」
親指を立てるマイダーリン。1人でってのコチラではあまり広まってないんだよね。
うっ、ダーリンって、魔族のあの人の口調がうつってしまった。
「あ、でも…。」
「まぁ、そういう事だから。気にするなよ。」
どこまでも優しい旦那さんなのよ。
そういう事だから、私も出来るだけ協力した。
知識だけは、豊富だしね。
そして、また日は過ぎる。
幸せな日々。
って、しんどいし身体は重いし、ピータとは思う存分という訳にはいかないし。ツライ事もあるけど。
お腹の中には、順調に育つ幸せの形があり。
隣には、大好きな旦那さま。
幸せな日々には違いない。
「お姉さま。もう少しですわ。」
臨月となりミリアちゃんが、診に来てくれる。
持つべきは、かわいくて、美人で頼りになる友である。
最近、益々キレイになってきたと思う。
そんな折だった。
「ツツツっ。」
あ、痛くなってきたかな。
痛みが引いて、間隔が空いて、また痛くなる。
「ピータさん。お姉さまを擦ってあげてくださいね。」
「うん。わかった。」
ピータとの付き合いも長くなってきた。平然と返事しているようで、動揺が伝わってくる。
わかるよ。私もエイタが生まれる時、どうして良いか分からなかったからね…。
「私は色々と準備してきますので、あとはお任せしますね。出来るだけ早く戻りますけど。」
「あぁ。ここは任せてくれ。」
あ、ミリアちゃんが行っちゃう。
不安そうな旦那さまを残したって、ねぇ。
でも、いつも優秀なピータが、ちょっとポンコツになってて面白いな。
とか色々しながら、よく憶えているのはこの辺まで。
あとの事は、ちょっと言葉にできない。
ミリアちゃんが進めている痛みの少ない分娩の方法をとってくれたけど…。
まだまだ改良が必要だね。ミリアちゃん。
大変だったよ。ホント。
まだ16歳の発展途上のこの身体には、負担が大きいよ。
とは言うものの、この世界では、この歳で出産経験するの普通みたいだけどね。
エリスも2年前だから同じ年齢だったし。
ミリアちゃんも、お母さまが私の歳くらいに出来た子供らしいね。去年に娘さんを出産したと聞いた。
今はその年の離れた妹をミリアちゃんが、溺愛している。
とにかく、性も根も尽き果てて、横になって動けない。
右手は、ピータが握っていてくれる。ふふふっ。
左には、産まれたばかりの小さな命。
動けない程、身体はだるい。
だけど、こんなに幸せな事はあるのだろうか?
今迄感じたことのない感情に戸惑いながら、幸せ噛み締めるのだった。




