聖女と悪魔
魔族は膨大な魔力を扱うために、嘘がつけない。
と言うか、魔力の大小、力が全ての価値観で、嘘を付く必要がない。
聖女も、聖属性魔力を扱うために、嘘をつくことができない。精神が汚染されて聖属性魔力を失ってしまうためらしい。
ということは、修行中の座学で学んだ。
ただ、必ずしも本当の事を言う必要はないとの事。
難しいね。
でも、だからこそ、魔族と聖女の契約には嘘はなく、ある意味、信用ができた。
シャドが、私の耳にイヤリングをつけてくれた。
呪いのアイテムだったら、どうしよう。
「大丈夫よ。呪いなんかじゃないわよ。」
「心が読めるんですか?エスパーですか?」
シャドが、笑顔になった。
「エスパー?なにそれ。でも、そんなイヤな顔されたら、イヤでもワカルわよ。これで、よしっと。」
耳にイヤリングが付いたけど、どんなだかわかんないな。
「イヤじゃないですけど、コレなんですか?」
「これでアナタと連絡がとれるわ。良く似合ってるわよ。本当の名前が判れば、呪いもかけやすんだけどね!」
シャドが、イタズラっぽく笑った。
可愛くはないが、ちょっと怖いけど、いい笑顔だ。流石は私の推しキャラ。
「もぅ。呪いなんて、やめてくださいね。」
「聖女を呪いにかけるなんて、できるわけないわよ。まぁ、達者になさい。期待してるわ。」
笑顔を残して、シャドは消えた。
魔族は嘘をつかない。だから、聖女に呪いかけることはできない。あと、このイヤリングが似合ってるってのも、ホントだろう。ちょっと見てみたいな。
やはり女子には、鏡が必要だね。
シャドが、魔物を引き連れて闇に消えた後、ピータと二人取り残された。
体力もなく、魔力もほとんど残っていない。
このまま、野垂れ死にするかも…。
手を組んだけど、このままじゃ力尽きて力になれないですよ。
シャドさん、アフターサービスをプリーズ。
ふいに誰かの気配がするが、悪意は無いようだ。きっと大丈夫。そっか、誰か来たのが分かったからシャドは、急いで消えたんだな。
ミリアちゃんを乗せた馬車の血路を開いた後、虹色の流星リーダーのウエストさんが、引き返してきてくれた。
彼も子どもを犠牲にしてしまったことに、後ろめたさがあったのか、彼自身にとっても命の危険を顧みず来てくれた。
「大丈夫か?何があった?魔物はもういないようだが…。」
安心してしまったのか、気が抜けてしまったのか。
限界だった。私の意識はここまでだった。
気がついた時、修道院の自室にいた。
ベットの横に、ミリアちゃんがいた。私の手を握り、眠ってしまっている。
ずっと祈っていてくれたようだ。頬には涙の跡。
心配かけて、ゴメンね。
上半身を起こして、ミリアちゃんの頭に手を置くと、彼女は目を覚ました。
「お、お姉様!。」
声にならないけど、ミリアちゃんがそう言ってハグしてきた。温かくて柔らかい。
いつまでも、引っ付いていたかったな。
…。ミリアちゃん、まだ10才だよね。
私より、背低いよね。
なんか将来有望すぎる感触があった。反応するモノは無いが、心はバッキバッキや…。
…たいへん失礼した。取り乱した。
「大丈夫だから、院長先生に報告に行くね。」
理性全開で取り繕って、ミリアちゃんの頭を撫でて安心させて、起き上がった。
院長先生には、聖女である自覚を持って、自分を大切にするようにって、怒られたけど、自己犠牲こそ聖女の本質だから仕方ないとも言われた。
ただ、心配だったと、涙してくれた。母親のような、温かさが心地よかった。
本当の親じゃないけれど、母親がわりの院長先生に見守られながら、順調に修行をこなし、1年半が過ぎた。
そう、ローザちゃんになって、2年が経ったんだ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。前半はここまでかなという所です。
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