第四話 二人のお姫様 ~チャプター4~
「ぜぇ…ぜぇ…、これで全部…」
また大量の荷物を屋敷に運び終えたところで―――
「それじゃあ、出かけるわよ。」
「え…どちらに?」
「決まってるじゃない。ショッピングよ。」
また息つく暇もなく駆り出された。
***
アシアの町は、貴族の別邸が建ち並ぶ以外にもちゃんとした商業地区もある。
その店舗のほとんどは避暑に来た貴族たちをターゲットとした高級なブティックや化粧品店、美容サロンなどである。中にはひとシーズン中に1、2年分の稼ぎを出す店舗もあるとか。
「今日はシアも来てるし護衛に女子が二人もいるから、いっぱい回るわよ!」
これは長くなりそうだ……。
「まず服ね。私がいつも行ってる店があるから、最初はそこに行くわよ!」
「いいですわね。私もちょうどパーティ用の新しいドレスが欲しかったんです。」
最初はノーラ姫の行きつけだというブティックだ。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました、ノーラ様。」
「ありがとう。早速だけど、今年の新作を見せてもらおうかしら。」
「はい、ご案内いたします。こちらへどうぞ。」
店員のお姉さんに新作の服が掛け並ぶハンガーラックまで案内されるノーラ姫。一つ一つ手に取っては自分の身体に当ててみていると―――
「うん、いいわね。ここに掛けてある服全部買うわ。」
「ありがとうございます。」
うわ……、棚買いなんて初めて見た。さすが王族はレベルが違う。店員さんも慣れているのか、驚く様子をまったく見せなかった。
「シアはいいの見つけた?」
「いえ、目当てのドレスがなかなか……。」
と言いつつ2、3着ほど手に取っているシアリーゼ姫。
「まぁこの店はカジュアル系だしね。お店はまだあるから、次いきましょ。とりあえずコレ包んでおいて頂戴。」
「かしこまりました。後日屋敷にお送りいたしましょうか?」
「いいえ大丈夫よ。アイツに全部持たせるわ。」
ノーラ姫はそういうと親指で入り口辺りに棒立ちしてた俺を指す。ってやっぱ俺が持つのかよ。
こうして俺は姫二人が買った大量の服を抱え一行は次の店に向かう。
***
次の店でも爆買いを始める姫様たち。すると―――
「メル。ちょっとこっち来て。」
ノーラ姫に呼び出されメルがそっちへ向かうと、ノーラ姫は持っていた服をメルに試着させた。
「うんうん、やっぱり可愛い。私の見立てに狂いはないわ。」
「あ、あの、ノーラ…さま?」
「これ、メルにプレゼントするわ。」
「え!?でも……」
「今日付き合ってくれたお礼よ。それに私とメルの仲じゃないの、遠慮はいらないわ。」
と、気前よく服をプレゼントしてもらえるそうだが…
それよりいつからそんな親しい仲になったんだ?
「あ、ありがとう…ございます…。」
「どうしたの?気に入らなかった?」
「あ、いえいえ。この服もいいんですけど…こっちの方もどうかな…って。」
そう言いながら、メルが別の服を手に取ると……
「な!?」
その時、ノーラ=アヴァルーに電撃が走る。
「え、あ、ゴメンナサイゴメンナサイ!せっかく姫様に服を選んでいただいたのに―――」
「いえ…。メル、その服に着替えてみて。」
そうして着替え終わったメルが試着室のカーテンを開けると……
「ど…どうでしょうか?」
「……ヤバいわ。」
「へ?」
「ありがとう、メル。驕り高ぶっていた私の目を覚まさせてくれて。」
「え…ど、どう…いたしまし…て。」
「その服も一緒にプレゼントするわ。それとメル。私にも服を選んでくれる?」
「は…はい!わかりました!」
(なんという事なの!?ひょっとして私はとんでもないものを目覚めさせてしまったのかもしれない…。彼女の内に秘められていた、オシャレ怪物を!)
…なんなんだ、アレ。
一方。
「どうかしら?リーナさん。」
「はい。とっても似合ってると思いますよ。」
「そうですか。でしたらこっちの方はどうでしょう?」
「うーん、さっきの方が似合ってましたような…」
シアリーゼ姫がドレスをいくつも試着してはリーナに意見を聞いていた。
「決めましたわ。このドレスにしましょう。では、次は私がリーナさんの服を選んで差し上げます。お礼にプレゼントいたしますわ。」
「いいんですか!?それじゃあ……」
どいつもこいつも、今仕事中じゃないのか…?
***
「ありがとうございました~。」
ここでの爆買いを終え店を後にする。俺の荷物も倍に増えた。
「も、もう勘弁……」
「情けないわね。まだまだ寄るところはいっぱいあるんだから、へこたれんじゃないわよ?」
「大丈夫?ユウヤ、私の分は自分で持つよ。」
まぁ、リーナの分の荷物が減ったところで俺の負担は大して変わらないだろうけど。
「まぁいいわ。次は休憩がてらサロンで身なりを整えてもらうわよ。」
そのサロンではネイルやヘアメイクをやっているそうだ。ここもノーラ姫御用達だ。
サロンで身なりを整えた四人は、先ほどの店で購入した服に着替えて現れた。四人からはセレブリティ感あふれるオーラがにじみ出ていて、その様子を見た俺の脳内ではまるで彼女らをレッドカーペットを歩くハリウッド女優のように幻視してしまっていた。
「さ、皆さん。買い物を続けましょう。」
「ええ。」「よろしくてよ。」
ウチの女子どもの口調もどこかそれっぽいお嬢様みたいになってる。雰囲気にのまれ過ぎでは?
こうして四人はまたブティックだったり化粧品店だったりと爆買いを続けていき、俺の両腕も限界に達しようとしていた。
「さて、そろそろ屋敷に戻るわよ。お茶の用意が出来てるわ。」
爆買いも終わりを迎えたようだが、俺はこんな大荷物を抱えたまま屋敷までたどり着けるはずも無く―――
「あの…、荷車貸してください。」
町の商店会から借りたリヤカーを牽き、やっとの思いで屋敷に戻った。




