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#11「王城に行く」

<前回までのあらすじ>


 アオとエリカは、王都で起きている”何らかの異変”についての調査のため、王都へと行ったのだが、そこでみたのは無感情で歩いている王都の住民たちの不気味な姿であった。

 王都の冒険者ギルドに行くと、そこにはエミリーという名前の受付嬢が一人だけでいた。エミリーの話によると、王都の住民たちは感情蜂(エモートビー)というものに刺されたという。感情蜂(エモートビー)は、刺した人の感情を奪い、自らの活力とする魔物である。

 アオとエミリーの二人は、王都に関する情報収集のため、王城へ行くこととした。

 私たちは、誰も何も話さず、表情すら変えないといったとても不気味な王都の中を淡々(たんたん)と歩いていた。


「アオは、ブラモスでいつも何をしているの?・・・やっぱり、冒険者としてブイブイ言わせてるの?」


 歩いている最中、エミリーがいきなり私に対し問いかけた。


「いや?私はただゆっくりとブラモスの町で生活しているだけだよ。一応冒険者というものを生業(なりわい)としているだけで。」

「ええ、これだけの力があるのに・・・。この力があれば国一つ滅ぼすことができそうよ。」

「それ、ブラモスの冒険者ギルドの人にも同じようなこと言われたよ・・・。私はただスローライフをしたいだけなのに・・・。」


 私は、ため息をつきながら歩く。


 そんなことを話しながら歩いていると、いつの間にか王城の門の前に着いた。門は、ブラモスの領主の家系・バニバール家のお屋敷の門の何倍も大きく豪華だ。

 門の前には、門衛が二人立っていた。だが、この門衛、何かがおかしい。私のスキル「敵対探知」が門衛に反応しているのだ。しかし、敵対的な行動を取るような気配や様子は感じられない。

 ひとまず、何も気づいていないふりをして話しかけてみよう。


「あのー、すみません。王城の中の図書館を利用したいのですが、通してもらえませんか?」


 まあ、本当の目的は国王にこの感情蜂(エモートビー)の対策に関する直談判をすることだ。だが、本当の目的を言っても、どうせ門衛は中に入れさせてくれないだろう。そこで、「王城の中の図書館を利用したい」という目的を伝え、あたかも私が勉強熱心な少女かのように見せることで、王城の中に入れさせてくれるのではないか、と考えた。

 王城の中に入ることさえできれば、玉座がある「謁見(えっけん)の間」にはどうにかして行くことができる。


(アオ。さすがにこんな理由じゃ王城の中に入れないわ・・・。)


 エミリーは口にこそ出さないが、呆れたような表情をしていた。


「・・・はい。どうぞ。」


 門衛が感情のこもっていない声でそう言うと、大きな門が開いた。


 こんな理由で通してもらえるなんて・・・。と、エミリーは唖然(あぜん)とした顔をした。


 私たちは、王城の中へとすんなりと入ることができた。だが、私はさっきの門衛の「敵対探知」の反応に疑問を抱いていた。


***


「なんか不気味だわ・・・。」


 エミリーが(つぶや)く。中には”人”は居るのだが、なぜかその全員に敵対探知が反応する。が、敵対的な行動をしようとはしていないようである。

 皆、町の人たちと同じように無感情で歩いていた。もしかしたらこの”人”たちも感情蜂(エモートビー)餌食(えじき)となったのだろうか。


 長い廊下をしばらく歩いていると、目の前に大きな扉が現れた。おそらく、この先に謁見(えっけん)の間があるのだろう。

 ゴックン。と、私とエミリーが息を呑む音が聞こえた。


 意を決して、その大きな扉をゆっくりと開いた。


()()()()は誰か?」


 謁見の間に、低い男性の声が響き渡る。正面を見ると、そこには玉座に座った男の人が見えた。あれが国王だろうか。

 国王も、王城の中に居た人たちと同じように、「敵対探知」に反応している。しかも、今までよりも大きな反応だ。


「あなたが、国王様ですか?」

「いかにも。()はこのマドラン王国の国王、アーサーである。」


 アーサー王は、私たちのほうをじっと見ている。・・・というよりか、エミリーのことはあまり見ず、私のことばかり見ている。正直、気味が悪い。


「私はブラモスから来た冒険者・アオです。隣にいるのは、王都の冒険者ギルドに(つと)めているエミリーです。国王様、現在、この王都・ザヌイでは感情蜂(エモートビー)という魔物の襲来により、多数の住民の感情を奪われています。王都の住民を魔物から守るためにも、他の(みやこ)からの支援等、迅速に魔物襲来の対策を検討していただけないでしょうか。」


 私は、アーサー王に向けて言いたいことを全部言った。アーサー王は、静かに私の話を聞いていた。


()はそんなこと知らん。」


 アーサー王は、私たちに向けて清々(すがすが)しくそう言い放った。

 私とエミリーは、両方唖然(あぜん)とした顔となった。一国の命運をすべて背負っている国王にしては、あまりに無責任すぎる発言だ。


「エミリー。お前はこの部屋から出ていけ。アオ、お前については少し話がある。ここに残れ。」

「は、はい。」


 エミリーは困惑しながらも、私を置いて謁見(えっけん)の間から出て行き、部屋には私とアーサー王の二人きりとなった。


「・・・アオ。」

「なんでしょうか。」


 私は、アーサー王の敵対探知の反応が徐々に大きくなっていくのを感じた。

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