表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/54

決してなれなかったもの。


佐藤 瑛一郎だった頃、絶対になれないものがあった。いや、そもそも考えもしなかったが。


若い頃に将来の夢についての話で、君は何にでもなれるんだから。なんて言われたりしたけど、絶対になれないものがあるよね。


努力とか才能では、どうしようもないもの。


今の私にとっては、それは、現実に不可能ってわけじゃなくて…。


とにかく、エイタを産んでくれた妻には、感謝と尊敬しかなくて。その時は、妻とエイタの間に私には無い絆のようなものを感じて、微笑ましくもあり、羨ましくもあり。


今、私に愛する人がいて、それになりたいと強く思うようになった。リュウを抱いた時、心の奥に何か、うまくいえないけど、何かを感じたんだよ。できれば、ほしいなって。


まぁ、毎日の日課だったわけで。

夫婦だからね。当然、気にしないでするもんね。

その方が、良いっていうか…。その、良かったから…。


それにミリアちゃんからも、太鼓判を押されていたわけで。

そりゃぁねぇ。できるよね。


その、お、おれ、母に、なるのか…。



少し前の事。


最初、こないなって思ってたんだけど。

まぁ、まだイチャイチャするの休まなくて良いなってくらいに考えていた。

始まったら、衛生的にも良くないしね。


そんな時、たまたま王都に来ていたミリアちゃんに相談したんだ。

「最近またアレ来なくなってさ。まだ、そんなに遅れたってわけじゃないけど、大丈夫かな?また、何か悪いとこあったりするかなぁ?」


ピータが、できる身体になった事を喜んでくれてたなって思うと、少し涙が出る。


「お姉さま。いつからですか?気持ち悪いとかは?」

「うん。そうだね。食欲もなくて…。」

ミリアちゃんが、呆れるような顔をする。

「ふぅ。もうお姉さまはっ。」


「ん?」


「ちょっと見てみますね。横になれるところへ。」

「うん。じゃあ、そこのソファで横になるよ。」


ミリアちゃんは、月の聖女として、活躍している。

こちらの産婦人科って感じみたいなことをしている。


魔王に破壊されて、駄目になっていた私の生理を治してくれたのは、彼女だった。恩人だよね。


それとミリアちゃんのおかげで、出産環境が劇的に改善されているらしいです。

聖属性魔法を応用しての痛みの少ない分娩が流行っているみたい。


ぇっと?ミリアちゃんが見てくれる?

食欲がない。

おまけにアレが無い。

コレって…。


ミリアが、手を私のお腹に当てて、でも、表情は柔らかい。やっぱり病気とかを観ている表情じゃない?


「ミリアちゃん。あの…。もしかして…。」

「ふふっ。やっと気付きました?」

ミリアちゃんの表情が優しい。少しホッとする。

「うん。それで?」

「はい。お姉さまのお腹から、別の魔力を感じます。」


ん?と言うことは?ちょっとアタマが混乱してる。

「えっっと。えっと。と言うことは?」

「ええ。お姉さま。お母さまになりますよ。ピータさんに似た魔力…。お父さま似かもしれませんね。」

「…。」


じわりと涙が出てくる。あ、私、嬉しいんだ。


ミリアちゃんがヨシヨシしてくれるので、思う存分泣けた。ミリアちゃんも泣いてくれた。しばらく、2人で抱き合って泣いた



「ありがとうね。」

「お姉さまの出産は、私が診ます。また来ますね。」

「良いの?忙しいんじゃ?」

ミリアちゃんがいてくれると安心だけど。嬉しいけど。


「はい。実は王都で、貴族様方の出産続きまして…。でも、当然お姉さまが最優先ですっ。安心してください。それで、しばらく王都にいますので、えっと産まれるまでいます。大丈夫です。」

優しい。小さなミリアちゃんが大きく見えるよ。頼りにしてます。


後の話だけど、この年は、約15年後再び現れた魔王を撃退したリュウを支えた世代の誕生ラッシュだったのね。


バラックとアーシャさんのところからも嬉しい一報があったし。

北の武力でならした有力貴族の跡取りや、王都の3大臣家にも孫が生まれたり。


ミリアちゃんも大忙しだったみたい。


そんな中、私を最優先に見てくれて、もう感謝だよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ