性格の悪い俺の物語
「ライフ様!大丈夫ですか!」
メイドのルナが泣きそうな顔でこちらに頭を下げている。
俺は頭の痛みを堪えきれずうずくまる。
「貴様!…」
その時、俺の頭に別の記憶が入り込みさらに頭の痛さが増す。
「グギギャァ」……俺は頭を抑え記憶の混合をただ受け入れていくしかなかった…。
前世の俺は日本という国に生まれて斎藤裕と言う名前だったみたいだ。
38歳で人生に自暴自棄になりお酒の飲み過ぎで脳梗塞になりこの世となんの未練もなくこの世を去ったみたいだ。
偉そうにすれば人は離れていくし、下手にでてまで人と仲良くできない。孤独からお酒を飲み、人と喧嘩してはまた孤独になる。仕事も現場仕事を転々とする生活で疲れきっていた。
そんな斎藤だったがライフとの記憶が混合された終わったときに思った…
「ここは天国かと」
しかし少し落ち着くとこの国の名前や自分の名前、周りの地域や場所は俺が読んだ小説の「エドの魔法冒険録」の中だと予想するのに、時間はいらなかった。
「マジかよ…」
というのもこの俺ライフは、エドへの嫉妬から今から3年後に学園に入学し、平民のくせに生意気な態度をとるエドに絡み、決闘を申込み負け学園を追い出されその数年後、違法奴隷市場の経営を暴かれ、雇った傭兵と共にエド達を襲い、ボコボコにされ衛兵に突き出され、家からは勘当され、国からは国外追放され、隣の国で鉱山作業をしていた時にエドが国に訪れ、こりもせず人を雇ってエドの仲間の女を襲い、またボコボコにされ、衛兵に捕まり貴族でもない俺はあっさり処刑されてしまう。
「ふむ…」少し考えていると、ルナが
「ライフ様!申し訳ございません!私が庇えなかったばかりに!どうかお許しを!」と泣きそうになりながら懇願してきた。
というのも元々ベットの上から紅茶を持ってくるのが遅いルナに向かって花瓶を投げつけるつもりが足元を滑らして机の角に頭をぶつけたのが原因だ。
元々の俺は10歳の誰かれ構わず当たり散らかしていた癇癪をおこす少年だが今は38歳の記憶を持つ素晴らしい少年に生まれ変わったのだ!
俺を庇わなかったからといって今までみたいにクビにしたり給料を払わなかったりしても何も変わらないし俺もなんの徳にもならない。
「俺を庇えなかったのはミスだがこの通り少し赤くなっただけだ医者もいらん。紅茶を持ってくるのも遅いが次から気をつければ許す!」
「え!?…あ、ありがとうございます!!」ルナは何かの罰は下るだろうと思っていたから驚いていた。
印象を悪くしても何もいいことはないからな。
「よい!今日は気分がいいのだ。紅茶を置いて早く部屋から出ていけ!」
「はい!ありがとうございます!」少し奇怪な顔をしながらルナは部屋を出て行った。
「せっかく貰った第二の人生だ。目一杯楽しもう!」
俺は小説の悪役になった事よりもこの運命に深く喜びを感じた。