ガールズトーク(おっさん二人)
部屋に戻ると、ローザと二人になった。
ローザは、ベットに座っている。ドレッサーのような鏡台があり、アタシはまずそこに座って鏡を見た。
何気に、2人になるの初めてかもしれない。
この娘とは、先代魔王を何とかするために、色々と企んだ仲。
見た目は虫一つ殺せないような美少女で、聖女のクセに、考える事は結構えげつない。
性格悪いと言うか、相手に対して容赦ないのは、孤児で苦労したからかしら?
特に、魔王軍の幹部どもを根絶やしにする為に、仲間のはずの勇者を徹底的に利用する作戦には、流石のアタシもドン引きだったわ。
とは言え今のアタシは、シド。推定14歳の美少女よ。
エリスやローザのように美人じゃないけどね。庇護欲をかき立てる小動物系の可憐な少女には違いない。
鏡には、少し地味な顔立ちだが、清楚で可愛らしい少女が映っている。うん。アタシ、カワイイ。
「シドちゃんも女のコだよね。鏡あったら、見ちゃうよね」
ローザが話しかけてきた。
「いえ、なんというか、そういうわけではないんですけど…。」
同じ自分の姿を映すなら、やっぱり本当のアタシの方が良い。
本当のアタシは魔族で、ゴツくて、勇者好みじゃないかもだけど、アタシはアタシ。本当のアタシで、ダーリンと結ばれたいのが本音。
「ま、私も鏡見ちゃうけどね。ピータに見られても問題ないかとか?、ん、ちょっと違うか。ん~、でもやっぱりカワイイって言われたいしね!」
へぇ~。そんな事考えてるんだ。魔族の時のアタシだったら、自分が勇者にアタックすることばかり考えてて、自分がどう見られてるかなんて考えもしなかった。
鏡に写る少女の顔に、本当のアタシの顔が重なる。
ゴツくてケバい。勇者はアタシを見てどう思ったのかしら?
元の姿では、嫌われてはいないと思っていたけど、脈が無さ過ぎて、この少女ならって思ったけど、もう少し、美形な顔立ちだったら、ダーリンも興味持ってくれたのかしら…。
「ローザさん、美人だから良いなぁって。」
魔王を斃した王国の英雄たち。エリスとローザはその功績だけでなく、美貌でもその人気を二分していた。
「美人か、ま、いつも、ちゃんと私をやれてるか、不安なんだけどね。」
「どういう意味でしょうか?」
「あ、いやこっちの話。今の私にはピータがいるからね。ふふっ」
ちょっと頬を染めて俯くローザ。夕食前に何をシテいたのか知らんが、思い出してテレている?
「羨ましいです。」
「あ、でも、シドちゃんもカワイイから、いつか理想の人できると思うよ。」
「…。」
理想の人か。アタシには、勇者しかいない。
アタシが返事できないでいると、ローザが、少し気まずそうにと言うか、
「…。ごめんなさい。違うよね?」
「えっ。何がですか?」
「いや、いつか出会うってのは、違う?」
「えっ。私、、、」
「シドちゃん。勇者のこと好きなんでしょ?」
「…。いやアタシは…。」
…。顔に血が上るのが分かる。どうなってるのよ、人の身体って。
…。違う。魔族の身体の時も感じた感覚。
勇者と初めて会った時の…。
勇者に触れた時も
涙が溢れてくる。ホント人の身体って…。
「ゴメン。アイツ結婚してるし、恋してるなんて言えないよね。ゴメンね。」
魔族も人族も関係ない。これが恋するってことなの?
ローザに抱き寄せられて、頭を撫でられて励まされる。
なんか、少しだけど、落ち着く。
でも、急に、勇者って呼び捨てにしたり、アイツ呼ばわりしたり…。
少し腹が立ってきたら、落ち着いてきた。
ローザの言い方にちょっとムカついたんだけど、その聖女に包まれて、なんだか心地よいので、しばらくこのままで良いかな。




