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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第3章 策謀、紛争、ついでに縁談

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(10)親の欲目

「ええと……、その、だな。本当にこれまで、特定の誰かに懸想したとか、誰かから思いを寄せられたとかはなかったし、変に恋愛観をこじらせたとかそういうのもないから、二人とも安心して欲しい」

「あの……、それでは一応、念の為にお聞きしますが、実は恋愛対象が女性ではなくて男性とか」

「それはもっとないから!!」

「え、あ……。そ、そうですか。そうですよね。安心しました……」

(本当にこの件に関して、ダレンととことん話し合う必要がありそうだな!!)

 あからさまに安堵した表情になったメリアを見て、さすがにカイルも堪忍袋の緒が切れかけた。そんな弟の内心が手に取るように分かったらしいアスランが、笑いを堪える顔つきで宥めてきた。


「私もさすがにそれはないだろうと思っていましたが、色々話を聞いてメリアが疑心暗鬼になってしまって」

「一緒に聞いていたなら止めさせろ」

「すみません。どこまで話が広がるのか興味が出てきてしまいまして、つい最後までダレンの話に聞き入ってしまいました」

「全く……」

 もう溜め息しかでないカイルだったが、ここでアスランが苦笑いの表情で言葉を継いだ。


「正直な話、血縁者は山ほどいても、アーシェラとカイル以外はとても家族とは思えない連中ばかりだったからな。昔は自分にまともな恋愛ができるとは思っていなかったし、結婚についてろくでもない考えしか持っていなかった。それで今回、当時の事を思い返して、ちょっとカイルの事が心配になったわけだ。だから少々おせっかいかもしれないが、兄夫婦として忌憚のない意見を聞かせて貰いたいし、できる事なら適切な助言をしたいとも思っている」

「兄上……」

 以前の、兄弟としての口調で真摯に申し出た内容を聞いて、カイルも自然に以前の呼び方になった。そしてそのまま、無言で考え込む。

 少しの間カイルは考えを巡らせていたが、次にアスランに視線を向けた時、その表情に困惑や迷いの色はなかった。


「そう、ですね……。別に女性全般を忌避しているつもりはありませんし、魅力的な人は魅力的だと認めているつもりです。でも異性として好きかとなると、そういう女性にはまだ巡り合っていませんね」

「ですが、それは仕方がありません。カイル様は頻繁に王城から出たり、公式行事に出席する事がありませんでしたから。出会いがかなり限定されていましたもの」

「こちらに来てからも、色々な事に忙殺されていたしな。これはやはり、基本的に様々な出会いの場を増やすべきか……」

 メリアとアスランが真顔で相談し始めると、カイルが控え目ながら結婚相手に求める条件を口に出す。


「相手の希望を言えば、あまり家格の高くない貴族か、平民でしょうか」

 それを聞いたアスランが、不思議そうに詳細について尋ねる。


「そう思う理由を聞いても良いか?」

「家格の高い貴族は気位が高い人が多いですから、私との結婚は嫌がるでしょう。もし私との結婚を了承してくれた人がいたとしても、その事でその人が周囲から白眼視されたり絶縁されたりしたら可哀そうですから」

「……本気で好きになったら、そういう事は考えないと思うがな」

 弟の自虐趣味とも取れる発言に、アスランは無意識に眉根を寄せた。カイルはそれに気がつかないまま、思いついた順に控え目に述べる。


「それから……、あまり気が強くなくて穏やかな気質の人、でしょうか? 正直、母のような女性はちょっと苦手で……」

「安心しろ。あんな女を好き好んで妻に迎えるような酔狂な奴はいない。あの男も、貴族間の力関係調整の為に王妃に迎え入れただけだ。お互いに目と性根が腐っている、それなりに似合いの夫婦とも言えるがな」

 アスランは即行で、力強く断言した。その辛辣すぎる発言を聞いたメリアが、さすがに呆れ気味に夫に突っ込みを入れる。


「アスラン。仮にもカイル様の実母と、あなたの実父についての話よね?」

「事実を口にして何が悪い。それに《《あれ》》と血がつながっているのが、俺の人生最大の汚点だ」

「全く……。今更陛下を《《あれ》》呼ばわりしても、驚いたりしませんけどね。因みにカイル様、容姿についてはどうでしょうか? どんな感じが良いとかのイメージなどはありますか?」

 メリアからの質問にも、カイルは真顔で考え込んだ。そして正直に答える。


「そうだな……、あまり見栄えのする美人ではない方が気が楽かな? 私は大して見栄えのする容姿ではないし」

 するとすかさず兄夫婦から、揃って否定の言葉が返ってくる。


「何を言っている。カイルは十分見栄えがする顔立ちだぞ?」

「とんでもありません。カイル様は十分端正な容姿ですよ?」

「……そうか。ありがとう」

(正確には違うが、これはいわゆる親の欲目と言われる類のものだろうな。仕方がない、今日はとことん二人に付き合うか)

 これ以上はないくらい真摯な物言いにカイルは少々照れくさくなると同時に、あっさり解放して貰うのを完全に諦めた。

 それからカイルは夕食を二の次にし、細々とした二人の質問に律儀に答えていき、結果的に兄夫婦に安堵して満足そうに引き取って貰う事に成功したのだった。




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