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#6「町とスローライフを守る」

 私は避難中の住民から「娘のエリカとはぐれてしまった」との相談を受け、探しにいくことにした。

 エリカの名前を呼び続けながら町中を歩き回っていると、スキル「敵対探知」におびただしい数の反応があった。反応があった方に目線をやると、そこには数千・・・、いや、数万の魔物が空を飛んでいた。

 そして、その一番前には、あの時森で出会った魔族、ベンがいた───。


***


「まずいぞ!!おびただしい量の魔物だ!撃て!!」


 町の外では、おびただしい量の魔物をブラモスの中に入れまいと、勇敢な冒険者・騎士団が戦っていた。町の壁の上からは、大砲を空に飛ぶ魔物に向け撃っていた。


「ふふ、邪魔ですね。あなたたち。」


 ベンは、地面に降りると、冒険者や騎士団たちに向け無数の槍を降り注がせた。あれも魔法なのだろうか。

 槍に当たった冒険者や騎士団は、血を出しその場に倒れてしまった。


「おい、早く回復魔法を!」


 冒険者ギルドのギルマスは、町の魔法使いたちも呼んでいた。魔法使いたちに負傷した騎士団や冒険者に対して治癒魔法をかけるように指示した。


「セラフィー!」


 セラフィー、とは、下級の治癒魔法である。そもそも魔法というのは上級・中級・下級に分類分けされており、上級になればなるほど魔法の効力は強まる。これは全ての魔法に共通して言えることだ。セラフィーは下級の治癒魔法のため、浅い傷は治すことができても、深い傷は治すことはできない。


 血溜まりができている中、ベンとそれに続く魔物たちはそれを無視するように町の中へと入っていった。


***


「エリカちゃーん!」


 私は、エリカがこのままだと、いつかあの大量の魔物たちに襲われてしまうのではないかと思い、必死に町中を探し回る。

 壁の外からは、たくさんの人の悲鳴が聞こえる。きっと激戦になっているのだろう。


 町中を探し回っていると、路地裏の方から微かにではあるが女の子のすすり泣く声が聞こえた。私は、その微かに聞こえる音を頼りに路地裏に向かう。


 すると、そこには小さな女の子の姿があった。大体9歳ぐらいだろうか。体育座りで泣いている。


「もしかして、君がエリカちゃん?」


 女の子は小さく頷く。どうやらこの子がエリカのようだ。私の方を見て少し警戒している。


「私はアオ。悪い人ではないよ。お母さんに頼まれて、エリカちゃんのことを探してたんだ。さあ、避難場所に一緒に行こう。エリカちゃんのお母さんもそこで待ってるよ。」


 女の子は小さく頷くとともに立ち上がり、私の手を握った。

 避難場所に向かうため、まずは路地裏から出なければならない。だが、私のスキルにまたもや反応があった。それも、私たちのかなり近くで。

 もしかして、魔物が町に入り込んできた?


 私は、路地裏の入り口から息を殺して大通りの方を覗く。すると、そこには数匹の魔物が歩いていた。


「エリカちゃん、ちょっと離れていて!」


 そう言うとともに、エリカは私の手を離す。そして、私は町を歩いている魔物に向け、自らの持っていたナイフを突き立てた。魔物は一発刺しただけで死んでいく。


「お姉さん、すごい・・・。」


 エリカは、私のことを目を輝かせて見ている。


「さあ、行こう。」


 私はエリカの手を再び握り、走って大通りに出る。


 避難場所に向かって走る。魔物がたくさんいるが、まずはエリカの命を守るのを最優先しなければ。

 すると、後ろから火の玉が打ち込まれたのを感じた。これは下級魔法の「ファイアーボール」だろうか。私は、中級魔法である「バリア」を使用し、私とエリカの後ろに見えない壁を設置した。このバリアは、初級・中級の攻撃魔法であれば防ぐことができる。だが、上級の攻撃魔法は防ぐことができない。


 ─── 数分走り続け、ようやく避難場所へと辿り着いた。とっくに住民の避難誘導は済んでいたようだ。中の住民も無事だ。


「エリカ!!」


 エリカの母親がそう叫び、駆け寄りエリカをハグする。そして、立ち上がり私の方を見て、


「本当に、本当にありがとうございます!」


と、涙ながらに感謝してくれた。


 だが、これでハッピーエンド、とはいかない。町には魔物がたくさんいる。町の壁の外で戦っていたS〜Cランクの冒険者たちや騎士団はほぼ壊滅状態となっていた。

 D〜Eランクの冒険者たちは怯えた表情で住民と共に避難場所にいる。


 このままだと、ブラモスの町が・・・、私のスローライフが・・・。


 そう思い、私は立ち上がり、避難場所の外へと出た。


 「魔法はイメージが大事」と、この前魔法の勉強をしている時に学んだ。私のマイホームだって、イメージで作った。

 イメージ次第では、なんでもできる。


 私は、目を(つむ)り、「ブラモスの中、そして近郊にいる魔物全員に中級魔法『ブラックファイアー』を降り注がせる。」といったイメージをした。ブラックファイアーとは、通常のファイアーボールの四倍の攻撃力を持っている攻撃魔法だ。黒い炎で敵を倒すことができる。と、本には書いてあったのだが、実際に使ったことはない。うまくいかないかもしれないが、やらなければ結果はわからない。

 イメージをし、それを解き放つ。それとともに、私のMPがごっそりと減るのが感じられた。


 町の中と近郊にいる魔物の頭上に黒い炎が焚かれ、そして下にいる魔物に向かって放たれた。魔物たちは黒い炎で焼かれ、瞬時に倒れていった。

 よかった。成功した。私はそっと胸を()で下ろした。


「おや、あなたは・・・、この前森で会った人じゃないですか。」


 上から声が聞こえた。見上げると、そこにはあの魔族・ベンがいた。


「・・・何の用?」

「いやはや、まさかあなたが、この町から感じていた大きな力の正体だったとは。」

「いや、そんなわけ・・・」

「嘘をついても無駄ですよ。さっきのあの魔法の一斉攻撃。なかなかのものでした。しかも、中級魔法をあそこまで上手に扱えるとは・・・。」


 ・・・はあ。バレてしまったか。面倒なことになるからずっと隠してたんだけどな。


「まあいいでしょう。今日のところは仲間たちも居なくなってしまったので、この辺にしておきましょう。また来ます。次来たときは・・・ね。分かりますよね?」


 そう言い放つと、ベンは消えてしまった。


***


「もう大丈夫ですよ、敵は全員居なくなりました。」


 避難場所で待機している住民たちに対し、そう大声で言うと、一気に歓声が湧いた。


 町の壁の外に出ると、そこには町の魔法使いたちが、戦いによって傷ついた冒険者や騎士団の人たちを治癒魔法により治療していた。が、なかには深い傷を負っている者もいたため、全員治療できなさそうだった。


 私は、「傷を負って倒れているすべての人たちに中級魔法『ヒール』をかける」というイメージをした。ヒールは、初級魔法のセラフィーとは異なり、深い傷も治癒することができるものだ。

 イメージをし、それを解き放った。すると、倒れていた人たちの傷がどんどん治っていった。


「なんだ!?」


 魔法使いたちやギルドマスターは、そう呟き、驚いた表情で私のほうを見ていた。


 ひとまず、ブラモスの危機は過ぎ去った。

 そして、私のスローライフも守り抜くことができた。・・・だけど、この事件のせいで様々な力を使ってしまった気がする。このせいで私のスローライフが邪魔されなければいいけど・・・。と思いながら、この騒動はいったん幕を閉じた。

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