息子よ
甘いお茶を飲み、語りだした息子を見る。
元々は、決して体格が良かったわけではなく、幼稚園の頃は、やっぱ母親がいないと栄養が上手く取らせられないのか。などと悩んだものだった。
私が小さくなってしまった事もあるが、背も伸びて筋肉もついて、立派な男に見える。
とは言え、顔つきなんかは、まだ16才で幼さも残る。でも、うん、立派になった。
戦闘では頼りになるし、特にバラックさんに無理をさせまいと頑張っている姿は、親としても感動的ですらある。エリスの事が大好きで、魔王を斃したらパンツを見せてもらう約束をしているようだが、今は下心を抑えて頑張っている。
こんな美少女…って私なんだけど、美少女と二人きりなのに手を出そうともしない。
ていうか、手の出し方知らんよね。まぁ、親として色々教えてきたけど、そういう事って教えるの、なかなか難しいよね。
まぁ、父親の時と違って、ある意味、全てを教える事出来るんだけど…。
筆下ろし。的な。
うわぁ~。なんか想像しちゃって、顔が熱くなるな。
ダメダメ。ふと、ピータを思う。ん?想う?
頑張ってるかな。忍者修行。
…何でピータがでてくる?…。まぁ、私の事は良い。
「この世界に来て、父さんいなくて…。すごく不安だったんだ。だけどね、バラックさんやエリスがいて、何とかやってこれた。今まで父さんが教えてくれた事、一杯あって…。この世界で生きていくのに、すごく助けになった。」
「…。」
えっ?、ヤバっ、私なんか泣きそうなんだけど。
「父さんがいれば、こう言った。とか、父さんなら頑張れって、言ってくれた。とかね。」
…。俺がいないから、頑張っているのか?いないことで頑張れている?
私が、瑛一郎だって、お前の親父だって言いたい。
言いたいんだけど、せっかく父親から離れて成長しているんだよ。
ここで言った所で何になるんだろう?
私は、息子が成長していくところを間近に見れる。こんなに幸せなこと無いだろう。
ここで、父親への甘えはもういらないな。俺がいれば、私が俺だと判ればどうしても、頼ってしまうだろう。
今は少女で少しばかり、頼りない姿かもしれないが…。
「何でローザが泣いているだよ。大丈夫か?」
気がつけば、涙が止まらない。
「いえ。違うくて…」
「あ、ローザには、両親ともいないんだっけ?ゴメン。話すべきじゃなかった。」
「違うんです…。もっとエイタ、さん、のお父さんの話聞いてみたいんです。」
エイタが俺の事、どう思ってたのか知りたい。
イロイロ話してくれた。日頃から感謝してくれていたようで嬉しい。いや、メッチャ嬉しい。
「とまぁ、尊敬は出来るんだけど…。」
うんうん。尊敬したまえ。息子第一でイイ親だったと思うぜ。
「押し入れ上に隠し扉があって、そこのコレクションがなー。」
「………。」
えーっ。見たの?あれ見たの?俺が何十年もかけて集めたビデオの数々。VHSからDVD、裏を記録したSDとかも見たの?自作のボツ小説なんかもあったかもね。
「ローザちゃんには、あんまり詳しく言えないけど…。」
言わんでいい。言わんでいいよ。こんな美少女に聞かせる話じゃねえよ。
元の世界に戻ったら、隠し場所を考えないとだな。
「多分、ローザちゃん、父さんのどストライクかな」
そんなわけ無いでしょ。洋モノのロリ系のなんて無かったはず…。
「なんですか?それ?」
「なんかさ。ローザちゃん位の年頃の娘を養女にしてって話、父さん考えていたみたいなんだよ。」
…。あ、プロット見たんだ?隠し場所にいれてたノート。勝手に見るんじゃねぇ!
世界一カワイイ娘の為なら、魔王になる。
「せかまお」のプロットを。
道端で拾った娘が、実は魔族で、異世界に行ってその娘と結婚して魔王になる話。
…話の内容なんか、どうでも良い。どうでも良いよ。黒歴史だ。もう許してくれ。
ガチャ。
ドアが空いて、エリスが帰ってきた。
「ただいまー。あれ、なんか変な雰囲気ぃ。…あれ?ローザ泣いてた?エイタ!何したの?」
「あ、いや違うよ。父さんの話してただけで…。」
「あのさ、ローザは孤児なんだよ。」
エリスさんのお説教が始まったけど、エイタはあまり辛そうにしていない。
…。まぁ、大好きな女の子にお説教されるんだ。しばらくは良いか。
「アンタってデリカシー無いのよね。」
まぁ、そりゃ、パンツ見せてって言ったくらいだしね。ていうか、どうやって言ったんだろうね。
この鈍感系主人公になっちゃってるエイタが、パンツみたいとは?想像できん。
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召喚されてから、暫くたって訓練中のこと…。
少し短めのスカートを履いていたエリス。
エリスの美脚に、目が釘付けのエイタに対し、エリスから
「見たいの?」
って聞いたのが始まりらしい。
まぁ「ゆうパン」の中では、物語の核心なんだけど、それこそ、今はどうでも良いか…。




