白い紙
次の日も塔に行くと、彼は同じ場所に同じようにしていた
また来たの? と言いたげに困ったように私を見る
手の中には相変わらず黒猫がいて撫でている
私が紙を差し出すと、今度は彼はそれを受け取った
けれど、途端にそれは分厚い石版に変わってしまう
「どうして?」と私がまた手に取ると、それはただの紙になる
彼は外を見ている
「必要だからだよ」
私が困惑していると、彼はおいでと先に立って塔を降り始めた
私があとに続くと、街なかの少し雑多なところまで歩いていく
そこはパチンコ屋だと何故か分かった
扉が開くと、その向こうにまた扉があって、そこは煙で満ちていた
煙の中、50代くらいの髪が薄かったり白かったりする太った男女が台に向かっている
2つめの扉の脇にはバーテンダーのような格好の人が立っていた
そしてそこにも、私が貰ったのと同じ紙がトレーに入って置かれている
私が、え? ここに入るの? と思っていると彼は次の扉を入らず右に逸れた
そこには簡易的なスロット台のような石があって、彼は面白そうに触ってみてと言う
もちろん、私が触ってもただの石で、何も動かなかった
分からずにいると、そこに小さな男の子がやってきてお金を入れた
途端に動いて光りだす機械に、男の子は夢中になっている
そして、彼はやはり面白そうにこちらを見ている
塔に戻りながら、わけがわからないと言うと、塔を指して
「君にとって、ここは図書室で本棚の森なんだよ」と
私は困惑して、全て分かっているらしい彼のことを、ますます分からないと思った
「ねぇここから出ないの?」
彼は困ったように肩を竦めた