勇者パーティ
エリスさんと上手くやれるかが、心配だったのだけど。
馬車の中では、お互いの魔法について話した。
エリスは、回復魔法が得意ではなく、聖属性魔法の使い方を聞かれたので答えた。
「聖属性の魔法は、基本的に魔力を込めて、そして祈るんです。」
「へぇ~。全然違うんだね。魔法ってさ。魔法陣に魔力込めると事象現れるよね。」
「魔法陣を描くって言うのも、実際に書くんじゃなくて、イメージして空中に出すって感じですよね。」
「そうだね。イメージかな?でも詳細まで描かないと、魔法は作動しないのよね。」
「聖属性の魔法も、詳細をいかにイメージ出来るかが大事なんです。修道院にいたミリアちゃんが、凄く上手で…。」
「あ、わかる。私の方が、魔力も練度も上なのに、エイタの魔法が私より強い時あるもんね。」
エリスがエイタを見るが返事がない。私が答える。
「エイタさんもイメージが上手なんですね。私も頑張らないとですね。エリスさん。今度魔法を教えて下さい!」
「うん。良いよ。私も回復魔法知りたいし、教え合いっこしよう。」
エリスが笑って答えてくれた。クールで少しキツめの顔立ちだが、笑うと表情が崩れて、メチャカワイイ。
キュンってしちゃうね。
エイタも少し愛想があれば良いのにね。旅のグループにこんな可愛いコが二人もいて、羨ましいんだが。
あ、でも百合に挟まる男はなんとやらと言う諺もある。…いや、無いか?あれって死んじゃうだっけ?
だから、距離取ってるんかな?
まぁエイタの事はおいておいて、魔法の話題をとっかかりにしてエリスさんとは、打ち解けることができました。
何度か魔物や魔族の襲撃があったが、ピータがいち早く察知して、準備して向かい撃てるので、多少手こずりはするものの危なげなく撃退できていた。
このパーティなんだけど、人族側の最高戦力のはずなんだけど。敵を倒すのに随分てこずるんだよなぁ。
なんか、もどかしいというか。
エイタは、まだまだ経験不足。
バラックは、呪いの傷で負傷中。
エリスの魔力なんだけど、王都防御の結界維持に常時遠隔で消費されるらしく、必殺の爆裂魔法が使えない。今は、並の魔法使い程度の魔力しかない。
そしてピータと私は、旅に出たばかり。
バラックと言う百戦錬磨の戦士と、歴代最強と言われる賢者エリスがいながら、まるで初級パーティのような戦力。
あ、でも、これも俺が考えた設定だったな。
仕方ない。
そこで、魔王軍幹部と交わした契約…。
シャドと情報交換を行い、今の勇者パーティが倒せる強さの魔族をけしかけてもらう。シャドと敵対している魔族を私達が倒す事で、魔王軍の中でのシャドの地位上がる。
だから、今は古典RPGのご都合主義っぽく、弱い敵が徐々に現れるんだ。
今回の敵は、魔族領との境界のノースバルフ平原にいる。
ここのボスとは、持久戦になってしまう為に、治癒魔法使いなしでの攻略が、難しい敵だった。ここを押し返せば、王都に攻め込まれる心配がなくなり、王都の結界にエリス魔力が必要なくなる。あとは、バラックの呪いを解けば、魔王討伐の準備が整う。
と言うわけで、ノースバルフ平原までやってきた。
雑魚敵は、エリスの範囲魔法で蹴散らしている。
この重要拠点の守りが弱いのは、シャドが何やら動いているのだろう。
ここの中ボス、サンドゴーレムは確かに固いけど、攻撃力はあまり無い。エイタが成長している事で、確実にダメージを与え、サンドゴーレムの攻撃は、バラックさんが受け切り、そこを私が回復させることで持久戦が可能になっていた。
シャドは、アンデットって言ってたけど、実際はゴーレムだった。言っても
「なかなか予定通りにはいかないものよっ!」
って、言われるだけか。
アンデットだったら、聖属性魔力で一発だったけど、私ってミリアちゃんに比べ魔力が少ないから、あまり長い戦いは避けたいものだけどね。
まぁ、なんとかなるでしょう。
「今です。エイタさん!」
ピータも戦いに参加して、エイタをフォローしていた。ゴーレムの足を停めたり、動きを誘導したりして、エイタの攻撃が当てやすいように上手く立ち回っていた。
「えいっ!はぁっ!」
エイタの気合の入った一撃があたり、撃破。サンドゴーレム討伐である。
「ローザちゃん。良くやった。やはりヒーラーがいると違うな。」
バラックが褒めてくれた。
「エヘヘッありがとうございます。」
素直に嬉しい。ピータとエイタ、エリスも駆け寄ってきた。
「やったな。けど、ピータ君が良くやってくれたよ。」
エイタがピータの事を褒めてくれる。
「そうだな。正式にメンバーに加わって俺達を助けて欲しい位だな。」
バラックもそう答えてくれる。ピータが褒められたこと自分が褒められるより嬉しいかも。
馬車をひく役割だった少年が、正式に勇者パーティに加わり、「ゆうパン」の5人のメンバーが揃い、冒険は本番を迎える。
ホッと一息ついたところだった。
ーローザさん!直ぐにその場からお逃げなさい。
シャドの声が頭の中に響く。
えっ?なになに?




