ゆいこのトライアングルレッスンU〜バーテンダーたくみのひとりじめ〜
トライアングルレッスンウィーク!
毎日投稿中。
「マスター、もっと強いものちょうだ〜い!」
「お客様、飲み過ぎですよ」
「もう! まだ、全然飲んでなぁい〜」
酔っ払ったゆいこが、また駄々をこねている。
「たくみ〜? 聞いてんの?」
ゆいこは、ひろしと何かある度、決まってここにやって来る。
俺としては、そんなに気分の良いものではないが、酔っ払ったゆいこは甘えん坊で、子供みたいで、やっぱり可愛かった。
俺は店の扉に掛けてある看板を、静かに『CLOSED』にした。
店内は、ゆいこと俺の二人きり。
俺は、ゆいこの前でシェイカーを振る。
「たくみはさ、どちらかというとBARじゃなくて、居酒屋だと思うんだよね。えへへ」
「それ、何回目だよ」
「なんで、バーテンダー?」
首をかしげるゆいこの前に、俺はカクテルを差し出した。
「キス・ミー・クイックです」
「キスミー…んん?」
「早く、キスして…」
「へえぇっ!?」
頬を赤らめたゆいこが動揺した。
「カクテル言葉だよ」
「急に何言うのよ!」
「じゃあ、俺がしよっか?」
「変な冗談やめてよね!」
「今夜は、俺がゆいこをひとりじめ」
「くっ、口説いてるつもり? バカっ!」
ゆいこは頬を膨らまし、むくれながらも、カクテルを口に運んだ。
「美味しい! やっぱり、たくみのカクテルが一番美味しいなぁ」
「当たり前だろ? で、何か、あったのか?」
「うーん…。ひろしがね、知らない女の子とショッピングしてるところ見ちゃったの…」
「ふーん…そっか」
「ええっ? それだけ!?」
ゆいこは、ぶつぶつ俺に文句を言いながら、ひろしのことを絶え間なく話し続けた。
どうせ、俺に聞かれるのを待っていたのだろう。
そして、話し疲れると、スースーと寝息をたて始めた。
「ったく、俺の気も知らないで…。バーテンダーになったのは、ゆいこのその顔を一番近くで見たかったからだよ…」
ゆいこと俺の間には、ずっとカウンターほどの距離がある。
俺は、ゆいこの幸せそうな寝顔を見つめた。
ドタドタ足音を立て、アイツが店にやって来た。首元のネクタイをゆるめながら、スーツを乱したひろしだ。
「あ、やっぱりここにいた」
「お? 王子様のお迎えか?」
「何言ってんだよ」
「お前さぁ、他の女とイチャコラしてたら、誰かさんが奪っちまうぞぉー」
「なんの話だよ」
「女の子とショッピング? 可愛いゆいこ様が、泣いてんぞ?」
「それ…会社の同僚。誕生日プレゼントを選んでもらってたんだよ」
ひろしの手には、ゆいこへのプレゼントがあった。
「それくらい自分で選べよ。ちなみに、俺はもうあげたぜ?」
「へっ…?」
「お前がうだうだしてる間に、この可愛い寝顔にな」
俺はそう言うと、先程までカクテルが入っていたグラスをひろしに見せ、ニヤリと笑った。
明日は、野球部たくみ、弓道部ひろしです!
個人的には一番胸キュンストーリーかなと思ってます。