それぞれの旅立ち。
なんだか、よくわからなかった。
なんだかフワフワしてる。
ダーリンと一つになって、とても幸せな気分だった。
気が付いたら、ダーリンに抱かれて、包まれて、寝てしまっていた。
感触は残っているし、今も感じる幸せな感じ。
…。でも、アタシは。
満たされている。心の中が、心地良い感情で満たされている。
…。でも、アタシは。
ダーリンの髪の毛を触り、撫でてみる。
昨晩はお楽しみでしたね。
彼が愛するのは、エリスだけ。
彼が求めたのは、シドの身体。
アタシじゃない。
少し泣けてきたけど。
「さよなら。愛する人…。」
アタシは、そっとテントを後にする。
頬に生ぬるい感触を感じるが、多分コレはアタシの気持ちじゃない。
シドちゃんが感じているのかしら?そんな訳ないけど。
少し離れた場所まで来た時、
「ちょっと待って。」
ローザが追いかけてきた。
「あ、ローザさん。」
「どこに行くの?」
「わかりません。でも奥様を裏切ってしまって、戻れません。」
「エリスさんに事情を説明したら、わかってくれると思うよ。」
これは、ローザの本心なんだろう。
「違うんです。アタシは、、、」
アタシと言うのに、魔族なまりを使う。ローザならわかってくれるはず。
「えっ、アナタ…。」
「そう言うことですわ。サヨナラです。今度会う時は、」
「それでも、私はあなたにエイタを支えてほしい。」
ローザは元々、魔族とか人族とか気にしないフシがある。
「支えてほしいって、なんだかお母さんみたいな事言うのね。」
「お母さんか、、、ま、お父さんなんだけどな。」
最後よく聞こえなかった。
「えっ?」
「えっ?」
少し間ができた。まぁ、この元聖女が、見たままの可憐な少女の訳ないのだけど。
「ま、君の正体は詮索しないよ。」
ローザの口調が、少し違う。ただウインクするのは、シドからすると、背の高いスラッとしたキレイなお姉さん。
「はい。お互いにその方が良いわよね。」
アタシも本来の口調に戻す。
「うん。ここで君とこのまま別れるといや違うか。逃がすと後悔する気がするんだけどね。」
「気が合うわね。アタシもそう思うわ。」
「また、会えるよな。まぁ、会いたくないんだけど。」
「ええ。会いに来るわ。アナタにじゃないんだけど。」
アタシが会いたいのは、ダーリンだけ。
でも、次にここに来るのは魔王となって、人族を滅ぼすため。
じゃあね。楽しかったわ。
その後、シドは、エリスのもとに戻る事は無かった。
ローザとして、いや、瑛一郎として、シャドと話せた。
シャドは、シドに体を返して、魔界に戻ったのだと思う。
元に戻ったシドちゃんは、後ほどピータが保護して、私が元いた孤児院で面倒をみることにした。と言うか、孤児院も忙しいので、シドちゃんが手伝ってくれると凄く助かる。
ほとんど記憶が無かったそうだけど、何となく憶えているらしい。エリスには感謝してるし、リュウの事は気になるみたいだけど…。
エイタとは、あんまり覚えてないけど良い思い出と言うか、何と言ったら分からないけど、もう大丈夫です。って言ってた。
「大丈夫です。でも、あのヒトの想いが、遂げられて良かったです。」
あのヒトとは?シドちゃんとシャドの間で、何かあったのかな。
「そっか。エリスさんに事情説明しようか?この孤児院を手伝ってくれるのは助かるんだけど、戻りたければ、お願いしてみるよ。」
「いえ、私が奥様を裏切った事実は事実ですので…。」
「そっか。でも、シドちゃんが裏切ったってのは、違うと思うけど…。気にしないで、と言っても無理か。…あ、じゃあ元気でね!」
「はい。ローザさまも、お元気で。」
雰囲気は少し違うけど、シャドのシドちゃんは、大人しくて良い娘だった。シドちゃんも元々は大人しくて良い娘だったんだね。




