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第一話 死のうとしたら異世界に連れてかれた ~チャプター4~

 林道を歩いていき、程なくルクスの町にたどり着いた。途中モンスターに遭遇しなかったのは幸いだ。

 町の入り口には衛兵がいたが、ギルドに入りたい旨を伝えたらすんなり通してくれた。


「よーし、早速ギルドに…」


 そう息巻いたすぐ後に俺のお腹の虫が鳴ってしまった。


「…お昼食べてからにしよっか。」

「そうさせていただきます…。」


 町を散策してると何やらうまそうな匂いが漂ってきた。その匂いにつられて歩いていくと露店通りにたどり着く。


「おいしそうなのがいっぱいあるね~。」


 露店を眺めながら歩いていく。現実世界でも見たことあるような食べ物が売られているが、中には得体のしれない爬虫類の丸焼きだったり、見たことのない植物の実も並んでるあたりがさすがファンタジー世界だ。

 俺は無難に焼いた鶏の脚の部分を、リーナは丸パンをいただいた。


                  ***


「さて、腹も膨れたし今度こそギルドにいくぞ!」


 町の人に道を尋ねながら歩いていくと、ひときわ大きく立派な建物にたどり着く。


「ここかぁ…」


 ちょっと緊張してきたな。

 意を決してドアを開く。扉についているベルがカランコロンと鳴る。


「いらっしゃいませ。初めての方ですね。冒険者の登録でしたらこちらでお伺いいたします。」


 受付のお姉さんが丁寧に案内してくれた。


「こちらの用紙に必要事項をご記入ください。書ける範囲で結構ですので。」


 用紙には名前、年齢などの他に種族、使用する武器・魔術などファンタジー世界ならではの項目が並んでいる。

 この世界に来てから言葉は通じるし字も読めたが、こっちが日本語で字を書いても問題ないだろうか…。


(とりあえず名前と歳と種族くらいは書いておくか…)


「ありがとうございます。最後にこちらの枠に血判をお願いします。」

「え…、ケッパン…?」

「はい。こちらをお使いください。消毒はしてあります。」


 先の尖った小さいナイフがご用意された。

 血判てつまり、こいつで指先をチクッっとやれと。


「……。」


 いや、この世界に来る前に首括ろうとしてたヤツが、ちょっと血ぃ流すことにビビんなよ、と。


「ユウヤ~、こっちは登録終わったよ~。…どうしたの?」

「いや…、その…」


 リーナはもう登録が済んだようで、こっちが血判にビビってる姿を思いっきり見られた。


「…もしかして怖い?大丈夫だよ、すぐ回復術かけてあげるからさ。」


 そう言いながらリーナは少し笑いをこらえている。それほど俺の姿が滑稽に映っているのか。

 もうこうなったらやるしかない…。やってやる!


「……いくぞ」


 ――――――ッ!



「お疲れ様です。この後登録証をお渡しいたしますのでこれで登録は完了になります。」

「はい…、ありがとうございます…。」


 リーナに回復魔術をかけてもらいながら、若干涙目で答える。


「それと、登録した方は武器と魔術の適性検査を受けられますよ。」

「適性検査?」

「はい。まだ自分の戦闘スタイルを確立させてない方の指針になればと思い実施しております。武器の方は訓練場で実技を行いますので予約が必要ですが、魔術の方はすぐ受けることが出来ますよ。」


 つまり俺みたいな冒険者ビギナーに、自分に向いてる武器や魔術を教えてくれるってことか。

 武器はまだ剣しか持ってないけど他に似合う武器があるかもしれないし、もしかしたら俺でもなにか魔術が使えるかもしれない。受けてみる価値はある。


「はい、受けます。」

「かしこまりました。それではまず魔術適性の検査を行います。こちらの用紙の上に手を置いて魔力を流し込んでください。」


 出された用紙には二つの六角形が並んでいて、片方には、光・水・火・闇・土・風の属性、もう片方には回復・攻撃強化・防御強化・無属性攻撃・状態異常・弱体化と、それぞれを示すアイコンが六角形の角に時計回りで配置されている。


 とりあえず用紙の上に手を置いてみる。そのまま幾秒か経ち―――


「どうしたの?ユウヤ?」

「…あの、どうやって魔力流し込むの?」


 リーナは苦笑いしながら右肩をカクンと落とす。


「えーと、そうだなぁ。まず、全身の血液の流れを想像してみて。それでその流れの終点が手のところになるようにイメージするの。」

「血液の流れ…うん。」


 目を閉じ、言われたとおりにやってみる。

 すると、手のあたりがなんかジンジンしてきた。


 ―――これが、魔力?俺にも一応魔力があるのか?


 そのまま数秒待っていると、


「お疲れ様です。もう大丈夫ですよ。」

「ぷはーッ」


 終わったようだ。用紙を見てみると、二つの六角形の中心に、属性魔術の方には赤、回復・支援魔術の方には青の小さい六角形が現れていた。そして青色の六角形は、防御強化の方向の角が少しばかり伸びている。


「検査結果ですが…、防御強化の適性が2、それ以外が0、ですね。」

「防御強化が2。」

「はい。防御強化が2です。ちなみに評価は0~3の4段階で行われています。」


 え…?これだけ!?


「適性のない系統の魔術も一応習得することはできますが、魔力消費が多くなってしまったり、効果が著しく下がってしまいます。なのでよほどの事が無い限り適性のある魔術を使う方が多いですね。」


 ご丁寧な解説ありがとうございます…


「…リーナ、もしかして」

「うん、私も防御強化使えるよ?」

「…。」


 再び俺の目じりに光るものが。


「だ、大丈夫だよ!私が手を離せないときとかに自分でも使えた方がいいし、それに魔術を使わない冒険者だっていっぱいいるよ!だから、ね。あんまり落ち込まないで…」


 一生懸命慰めてくれているが逆にそれがだんだん恥ずかしくなってきた…。

 ギルドに来てから恥かきっぱなしじゃないか、俺。


 ―――ああ、しにたい…。

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