#5「ブラモスの危機」
───「やあ。」
森を歩いていると、目の前に突然宙に浮かぶ黒服の男が現れた。男は不敵な笑みを浮かべ、こちらを見ている。
「・・・あなた、誰?」
「おっと、私のことをご存じではない・・・と。いいでしょう。私は第三魔族のベン。」
魔族・・・、ってなんだ?何だかわからないが、強そうなのは見て分かる。
「何か用?」
「あら、反応が冷たいなぁ。私は、ブラモスを火の海にしようと思い来ました。」
「・・・は?」
「ブラモスを火の海にするとは・・・?」
「その言葉のままですよ。ブラモスを火の海にする、ということです。」
「・・・何を目的で?」
「このブラモスからは、すごく大きな力を感じるのです。それは、まるで魔王様をも圧倒するような力です。我々魔族は、大きな力を感じることはできるのですが、残念ながら誰がそのような力を出しているのかということは見抜くことができないのです。ですので、将来我々の脅威となりえる存在は、町ともども滅ぼしてやろう、ということです。」
この魔族とかいう人、とてつもなく恐ろしいことを言ったな・・・。というか、その「大きな力」って、まさか私の力のこと?
「まあ、今日は帰る。魔王様に会わなくてはいけないのでね。また明日、ブラモスに行きます。私が次に来たときがブラモスの最期だと思っておいてください。では。」
「え、ちょっとまって!」
気づいた時には、魔族は姿を消していた。瞬間移動、ということか。
っていうか、ブラモスを火の海にする?私の力のせいで?・・・そんなことされたら、スローライフはおろか、この国で暮らすことさえ許されなくなってしまうのでは・・・。
まずい。スローライフを満喫できなくなってしまう。何としてでも、あの魔族からブラモスを守らなければ。
ひとまず、この事態を町の誰かに伝えなければ話は始まらない。期限は明日。それまでになんとかしなければ。
私は、走って冒険者ギルドへと駆け込んだ。
「アオさん?どうしたんですか・・・?」
受付嬢は、走って入ってきた私を見て動揺している。
私は、さっきギテヤの森であった出来事を、包み隠さず受付嬢に伝えた。
「ええええ、そんなことが・・・。ひとまず、ギルドマスターのところに案内します!」
そう言うと、受付嬢はギルドの奥に通してくれた。
「やあ、俺はライアン。冒険者ギルドのギルドマスターをしている。君は・・・アオくんと言ったよね?」
「あ、はい。というかなんで私のことを知って・・・」
「君のあの異常なまでのステータスは、もう町中の人が知ってるぐらい有名だからね〜。」
町中にそんな話が出回っているの・・・?って、今はそんな話をしている場合ではない。
私は、受付嬢に話したことと同じことをライアンに話した。
「─── つまり、魔族の輩が、このブラモスに攻め入ってくるという事か?」
「そう。」
「なるほどなぁ。」
「ちなみになんだけど、あの魔族とか言う人、魔王様が〜〜みたいなことを言ってたんだけど、魔王って本当にいるの?」
「ああ、いるさ───」
ライアンは魔王について詳しく教えてくれた。
この世界において、魔王というものは全ての魔物を統べるものとされている。その魔王の血筋の魔物を「魔族」と呼ぶ。魔族は普通の魔物と異なり、ステータスがものすごく高い。
ライアンは、すぐにブラモスの領主であるカイルにそのことを伝えに行った。そして、カイルは町の騎士団に対し町の防衛をするように指示を出した。
そして、冒険者ギルドでは、すべての冒険者に対し召集がかけられた。
さて、これから町の防衛戦・・・、いや、私のスローライフを守る防衛戦の始まりだ───。
***
冒険者ギルドの全ての冒険者が集められたわけだが、その全員が防衛に加わるというわけではない。
前にも言った通り、それぞれ冒険者はS〜Eのランクで分けられている。S〜Cランクの冒険者が主に防衛戦に加わり、それ以外のD〜Eランクの冒険者は、ブラモスの住民の避難を誘導する役となった。私もEランクなため、住民の避難を誘導する係となった。
そして、いよいよブラモス防衛戦の日がやってきた。S〜Cランクの冒険者は、町の壁の前で武器を持って待機をしている。私たちD〜Eランクの冒険者は、町の避難誘導をしている。
ブラモスの住民が大勢避難場所に流れ込んでくる。みんな不安そうな顔をしている。
すると、住民の一人がいきなり私に話しかけてきた。
「あの、私の娘とここにくる途中にはぐれてしまって・・・。」
「えっ!どこではぐれましたか?」
「それが分からないんです・・・」
「分かりました、ではその娘さんの名前は?」
「エリカです。」
私は、その住民から話を聞くと同時に、娘さんの捜索に行くことにした。
「エリカちゃーん!」
私が町中を歩きながら、大きな声で娘さんの名前を言い続ける。きっと、避難場所へいく人混みに紛れて迷子になってしまったのだろう。
こうしてエリカの名前を呼び続けながら町中を歩き回っていると、スキル「敵対探知」におびただしい数の反応があった。反応があった方に目線をやると、そこには数千・・・、いや、数万の魔物が空を飛んでいた。
そして、その一番前には、あの時森で出会った魔族、ベンがいた───。
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