#10「王都の異変」
私とエリカは、「王都で”何らかの異変”が起きている件についての調査」というクエストで、マドラン王国の王都「ザヌイ」へと着いたのだが、そこで見たのは誰も会話をしていない、どこか不気味な王都の姿だった ───。
とりあえず、私たちは情報収集のため、王都にある冒険者ギルドへと向かうことにした。
王都の冒険者ギルドに入ると、そこには誰一人いなかった。通常、冒険者ギルドには受付担当が数人、そして冒険者が何人かいるはずだ。人気のない郊外の町にある冒険者ギルドであれば誰もいないのも納得できるが、ここは王都にある冒険者ギルド。誰一人居ないわけがない。
冒険者ギルドの掲示板を見る。通常であればここにはたくさんのクエストが張られているはずだが・・・、ここのギルドの掲示板には何も貼られていない。
私は、カウンターのほうに向けて、「すみませーん」と大きな声を出した。すると、奥のほうから物音がして、長髪の女性が出てきた。
「あら、どなたかしら?あなたたちは・・・、”あいつら”ではなさそうね。こっちに来てちょうだい。」
長髪の女性は、私たちを見ると同時にギルドの奥に案内した。
私たちは、応接室のような部屋に移動した。
「さて、私の名前はエミリー。この冒険者ギルドの受付を担当しているわ。あなたたちは誰かしら?」
「私はアオ。ブラモスという町で冒険者してる。こっちの女の子はエリカ。一緒に住んでる。」
「アオさんとエリカちゃんね。アオさんは冒険者ということだけど・・・、一応冒険者カードを見せてくれるかしら?」
私は、冒険者カードを取り出しエミリーに渡す。
「・・・これ、本物のカードよね。ステータスのレベルの値がおかしいし、しかもバニバール家の認証って、あのブラモスの領主からの認証があるじゃない。」
「正真正銘の本物。」
「まあ、どこからどう見ても偽造品ではないわね。失礼したわ。」
「・・・で、王都の様子が何やら変なんですが、何があったんですか?」
「あぁ、実はね・・・。」
+++
─── 六日前の王都「ザヌイ」 ───
王都「ザヌイ」には、今日も多くの人が集まる。住民はもちろん、各地の冒険者、旅人、都を歩くだけで様々な人と出会うことができる。言わば、マドラン王国の交差点だ。
賑やかな町中で突然、悲鳴が聞こえた。一斉に周りにいた人たちが、悲鳴のあった方向を向く。すると、蜂のような魔物が男性を毒針で刺している様子が見えた。刺された男性は、最初は恐怖の表情を浮かべていたが、徐々に表情を失っていった。
蜂のような魔物は、周りにいた人々もどんどんと刺していった。そして、その刺された人々も、徐々に表情を失っていった。
冒険者ギルドは王都の冒険者たちを緊急招集し、蜂のような魔物を討伐するように命令。即座に冒険者たちが蜂のような魔物に立ち向かうが、小さく動きが速いためすぐに刺されてしまい、冒険者たちも全滅してしまった ───。
+++
「・・・それで、今のような誰も会話をせずに、真顔で町を歩いてるっていう不気味な状況になってるっていうことかあ。」
「そうなの。私はなんとか逃げることができたんだけど、冒険者の人たちや町の人たちが全員おかしくなってしまって、私どうしたらいいのか・・・。」
今まで平静を保っていたエミリーだったが、不安なことを一気に話したせいか、いきなり泣き出してしまった。
私たちは、エミリーをおだてた後、どうするのかを考えた。
まず、先ほどの話に出てきた「蜂のような魔物」。これは以前魔法の勉強をしていた時に読んだ書物に似たような魔物の記述があった。
感情蜂。自らの持つ毒には、人の感情を奪う作用がある。その毒を毒針によって注入し、刺した人の感情を奪い、それを吸収して自らの活力とするという魔物だ。体力自体は少ないためすぐ倒すことができるが、移動速度が速いため、よっぽどの力を持つ者以外が倒すのは非常に難しい。
「そういえば、国王はこの事件に対してどう対処してるの?」
「国王様からの発言や対応は一切ないの。王国には護衛兵がいるのだけれど、国王様からの命令が無いので一切動けず、そのまま蜂の餌食になった人もいるそうよ。」
これはおかしい。これだけ多くの人々が被害にあっているのにもかかわらず、国王が何も対応をしていないのは、明らかに不自然である。
「・・・よし、国王に直接訴えにいこう。」
「ええ・・・って、え!?いやいや、さすがにそれはできないわ。」
「いや、そうするしかないでしょ。この事件が起きたきっかけも分かるかもしれないし。」
「まあそうだけど・・・。わかったわ。あなたに従う。認証もあるからね。」
正直、私たちははやくこの問題を解決して、ゆったりまったりと王都観光を楽しみたい。
エミリーは、ここからむやみに動くのは危ないため、冒険者ギルドの中の安全な場所で待ってもらうこととした。
こうして、私とエミリーは王城へ行くことにした ───。
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