#7「共同生活の始まり」
─── あの魔物襲撃事件から、約一週間が経った。
あれから、私の冒険者ランクがEからCになった。本来であれば、ランクは一つしか上げてはいけないらしいのだが、ブラモスを救ったということもあり、特例的に二つ上がった。
・・・まあ、確かに魔物を倒したのは事実だが、そもそもあの魔族がこのブラモスを滅ぼそうとする原因となったのは私なんだよなぁ・・・。と思いながらも、そんなこと言ったら私がブラモスから追放されたりするかもしれない、と思い、辺りの人には黙っておくことにした。
ようやく一通りのごたごたが収まり、ようやくスローライフを満喫できる!と思ったのだが・・・、私のもとに”とある人”がやってきたのだった ───。
マイホームでのんびりとしていると、玄関をコンコンとノックする音が聞こえた。はいはい、と小さく呟きながら、玄関の扉を開ける。
すると、そこには、あの襲撃事件の時に迷子になってたエリカがいた。
「・・・え?エリカ?どうしたの?」
私は戸惑いながらもエリカに問いかける。
「私、お姉さんと一緒に暮らしたい!」
エリカは私の方を見てニコニコしている。
「・・・ん?どういうこと?」
「だから、お姉さんと一緒に暮らしたい!」
「・・・なんで?」
私は混乱している。だって、いきなりこんな小さな子に「一緒に住みたい!」とか言われたら誰だって混乱する。
「私、あの時お姉さんに助けられたとき、お姉さんの姿見てとてもかっこいいな!って思ったの。だから、私もお姉さんみたいな冒険者になるために、お姉さんと一緒に暮らしていろんなことを勉強したい!」
「・・・それって、お母さんには言ってあるの?」
「うん!お母さんに言ったら、笑顔で『行ってらっしゃい』って言ってくれたよ!」
親御さんの許可済みかあ・・・。面倒だけど、ここまで来てくれたんだよね。さすがに断るのは心苦しい。
「わかった。いいよ。」
「やったー!」
まあたしかに、この3LDKのマイホームに一人暮らしって少し寂しいなぁとは思っていたので、これも良い機会なのではないか。
「お姉さん、これからよろしくね!」
・・・「お姉さん」って呼ばれるのもこそばゆい。けれど、たまにはこういった呼ばれ方も悪くはないな、と思った。
─── こうして、私とエリカはしばらくの間一緒に暮らすことになった。
***
さて、エリカと一緒に暮らす・・・、といっても、エリカはまだ9歳ぐらいの小さな女の子。まるで私の娘のようだ。
実をいうと、私は料理が大の苦手だ。今まではすべて町の飲食店で食事をしていた。今までは一人暮らしだったのでそういった生活が許されていたが、小さな女の子と共同生活を送るということでは、さすがに外食ばかりではダメだ。
さて困った。料理の作り方をインターネットで検索しようにも、まずこの世界にはインターネット環境はもちろん、パソコンやスマホといった機器もあるわけがない。料理番組を見ようとも、テレビがないし、そもそもこの世界ではテレビの放送局すら存在しない。
・・・と、ここでとあることを思い出した。そう、あれは、ブラモスの領主の娘であるミシェルを強盗から助けた後、領主の家系であるバニバール家のお屋敷に招待されたときのこと ───。
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「は、はい。ありがとうございます。」
領主であるカイルから、ミシェルを助けてくれたお礼として、金貨20枚を出され、私は動揺しながらもその金貨の入った袋を受け取った。
「俺は、まだアオ殿に対し全部の恩を返しきれたとは思えていない。アオ殿が何か困っていたりしたときは、いつでも俺たちバニバール家を頼ってくれ。門番たちには、アオ殿が来たら屋敷に通すよう伝えておく。」
・・・カイルさん、娘であるミシェルのことが大好きなんだろうな。
「では、お言葉に甘えて、何か困ったことがあれば頼らせていただきます!」
そう言い、私は領主の部屋から立ち去った。
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確か、あの領主、「困ったことがあればいつでも頼ってくれ」とか言っていた。
私は今、料理のことについて困っている。ということは、あのお屋敷に行けば誰かが料理を教えてくれる・・・ということだろうか。
そう思い、私はバニバール家の屋敷へと、エリカとともに向かった。
***
「すみません、領主のカイルさんに用があって来たんですけど・・・。」
屋敷の前にいた門番にそう言う。
「あんた、名前は?」
「アオです。」
「・・・ああ、アオ殿でしたか。どうぞお入りください。」
この門番、言葉遣いの差がすごいな・・・、まあ、大体そんなものか。と思いながら、私は門番によって開かれた大きな門をくぐった。
「お姉さん・・・、ここどこ?」
「ここはね、このブラモスの町の領主のおうちだよ。」
「ええええ!!なんでそんなところに私たちいるの?・・・もしかしてお姉さん何か悪いことでもやっちゃった?」
「やってないよ!!!」
まったく、勝手に悪者扱いしないでもらいたい。
私たちは大きな玄関扉の前に着いた。
「おや、そこにいるのは・・・、アオ様ではないですか。」
庭のほうから声が聞こえ、目線をそこにやる。すると、そこには執事のエリックがいた。どうやら庭仕事をしていたらしい。
「本日はどのような用事でこちらに?」
「実は、私いろいろあって、このエリカっていう子と一緒に生活をすることになったんだけど、私料理ができなくてずっと外食続きで、今までは一人暮らしだったからよかったんだけど、今はエリカもいるし、料理できたほうがいいのかなって・・・」
「・・・つまり、料理を教えてほしい、ということでしょうか?」
「はい!そうです!」
「ああ、そうだった。実はアオ様、領主・カイル様より言伝なのですが、『今度アオ殿がこの屋敷にやってきたら、俺のところまで来てほしい』とのことです。案内いたします。」
「えっ、はい・・・。」
正直、私は料理さえ教えてくれればそれでいいので、今回は領主に会うつもりは一切なかった。まあ、領主が料理を教えてくれるのであればいいのだが、こういった貴族の人たちは、たいていの場合執事やメイドが日常的に料理を作っているので、貴族はあまり料理ができないイメージがある。
「こちらです。」
執事が、領主の部屋の前で立ち止まる。そして、領主の部屋の大きな扉をノックすると、中から「どうぞ」という声が聞こえた。
大きな扉を開け、私たちは領主の部屋へと入っていった ───。
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