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オフィスの花子さん

掲載日:2024/07/04

 蒸し暑い夏の夜、とある古びたオフィスビルの一角で、肝試しイベントが開催されていた。

 ビルの外壁は所々錆びて、蔦がはびこっている。

 そんないかにもなにか出そうな場所で、ビルで働く若手社員たちは肝試しをするつもりなのだ。


「聞いたことある? ここのトイレにも花子さんがいるんだって」と、ある社員がささやいた。


「いい大人が本気で言ってんの? 小学校じゃあるまいし、ここにいるかよ」別の社員が半笑いで答えた。


 その夜の肝試しは、今は使われていない、噂の3階のトイレで行われることに決まっていた。


 ルールは簡単。二人一組で3階の女子トイレ、3番目の個室に置かれたカードを取って戻ってくるだけ。

 しかし、噂を聞いてしまった後では、その簡単なタスクも恐ろしいものに感じられた。


 最初のペアが挑戦することになった。

 クジで決まった新入社員の男子ペア、高木と阿部だ。

 二人は懐中電灯を片手に、階段で3階に向かった。

 いつもみているオフィスなのに、非常灯しかついていないから薄気味悪い。

 暗くて静まり返っていて、自分達の足音が響くだけだった。

 3階の女子トイレ。ドアを開けると古いタイル張りの床が見える。

 当然だが、中には誰もいない。

 噂を聞いたせいで、なにかいそうな気がして背筋が冷たい。


「早くカードを取って戻ろう」


 高木が言うと、阿部が茶化す。


「声が震えてるぜ。びびってんのか高木」

「そ、そんなことねーけど」


 高木が個室の中に置かれたカードに手を伸ばした瞬間、入り口のドアが突然閉まった。


「な、なんだよこれ! 先輩たちがおれらをびびらそうとしてやってんのか!?」

「落ち着け高木。ここにくるまで俺たち以外の足音なんて、しなかっただろ!」

「じゃあなんで開かないんだ!? 誰も閉めてないのに勝手に鍵がかかるかよ!」


 二人は動揺し、泣き叫んでドアを叩く。


「開けてくれ!」


 その時、背後から子供の声が聞こえた。


「ここで何をしているの?」


 振り向くと、戦時中を思わせる古いデザインのミニスカートをはいた少女が立っていた。

 おかっぱ頭で、顔は影がかかって見えない。


「トイレの花子さん…?」


 阿部が震える声で問いかけた。


 少女は何も答えず、ゆっくりと近づいてきた。

 彼らは恐怖に駆られ、必死にドアを開けようとしたが、ドアはびくとも動かなかった。

 少女の冷たい手が肩に触れたその瞬間、二人は意識を失った。




「起きろ、おい。おい、お前ら。何があったんだ? いつまでたっても戻ってこないから見に来てみたら、二人して床に倒れて……」


 いつの間にかオフィスの電気がついていて、外で待っているはずの他の社員一同が二人を見下ろしていた。


「花子さんが……おれたち、閉じ込められて」


 チーム数分用意されていたはずのカードはどこを探しても見つからず。 


 肝試しは中止され、その後、誰も3階のトイレに近づこうとはしなかった。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] あの花子さんがこんな場所にも…! 閉じ込められて近寄られたらすごく怖いですよね:( ;´꒳`;) 二人ともちゃんと戻ってこれて良かったです! 読ませていただきありがとうございました(✿ᴗ͈…
2024/07/05 09:52 退会済み
管理
[良い点] 学校の七不思議でお馴染みのトイレの花子さんですが、オフィスビルに現れると何とも新鮮ですね。 彼女が何故、オフィスビルを根城にするようになったのか。 そうしたバックボーンにも興味が湧いてきま…
[良い点] 懐かしいですねぇ 学校で必ず聞いたお名前です。 肝試しも夏って感じですが、面白半分に本当はそんなことしては駄目ですよね。
2024/07/04 22:03 退会済み
管理
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