私は聖女候補。
暫くは、動けなくてベットで寝るだけの日々を過ごしたんだけど。トイレとご飯の時だけ起き上がり、体力が回復するの待った。
女の子になって、トイレは?オフロは?
気になるかもしれないが、俺もう大人だし、取り乱すことなく済ませてる。この少女ローザとして生きてきた記憶もある。
ちなみにオフロなんかは無い。汗をかいたら拭くくらいかな。
娘はいないが、子育てしてきたんだし、今さら子どもの姿で、女の子だからって、思うところも…。ない。うん、無いはずだ。
ローザちゃんは、12才らしいけど、痩せ気味だしまだまだと言うか…。
まぁ、ナニ、アレ?が無いのは新鮮な気持ちではある。少し不安を感じるが…。
不安と言っても、この身体って小さくて華奢だからな。オッサンの時のように無理はできなさそう。
折れちゃいそうだ。っていう不安のはず。深い意味は無い。
嫁が亡くなってから、ずっと使っていなかったモノに未練は…。無いと言いたいが、複雑な気持ちだ。
それは置いておいて、この身体のローザちゃんは、12才で華奢な体格。親はいなくて、教会の孤児院で暮らしていた。
この世界では魔王が魔物を率いて、人の住む村々を襲うため、こういった親のいない子どもが増えたそうだ。
物心付く前から、ここにいるのでよくわからないだけど。
って、ローザちゃんの記憶をたどる。ローザちゃんの意識は無いが、記憶は残っていて、思い出す事ができる。おかげで、何とかこの身体で暮らしていけそうだ。
どうやら、俺がアイリスによってこの身体に転生する直前に気を失い、倒れてしまっていたようだ。
アイリスさんの独り言を思い出すと、聖属性の魔力に目覚めたけど、元々虚弱だったローザちゃんの身体と心が耐えられなかった。
そこに俺の魂を入れて、蘇生?させた。
ということかと思う。
…。ローザという名前のシスターに覚えがある。
あ、有名なゲームのお姫様が、ローザだったけな。
なんかそれだけじゃない気するんだが。
俺…。この姿で俺ってことも無いと思うので、一人称は「わたし」私にしよう。
普通の社会人だった身として仕事では、私を使っていたので大丈夫。あと丁寧な言葉使いを心がければ、問題ないだろう。
そっか、うん。仕事モードで話せば、大丈夫だろう。
話を戻そう。
聖属性の魔力があると認められた私は、体力の回復を待って、教会で聖女見習いとして務めることになった。
数日もすると、動き回れるようになってきた。
「おはようございます。先生。」
孤児院の母というべきシスターによばれた。個室があり、院長先生をしている方だ。
ローザが目覚めた時、そばに付いて心配してくれていた優しいおばあさんだ。
「ローザちゃん。いえローザさまと言うべきでしょうか。」
「え?先生。」
先生からさま付けとは?
「聖属性の魔力を持つ乙女は、聖女様となられます。我々のようなシスターより尊い立場となるのですよ。」
「あ、でも、私と先生との関係は変わりません。今まで通りでお願いします。」
「そうね。私も大切な娘に、他人行儀な感じがちょっとイヤだったの。」
うん。しがない孤児のローザを娘と言ってくれてた。虚弱体質なローザがここまで生きながらえたのは、紛れもなくこの先生のおかげ、だからこの関係は続けるべきだと思う。これで良い。
「でもね。あなたには、聖女候補。今後は東にある修道院へ向かい、聖女としての修行をしなければなりません。」
えっ。でも、瑛太を探さないと…。
「数日すれば、護衛の方があなたを迎えに来ます。それまでは、ゆっくりしていて体力を回復させておきなさい。」
院長先生の用事は、数日後に旅立つので準備をしておいてと言うことだった。
ローザちゃんは、孤児院暮らしだったので、私物は殆ど無かった。着替えが鞄一つに入り、準備も直ぐにできた。
数日後、雲をつくような大男がやってきた。
「まぁ、バラックさんが来てくださるなんて、旅路は安心ですわ。」
院長先生の明るい声がした。
「今となっては、役に立たんが、イザとなれば命賭けて聖女様を守りますよ。」
「まぁ、王国最強の戦士様がご謙遜を。あちらが聖女候補のローザさまです。」
バラックと呼ばれた大男は、何か言いたそうだったが、こちらを向き優しげな笑顔を見せた。
ゴツいが、何か安心できる表情だった。
「ローザです。よろしくお願いします。」
「バラックだ。先の戦いでの怪我が治っていないが、命を懸けてあなたを守る。」
目にキズ、片腕も不自由そうだった。
…。バラックと言う名前。
満身創痍で片目の大男の最強戦士。
…。この男…。俺が考えたキャラだ。
ローザと言う聖女。
瑛太を召喚した賢者。エリスと言っていたか?
思い出した。二十年以上前の朧気な記憶。
でも、確かな記憶だ。
これ、俺が昔書いた物語の世界だ。
今日中にもう1話予定しています。
よろしくお願いします。