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王都にて


真実の瞳、と言うアイテムがある。

コンタクトレンズのように、目に入れるとその瞳は、モノの真実を見ることが出来る。


バラックは左目が見えない。だが、それは呪いによるもので、眼球が潰れているわけではない。この真実の瞳が使えるはず。


シャドの呪い。これの元は幻覚魔法なんだ。シャドが呪いをかけて幻覚を見せることで体が傷付いていると錯覚して、実際に傷が付き激痛が走る。神経に直接作用するから、どうしようもない痛みで、たちが悪い。


純粋な者程掛かりやすいが、効果が凄いだけに簡単にかかる魔法ではない。

ガフク将軍との一騎討ちで性も根も尽きた状態だったから、バラックには呪いがかかってしまった。


ノースバルフ平原の決戦では、シャドが2重3重の策を張り巡らせて、魔王軍の勝利だけじゃなく、ガフク将軍の暗殺に暗躍していた。

結果的に、プランBとかCにはなったものの、思う通りの結果は手に入れた。


ただ、出世したのは、シャド個人で部族の立場を改善できなかったと言うのは、以前話したと思う。


シャドとは、定期的に情報交換してる。

「エリスさんも本気出せるし、これでバラックさんの呪いを解いてくれたら、貴方の嫌いな魔族達を片っ端からやれるんだけど。」

って、シャドに言ってみたけど

「ヤダ。あのヒト怖いもん。」

「…。いい人ですよ。」

「アタシがどんな思いで、あのヒトに近付いたと思っているの?死ぬかと思ったんだから。」


まぁ、バラックって、味方からしたら気は優しくて力持ちなんだけど、数多くの同胞を殺された魔族にとっては、鬼みたいなもんだ。本当に恐れられてる。


呪いを解いてくれない事は、わかっていた。


しかし私は、この物語「ゆうパン」の作者だ。呪いを解く方法も当然知っている。

答えは、真実の瞳というわけだ。


王都滞在最後の日。エイタとエリス、私で街に出ることにした。バラックさんは、王国軍でのお仕事。


美味しいスイーツのお店に入って、新作とか言われるケーキを頬張ったり、流行りの服を見に行ったり。


楽しいな。なんか女子って楽しい…。


じゃねえ。私は、佐藤瑛一郎。おじさんだよ。


あ、今気付いたけど、エイタとエリスにとって、私ってお邪魔虫かな。

ケーキ美味しくて、流行りの服とやらが気になって、気が付かんかった。


「それでは、私は、この辺で。」

二人と離れることにした。

「え?なんで?疲れちゃった?じゃあもう帰るか?」

エイタ。私は気を利かせてるんだよ。

「あ、お二人はもう少し、ゆっくりしてきたら良いと思います。美味しいレストランあるって聞いたし。」

「それなら、い」

っしょには行かないよ。カップルの邪魔したら馬に蹴られて死んじゃう。なので、会話を被せる。

「では、また。」

その場をソサクサと離れた。


なんか、そのまま宿に帰る気にもなれず。

広場の噴水のそばに座って、人の往来を見ていた。


ーエイタ、上手くやるかな?

ーキスくらいはしてみろってんだ

ーその先は、…まだ早いよな。

ーだって私、おじいちゃんになっちゃうじゃん?

ーいや、今の姿なら、おばあちゃん?

ー違う、違う。ローザちゃんなら、お姉ちゃんだな。


なんか、妄想が捗るなぁ⋯。


エリスによく似た5才くらいのカワイイ女の子が、頭に浮かぶ。

「お姉ちゃん!」

うん。良いかもしれん。

子どもの頃のエイタに、良く似た生意気そうな男の子が、頭に浮かぶ。

「おばちゃーん。腹減った!」

ん?おばちゃんとは?おばちゃんなんて日本語は無いのよ。あ、ここだから異世界語か…。


ーはぁ。

くだらないこと考えて、気を紛らわせているけど。

ー寂しいなぁ

って気持ちは、自然と溢れてくる。


元の世界では、妻に先立たれたけど、瑛太を残してくれた。子育ては大変で、仕事もあって寂しいなんて思うのヒマも無かった。


この世界でもミリアちゃんがいて、勇者パーティで冒険始めてからは皆がいて、一人になる事、少なかったよな。


違うか…。


修道院の時は、一人部屋だった。寂しくなかったのは、ミリアちゃんがすぐそばにいた事もある。


でもそれだけじゃない。毎朝、会うことができたからだ。


会うと体のそこから、嬉しさが込み上げる人に…。

今は心の中身が中身だけに、この気持ちがどうして込み上がってくるのか、解らない。抑えておいたほうが良いんだろうな。と思う。


魔王倒して物語終わった後、ローザちゃんにこの身体を帰す時が来たら、その時には、ローザちゃんの気持ちに任せようと思う。


とはいえ、さみしい気持ちは。ね。

どうしようもないな。

…。宿へ帰ろう。


「あ、ローザ!こんなとこにいた。探したんだよ。」

今聴きたい声。見上げると、今見たかった顔。


「えっ?ピータ?」

私は、ほころぶ頬を止めることができなかった。


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