私の情報源。
2年間の修道女生活。
色々あったので、書きたいんだけど長くなっちゃうから端折るね。
ミリアちゃんとの触れ合いなんか描いても、書ききれないんだけど。
一緒に修行を乗り越えて、本当の姉妹みたいになれた気がするよ。
ここ詳しくやると物語が進められない。もどかしい限りである。
ローザちゃんは、14才になり、立派なレディになろうとしている。
孤児院の食事では、貧相なままだったかもしれないが、修道院の食事は栄養のバランスが取れており、ローザちゃんの身体の成長も著しい。
鏡を見る。カワイイ女の子が写っている。
…。私か。
回ってみる。スタイルも良いな。朝夕運動するようになって、引き締まってて中々良い感じである。それでいて、女性らしく柔らかそうな感じもある。
笑ってみる。うん、笑顔も良し。
少し視線を下にする。胸は…。まずまず。
…。違う。それは、まぁ、良い。
鏡を見直す。耳にはイヤリングがあった。金髪に水色のイヤリングは、確かに良く似合っている。
これで、いつでもシャドと連絡が取れる。
念を送るとバチッと繋がった感じがする。丁度電話する感じ。
「こんにちは。」
「何かしら?」
オネエ言葉も姿が見えないと違和感も薄い。
「もうすぐ勇者が、聖女を迎えに来るはずです。」
「あら、そうなの。」
「近々彼らは、中央平原の砦の攻略に行くと思うのですが。」
「ええ。コチラでも把握していますわ。」
「そこで、持久戦が出来る相手をぶつけて欲しいんです。」
「ふーん。ヒーラーが必要な状態を作るって事ね?」
さすがは魔族の頭脳。察しが良い。
「えぇ。」
ヒーラーが必要な敵と当たり、聖女の噂を聞きつけてここに迎えに来ると言うストーリーだから。
「丁度良いのがいるわ。アンデットだから、聖属性魔力が必要になるし、良さそうね。」
聖女が必要な状況を、作ってくれるというわけだな。
「じゃあ、お願いします。」
「はいはーい。大丈夫よー。」
…。
あの時、シャドと交わした契約。
それは、情報の共有だった。私から人間側の情報、シャドからは魔王軍の情報を共有する。
勇者の情報を流して、その時に勇者が倒せるレベルの魔族を、派遣して勇者と戦わせる。
勇者は、その魔族たちと戦い成長する。シャドは、敵対する部族を、勇者と戦わせて消すことで、魔王軍の中での地位が上がる。
シャドの影夜見族を迫害していた部族中心に、勇者討伐軍を組ませるなどして、上手くやっているようだ。
どうやって、コントロールしてるのかなって思ったんだけど。
「魔族ってのはね。単純でプライド高くて見栄っ張りなの。少し焚き付けたら、直ぐに飛んで行くもの!」
なんて策士のシャドさんが言ってた。
DQやFFなんかのゲームでは、何故か弱い敵から戦い、主人公が強くなるにつれて、強い敵が現れるけど…。
「ゆうパン」は私が作った小説だけど、戦う敵のレベル調整というか、裏では、ローザちゃんとシャドさんがこんな苦労してたなんてね。
私の情報源は、もちろん「ゆうパン」の記憶にある知識と…。もう一つある。それなんだけどね。まぁ、うん。
数日後。
「ローザ。」
窓から男の子の声がする。
「ピータ?入って良いよ。」
2階の窓からだが、造作もなくピータが入ってきた。
隠遁のスキルがあり、誰からも気付かれない。
「勇者パーティが、砦の攻略に失敗したそうだよ。無事だったみたいだけど。」
情報が速くて正確。できる男である。
「…。うん。わかった。で、彼らは?」
「こっちに向かっているみたい。」
「OK、良かった。ありがとう。」
そっとピータの顔に指で触れて、聖属性魔力を少し流し込む。疲れが取れるはず。
気持ち良さそうにしているピータを見ると、まるでワンコのように可愛く思ってしまう。頭をナデナデしてあげたくもなる。
だって、情報収集だけじゃなく、聖女の噂のバラマキとか、イロイロやってくれてるもの。
「じゃあな。…うん。回復魔法で元気出たよ。勇者が近づいてきたら、また来るよ。」
この1年半で背も伸び、カッコよくなってる。頭ナデナデとかさせてくれんかな。
逆に、貴方が私をナデナデしてくれても良いんだけどね。
ところで病気だった彼の母親は、私の魔法で回復した。肺炎をこじらせた感じだったので、肺を部位だけ回復させたら上手くいった。あの時のピータの冒険者としての収入もあって、母親の道具屋さんも再開でき、どうにか生活出来るようになった。
それ以来、ピータは恩に思ってか、私のお願いを聞いてくれるようになった。情報収集なんかは、盗賊職として天性の才があったので、メチャ優秀である。
ピータの情報と私の「ゆうパン」の記憶で、かなり正確な現状把握が出来る。
もうすぐ息子が、勇者エーターとしてやってくる。
俺は、こんな姿だけど、会えるの楽しみだな。どんな男になっているだろうか?
ピータが、音もなく出ていった。
…。一人になり、寂しさを感じた。
勇者が近づいてきたら、また来るって言ってたかな。
また、すぐ会えるか…。
胸の奥に少し暖かいものを感じた。




