最後の戦い
魔王城には、最後の幹部となったシャドも消えてアーシャさんもいない、もう強力な魔族は残っていなかった。ベヒーモスを始めとした最強クラスの魔獣も、もはや成長した勇者パーティの相手では無かった。
強くなったもんだな。
それに、お互いの長所を活かし、短所を補い合う、良い仲間だ。
何より息子の成長が著しく、親として嬉しい限りである。
出来るなら、元の姿に戻って褒めてやりたいが。
頭を撫でてやろうにも、私にはエイタの頭の位置が高い。背伸びして手を伸ばしたら、なんとか頭に届く。
「なんだよ。ローザ。」
「いえ。頑張ってて、エライなって思って。」
「なんだよ。それ。」
「ゴメン。なんでもない。」
あ、ちょうどいい所に頭が…。
ナデナデ。
あ、ピータか。わざわざ屈んで何?褒めてほしかったのか?
「いつも、ありがとね。」
「おう。」
何やってんだろうね。最終決戦を前に、緊張感の無い…。
とうとう最後の扉の前に来た。
禍々しいばかりの魔力が溢れてくる。
「準備はいいか?」
エイタが言うと、皆が頷く。
広間に入ると、そこに魔王がいた。
「勇者か。よく来たな。」
「お前が、魔王か?」
「いかにも。良くたどり着いたと言うべきだが、ふむ、シャドとアーシャ、それに獣人どもが裏切っていたと言うことか…。」
シャドが、勇者討伐は魔王配下の魔族に任せようと進言して、魔王を魔王城にくぎ付けにしていた。アーシャが魔王領の旅を案内して、獣人達が旅に協力してくれた。
魔王が再び声を発する。
「儂にも魔王としての意地がある。かかってくるが良い。」
戦闘が始まる。
エリスが、爆裂魔法を連発する。
魔王の攻撃をバラックが受け止める。
ピータが、火薬で魔王の動きを撹乱する。
私が聖女として、回復魔法を皆にかける。
そしてエイタがトドメを。
と、防がれた。
まぁ、そんなに簡単にはいかないが、もう一度だ。
だが目の前にいるのは、歴代最強と言われる戦闘力を持った魔王だった。
魔王は圧倒的な魔力を持ち、エリスの爆裂魔法でもほとんどダメージが通らず。攻撃を受け止めるバラックは防御することしかできず、攻撃を受ける度に、ダメージを受けて、ボロボロになる。
ピータはいつしか、魔王の攻撃を受け続けるバラックのサポートしかできず。私もバラックを支えるので精一杯だった。
くっ。思った以上に強い。
バラックが、盾役として確立できていなかったら、直ぐに終わってた。
しかしながら、勇者の攻撃は効いている。魔王特効の勇者装備。これが一縷の望みか。
「フハハハ。やるではないか。だが、コレでどうかな。」
魔王の攻撃をバラックが受け止める。
「ぐっ。ぬぉぉっ。」
あ、やばい。バラックを回復させないと。
その時だった。魔王の声が響く。
「前に出すぎじゃ。聖女よ。」
気がついた時は、もう遅かった。はぅっ!
黒い一筋の光が、私の方へ。
「かはっ!」
私のお腹に穴が開いている?
何があった?
魔王の攻撃は、バラックが止められるはず。
小さな破片の様なモノが、魔王の回りを飛んでいる?
あの宇宙世紀的なアニメに出てくるオールレンジ攻撃するみたいなやつか?
魔王ってニュータイプなんか?
まだ、致命傷じゃない。回復魔法を、、、。
ちゃんと修復できて、お腹の中が傷ついてないと良いな。特に、大切なところ…。
「ローザ。大丈夫か?」
ピータ、ダメ。こっちに気を使うと…。
ピータの胸に穴が開く。
ピータが斃れるが、私も、傷付いていて動けず。駆け付けられない。
あそこは心臓の位置。一瞬でも遅れると手遅れになる。でも、届かない。
頭が、真っ白になる。
「ダメぇ!」
私が、ローザじゃないから?。
瑛一郎だから?。エイタの父親だから?。
そんなの関係無いよ!
大切なのは、この気持ち。それだけだったんだよ。
失ってはダメなもの。自分を犠牲にしても助けたいもの。
俺は、私は、瑛一郎とかローザとか、もう関係無い。
理屈抜きで、この人を愛している。
白くて清い光が、ローザの身体から発散する。
魔王は、この世界においては無敵。では、どうすればいい。この世界で無敵なことの代償として、異世界からの力には弱く、だからこそ、異世界からの転生者に魔王は斃される。
「ゆうパン」の裏設定。
誰にも文句言えない。俺が、昔決めたことだ。
そして聖女の正体、私の存在は、異世界のものだ。
私が、魔王を斃す。私の愛を踏みにじった魔王を、赦せない。私の存在をかけた魔力で…。
聖女の身体から発散された光は、勇者を戦士を賢者を忍者を包み。魔王を包んだ。
私の意識はそこで途切れた。




