宿場町にて
森へは、あと数kmというところ。
整備された道を西へ進むと、西の都オーベイトへ至る。北へ向かうとノースバルフ平原。東には、修道院や王国最大の貴族、ハートランド公爵領がある。
各地への道が交差する地点。ここに街があった。
朝に王都を馬車で出ると、夕方に到着する距離にあり、王都への行き帰りに必ず立ち寄る街で、交通の要所の宿場町として栄えていた。
とは言え今は、近隣の森での魔物騒ぎがあり、一般人は王都などへ避難していて、普段の活気はない。
普段なら、行商人や旅人で街はごった返しているところ、閉まっている店も多かったが、宿屋は開いていた。
宿屋は、魔物退治の冒険者などがいて、街中とは違い、案外人がいて流行っていた。
「空きは2部屋しかないな。少々狭いが二人部屋だ。」
4人が見合うが、そもそもの選択肢がない。
「わかった。頼む。」
エイタが言い、鍵を2つ受け取った。
「じゃあ。とりあえず部屋でゆっくりしたいですね。」
夕食までは少し間がある。ローザとピータが自然と二人で部屋に向かおうとした。
ま、あの人たちは夫婦なんだから当然ね。なんて思ったんだけど。
思ったんだけど、って事はダーリンと同じ部屋?
同じ部屋って事は、一緒に寝るのよね。
…。キャっ。どうしよう?
とか思ってたんだけど。
「ちょっと待て!」
ダーリンが、二人を止めた。
…。そのままでも、良いのにね。
二人きりは、ちょっと緊張するけど。
「どうしたんですか?」
二人は不思議そうに、振り返る。
「イヤイヤ。待てって。」
「「んっ?」」
「だから、それだったら、俺とシドちゃんが同部屋になっちゃうじゃんか!」
「「あっ!まずいか…。」」
えっ?二人とも、気づいてなかった?
馬鹿なの?
「シドちゃんも、俺と二人ってダメだろ?」
あ、ダメじゃないです。
「わ、私は、…。」
大丈夫です。と言えず照れて俯いてしまう。
イザって時は、ヘタれるのよね。アタシって。
こんなんじゃ立派な魔王になれないわ。
ローザとピータが見合って、ピータが言う。
なんか、以心伝心な関係で羨ましい。
「わかりました。ちょっとこちらも引けないので、晩飯までの間だけ、良いですよね?」
「それなら、、じゃあ俺は、街を散歩してるからシドちゃんは、休んでいてね。」
カギをアタシに渡して、ダーリンは行ってしまった。
一緒に行きたかったけど、少し、体をキレイにしたかったのと、慣れない馬車の旅が、かなり負担だったのか、この身体が悲鳴を上げていたので、少し休むことにした。
部屋に入ると、洗面台があり、身体を拭くことができた。
キレイにしておかないと、何があるか分からないものね。何がって?キャっ、みなまで言わせないの。
なんて思っていたら、隣の部屋から何やら声が漏れてきた。
…。
......。
隣の部屋。アタシなら透視できるんだけど。
一瞬だけ見ようとして、いや、うん、その見ちゃった。
本当は経験ない魔族の童貞オネエの肉体年齢10代半ばの少女?には、少々、いや、かなり刺激の強い、と言うか。
馬車でイチャイチャしてて、二人の間では盛り上がってたのね。
あ、喘ぎ声も聞こえてきた。す、すごぃ。
でも、ちょっ、ちょっと待って。
こんな事やあんな事、ダーリンと出来るかしら…。
借りものの身体ではあるけれど、恥ずかしい。
時間を忘れて見入ってしまったわ。
.......。
あ、でも、終わった後のローザさん。なんだか幸せそう。
外が暗くなりだした。2時間程たったのでしょうか?
4人で宿の食堂に集まりました。
なんだか不機嫌そうなダーリン。
少しやつれた感じのピータさん。
ツヤッツヤのローザさん。
と、興奮冷めやらずで、やや頬を赤らめたアタシ。
そして、4人で和やかに食事をしました。




