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焚き火を囲んで


あと1日で修道院に着く。


馬車を停めて野宿となっているが、さっきまで気を失っていた私は、眠れずにいた。


馬車を降りると、焚き火をして火を見つめているバラックがいた。

他の護衛や御者さんは、寝ているようだ。

焚き火のそばに座ると、バラックが話しかけてきた。


「目覚めたのか。魔力は大丈夫か?」

バラックが優しい声で言う。

「はい。すっかり回復しました。」

笑顔で答えると、バラックも笑顔になり和やかな雰囲気になった。


「治ったわけではなさそうだが、随分マシになってる。」

左手を動かしながら、バラックが言う。治せないことは、設定上解ってはいたけど、治せない事に歯痒さを憶える。

「私が、ちゃんとした聖女だったら…。」

この呪いは、聖属性魔力だけでは解けない設定。でもこの世界が「ゆうパン」の世界そのままだとは限らない。聖女の力で、あるいは…。

「いや、十分だ。身体も動く。これなら勇者について行けそうだ。ローザちゃんは、立派な聖女になれるよ。」


そうだった。バラックは、傷が完治しないままで勇者パーティとして勇者、賢者と共に魔王討伐の旅に出るのだった。


まぁこれで「ゆうパン」のシナリオ通りに進んでいる事になるな。


この戦士バラックって瑛太の旅のお供として、これ程頼りになる男は他にはいないだろうな。

が、実際に傷付いている目の前の優しい男を前にすると、無理はして欲しくないとも思う。


「でも治ってないです…。無理はして欲しくないです。」

「ああ、でも大丈夫だ。今なら拳も握れる。」

左手でグーを握ってバラックは笑顔を見せた。


「勇者…。そうだ。バラックさんは、勇者様にはお会いになったのですか?」

「ああ。体の線の細い頼りなさ気な少年だったが、良いヤツだった。」


うーん。微妙な感じの評価だな。体の線が細いとは?もう少し、いや、もっと沢山食べさせておけば良かったか?


父一人子一人でやってきて、まぁ、俺の料理などあまり美味くは無かっただろうし、仕方ないか…。

…。でもパパは少し悲しいよ。


「ちゃんとご飯食べてました?」

「ご飯食べてたって、なんかお母さんみたいな事言うなぁ…。うん、それは大丈夫だ。なんかこっちの飯は美味いって言って食ってたぞ。」


…。美味いなんて、言ってくれたこと無かったな。

パパ悲しいよ。でも、良かった。


「エイタ…。じゃなくて勇者様はお元気なのですね。」

「あぁ。元気だよ。賢者のエリスに惚れてしまったようでな。一目惚れって言ってたかな。楽しくやってたぞ。」


…。シナリオ通りか?良かった?

「エリスさまに、ご迷惑かけて無ければ良いのですけど…。」

「?まぁ、エリスも満更ではない感じだな。パンツ見せる約束なんてしてたし。って、あ、ローザちゃんに聞かせる話じゃないな。忘れてくれ。」


…。なんだろう。息子が美少女とはしゃいでいる話を、第三者から聞く気まずさ....。


なんか顔に血が登ってきた。恥ずかしすぎる。

「そ、そうですか。良かった?のかな。」

「ああ、まぁ、まだまだ未熟だけど勇者だからな。ローザちゃんが気になるのはわかるが、まだ若いんだ。温かく見守ってもらえると助かる。」


バラックって、やっぱりなんか頼もしいな。私が、修道院で修行している間、息子を宜しく頼みますね。


私は、修道院で息子(エイタ)の恋の成就…じゃなくて無事と成長を祈ってます。


とはいえ、順調に「ゆうパン」の物語通り進んでいるな。2年後、訓練を終えた勇者が、ヒーラーを仲間にするために修道院にやってくる。それまでに、勇者パーティに相応しい実力をつけておかなければ。


癒しの術と体力だな。

旅に耐えられる体力。そして戦闘に参加できる体力が必要だ。


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