仲間。
「これまでね。」
魔王城を前に、結界を張り、キャンプで休養を取っていると、シャドの声が響いた。
シャドとは、これまでイヤリングを通して、念話をしていた。
これまで。と言う意味は私にもわかった。
「ええ、もう敵は、魔王だけだものね。」
「ええ、貴女達は、予想以上に働いてくれたわ。」
シャドは、対立する部族を私達勇者パーティと戦わせて、自らの部族の地位を確立していた。
私達にとっても、その時々に十分に勝ち目のある相手をシャドが手配してくれる事で、RPGゲームのように段階的に経験を積むことができた。
「こちらこそ、すごく助かった。感謝はしてるよ。」
感謝の言葉は、ありがとうと言うべき。だけど、ここは素直に伝えてはダメなんだ。
彼女(彼?)の目指す道は、いつか私達と対立するだろうから。
「そうね。アタシもよ。でも、コレで終わり。」
「うん。で、この後どうするつもり?。」
シャドのその後の事は「ゆうパン」では記述していない。
「アタシは、アタシの部族の為に魔王になる。だけど勇者とは戦いたく無いわね。」
「魔王になるなら、敵になるね。」
「魔王は勇者に勝てないわ。これは決まっていること。だから、なにか方法考え付くまで、大人しくしてるわ。」
「まぁ、貴女には、ずっと大人しくしていて欲しいけど。」
「心残りは、勇者の事だけど、エリスさんがいるし、まぁ仕方ないわ。じゃあね。」
それだけ言い残して、通信は途絶えた。
イヤリングが、音もなく粉々になった。
これ、割れたりする壊れ方だったら、耳痛かったかな。
シャドか。本当は、優しい人なんだけどな。
彼?が魔王になったら、戦いのない日々が来るかもしれない。元の世界に戻ったら、魔王と勇者が仲良くなる話なんか作ってみようかな。
…。あ、でもエイタとシャドを引っ付ける物語は、父親として認められん。義娘は姉様と決めている。
シャド、ごめんね。
そんな事があったけど、キャンプで休養も十分とれた。
魔王城を眺め、5人が並ぶ。
ここまで来たと感慨も深いが、映画のシーンじゃないんだから、ずっと立っているわけにはいかんよ。
エイタ。何か言え。
親の思いが通じたわけじゃないだろうが、エイタが口を開いた。
「ようやく来たな。」
皆が頷く。
「こんな時だからこそ、まだ早いかもしれないが、皆にありがとうと言いたい。」
堂々としてる。立派になったものだ。
「バラックさん。貴方は、剣の師だったけど、1番の親友で、良い兄貴で、父親のようでもあり、いつでも俺を、助けてくれた。」
「ああ。お前は、よく頑張った。」
「ありがとう。」
ま、父親は私なんだけど。いい友達ができたね。
「ピータ。君に会った時は、ただの少年だったけど、今じゃパーティにとって、いなくてはならない男だ。君の助けなしにここまで来れなかった。ありがとう。」
「いえ。何だか照れますね。」
ガチっと握手する二人。なんか良いなぁ。
腐り女子の気持ちが少しワカル気がするよ。
あーダメダメ。息子と恋人のカップリングは、ダメダメ。地獄だよ。
「ローザ。君は、いつでも俺達全員の事考えていて、先を見て行動してくれていた。回復魔法だけじゃなくて、他にも助かる事も多かった。ありがとう。」
握手した。大きくてゴツゴツした手だった。
保育園の送り迎えは、いつも手を繋いで歩いた。
最後に手を繋いだのは、何時だったか。
あの時は、小さな手を握って、俺が、コイツを守るんだって。母親がいなくても、俺が…、俺がちゃんと育てるんだって。
今は、小さな私の倍位ある掌に包まれる。
うん。大きくなった。もう1人前だな。
涙が止まらない。
「どうしたんだよ。泣くなんてらしくないよ。」
そうだね。
「ゴメンなさい。どうしたんだろ。」
無意識だったけど、隣のピータに寄りかかる。ピータが無言で支えてくれる。安心する。涙が、少し止まった気がした。
やっぱり好きだな…。
「エリス…。」
「何よ?私にも感謝しなさいよ。」
え、エリスさん。エイタは、良いことを言おうとしてるんだから、言いにくくなるって。
「エリス。最初のさ、約束憶えてる?」
あ、これは「異世界へ召喚された勇者は、賢者におパンツ見せてもらいたい。」略して「ゆうパン」の世界。
約束とは、魔王を斃したらパンツ見せてもらうっていうヤツ。
「何それ?。まぁ、憶えてるけど。」
「この戦いが終わったらさ。毎日、その約束守ってほしいんだ。」
うん?毎日パンツ見せろって?毎日味噌汁作ってくれ的な?
サイテーだな。サイテーのプロポーズ。褒めるんじゃなかったよ。
アタシは、そんな男にアンタを育てた憶え無いわよ!
って思ったんだけど。
あれ?エリスが、満更でもない?
「バカじゃないの。私にはアナタしかいないんだから…。」
「うん。バカだよな俺。魔王斃したら、ちゃんと言うよ」
「うん。待ってる。」
…。もう良いかな?キスでもする?
「さ、気合いも入った所で。エイタ。」
流石はバラック、話を強引に戻した。
「うん。さ、行くぞー。」
「「「「おー!」」」」
曲がりなりにも、締まったし気合いも入った。
でも、このバカ息子、魔王斃したら本当にパンツ見せろって、言いそうで怖いな…。
そんなの、振られちゃうよ…。




