真実の瞳
さ、恋愛モードはおしまい。
冒険モード再開だ。
無理やりにでもそう思わないと、おじさんの心が恥ずかしくて死んでしまう。
ローザ14歳。恋と冒険に生きます。
瑛一郎は?
えっ、瑛一郎って誰?
私は、ローザ。
私は、聖女。
私は、14歳。
だから、同世代の男の子に恋しちゃっても…。
良いよね。
瑛一郎が中学生だったら、好きな子にほっぺにチュウされたら、死んでもいいくらいに嬉しいよな。
…。好きな子の中身が、子持ちのおじさんだったら?
…。
......。
うぅっ。ダメじゃん!ヤダよね。
ピータ君。ホントに、ゴメンね。
もしローザちゃんに、身体返せたら、その時は…。
うん。その時は、二人とも頑張ってね。
さ、冒険である。
とりあえず、勇者の剣を鍛えてもらったり、西の都に必要な道具を買いに行ったりしながら、数週間がたった。
数週間の間に、バラックに真実の瞳の話をして、呪いが解けるかもしれない事を説明した。
そして、いつもは自分の事を後にするバラックだが、全開で戦えることでパーティの為になると思い、真実の瞳を取りに行くことになった。
真実の瞳は、なんと修道院近くの例の祭壇の山にあった。
聖女達の祈りの結晶だそうだ。
ピータは優秀だけど、情報があまりにも早く入った理由がわかった。意外と近場だったからだね。
祭壇の奥には、いくつか洞窟があるがその内の一つに真実の瞳があった。結界があり一人じゃないと入れない場所だった。
バラックが一人で洞窟に入り、試練と闘っているはず。
エリスは、王都で結界の張り直しにもう少し時間がかかりそうだ。
修道院の近くなら、私が案内できるからとエイタとバラックと3人で来ている。アタッカー二人にヒーラーで、攻守に問題ない布陣だし。
バラックが試練に入ったので、自然、エイタと二人で待つ感じになってる。真実の瞳を得るに値するかどうか試されている。
裏表のないバラックなら、問題ないだろう。
…。
気まずい。
この前少し打ち解けたけど、年頃の息子と二人になっても話すことがない。しかも、今、私は、ローザちゃん…。
ーていうか。男なら気い使って話題振れってんだバカ息子。
年下の女の子が、不安になっているだろ!
って、都合良く、立場を年下の女の子にする私…。
まぁ、良いや。テキトーに話すか
「エリスさんとは、最近どうなんですか?」
王都で進展あったんだろうか?瑛一郎には答えてくれんだろうけど、今、私は、ローザちゃん。
「えっ?何?エリス?まぁ、うん。」
しどろもどろだな。まぁ、パンツ見せてもらう約束してるなんて、ローザちゃんには言えんか。
「好きなんですよね?」
これも、瑛一郎の姿では、中々聞けないな。それを考えると、やっぱローザちゃんって、息子の成長を観察するのに便利な身体だな。
「あぁ、そうだな、うん、好きだ。」
なんかナヨってるし、めっちゃ照れとる。まだまだカワイイヤツだな。コイツ。
「エリスさんも満更じゃないでしょうから、少し強引にいっても良いと思いますよ。こうガツンと!」
これ瑛一郎なら、男ならガツンといけってんだ!って言っている所だな。
ん?なんかそんな事言ったことあったけな。
…自分だとそんなに強引にいけなくて、すぐヒヨルのにな。
どの口が言うーってか。
ま、今はローザちゃんの口だから良いのかな。
今は好きな男の子を、なんか良いように使ってるけど…。
ま、頼りにしてるんだからね。
「なんかそんな事、父さんにも言われた気がするよ。」
「えっ??」
「あぁ~。ローザと話してるとなんか懐かしい感じがするよ」
あ、やばっ。ここまで来たらバレたくないな。イロイロあったし。
「ゆうパン」シナリオ達成の為にも…。
「まぁ、キスくらいは、しちゃっても良いと思いますよ。」
私は、したもんね。ほっぺだけど....。
「それは、、、した、よ。。」
「えっ?」
「えっ?」
「口に?」
「うん」
えっ?息子に先こされてる?
…どうする?
でも、まぁ、良かったな。息子よ。
そうやって、大人の階段を一歩ずつ登っていくんだよ。
そんな時だった。図太い声が響いた。
「待たせたな!」
大きな影が浮かび、直後、バラックが洞窟から顔を出し、洞窟から出てきた。
「あ、お疲れ様です。」
「ん?そんなに疲れてないぞ。大変だったが、呪いは解けた。この目を見てくれ。」
あ、お疲れ様って挨拶は、この世界には無いのね。
それはそうと、バラックの目である。キラキラした宝石のような瞳。それが、真実の瞳。傷で開かなかった方の目に入っている。
その目に映るのは、その真の姿のみ。
真実しか見えないので、幻覚は完全に無効化される。幻覚を見せて神経を痛めつけて、体にも影響を及ぼすシャドの呪いは、トリガーが幻覚の為、真実の瞳で傷口を診ると傷口が無くなり、呪いそのものが解呪されるんだ。
バラックが、人類最強の戦士が、復活した。
よし、これで、こちらから攻勢にでれる。
エリスとピータが合流すれば、魔族領へ殴り込みだ!
と思ったんだけど。
「ところで、ローザさんや。」
バラックが不思議そうに言う。
「なんでしょうか?」
真実の瞳入っている片目を閉じる。
「やっぱり、ローザちゃんだよな?」
「ええ。それが何か?」
もう片側の目を閉じて、真実の瞳だけで私を見る…。
あ、その、私の真実の姿?バラックには…。
「どう見ても、おっさn」
「ちょっと、待ってください!」
バラックに飛びついて口を塞ぐ。
バラック、身体も声もデカいんだよ。でもギリギリ届いた。体鍛えていて良かった。
「ダメです。乙女の秘密です。」
エイタは?って感じだが、ってことにしよう。
…..。
後でエイタのいない所で、バラックには事情を説明しました。
ビックリしてたけど、協力してくれるみたい。
洞窟を後にする。
あ、この辺でピータと一緒に戦ったな。
狭い道を抜けると、少し開けた場所がある。
修道院の修行時代に、馬車を止めていたあたり。
あれからもう2年くらい経つな。
なんて、感傷に浸らせてはくれなかった。
目の前は、ドラゴンかと思われるような、巨大な魔獣が現れたのだ。
ーローザちゃーん。聞こえるー?バラックさんの快気祝いよー。受け取って、頑張って倒してねー。
シャドの声がする。イヤリングから私の頭に、響く。
ー最強クラスの魔獣。ベヒーモスよ。死んじゃったらゴメンねー。
「ガウルルルー」
体の芯まで響く叫び声とともに、巨大な魔物が、襲いかかってきた。




