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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第2章 想定外の加護

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(27)水面下での活動

 カイルがトルファン城に入って、半月強が経過した頃。いつも通り執務室にカイルとダレンが入り、自分の席に座って仕事の準備をしていると、ダニエルが書類の束を抱えて入室してきた。


「おはようございます」

「おはよう。今日もよろしく頼むよ」

「畏まりました。本日の予定ですが……」

 カイルのスケジュール管理や各部署との調整を担っているダニエルが、その日も朝一番の仕事に取りかかった。そしてカイルと予定の打ち合わせを済ませると、何故か何とも言えない表情になりながら「はぁ……」と溜め息を吐く。朝から微妙な空気を醸し出す彼を見て、不思議に思ったカイルは何気なく問いかけた。


「ダニエル、どうかしたのか?」

 それに彼が、一瞬迷うような素振りを見せてから話し出す。


「実は……、ここに来る前にアスランさんとすれ違ったんですが、実に爽やかな笑顔で挨拶してくれまして……」

「それがどうかしたのか?」

「朝から酒の匂いを、かなり漂わせていました……」

 ダニエルが、主君の兄について告げ口めいた発言をして良いのかどうか、困惑するような表情で報告してきた。それを聞いたカイルは一瞬何かを言いかけてから、神妙に頷いて言葉を返す。


「……そうか。顔を合わせたら、ほどほどにしておくように言っておく。身体を壊したら、元も子もないからな」

「恐れながら、その心配は無用かと」

「どういう事だ?」

 ここで手を止めて会話に割り込んできたダレンに、カイルは怪訝な目を向けた。すると彼が、真面目くさった顔で淡々と告げる。

 

「私はここに来る前にロベルトさんとすれ違いましたが、同様に徹夜で飲み明かしたと思える匂いを漂わせながら、『酒を抜くために、これから手合わせする予定』とか言っていました。同行の騎士の方から『アスランと揃って、いつ寝ているんだって思うくらい連日酒場で飲んで、翌日朝から鍛錬場で暴れているんです。とてもついていけません』と泣き言を囁かれました」

 自分に随行してきた騎士達の一部が、この間、本来の職務とは無関係のところで、とんでもない戦績を上げているらしいと悟ったカイルは、僅かに顔を引き攣らせた。


「……少しは周りの迷惑を考えるように言っておく」

「その方が宜しいでしょうね」

 ダレンがすこぶる真顔で頷いた所で、ノックの音に続いてサーディンが現れた。


「失礼する」

「ああ、サーディン。どうかしたのか?」

「この間の報告などを、少し伯爵のお耳に入れておこうかと思いまして。あとダレン殿から、不穏分子の情報などを頂きにきました」

 それを受けて、すかさず机の引き出しから何枚かの用紙を取り出したダレンは、それを彼に手渡した。


「お待ちしていました。リーンが聞き取った内容を元にあぶり出した、駐留部隊内での不穏分子のリストはこれです」

「ああ、すまん。……まあ、こんなところだろうな。こちらで揃えた情報と、大体重複している。見覚えのない名前は、これから集中的に探るか」

 机越しに受け取ったそれに素早く目を通したサーディンは、軽く頷きながら独り言のように告げる。そんな彼にダレンが尋ねた。


「ところで報告と仰いますと、どこら辺まで到達しましたか?」

 その問いかけに、サーディンがニヤリと不敵に笑う。


「小隊長は言うに及ばず、部隊長と大隊長まで八割方制圧と言ったところか。不倫や公金の使い込み、暴力行為や借金に、外聞が悪い趣味嗜好の持ち主などは、紳士的に協力を要請して、快く応じて貰ったぞ。脅すネタがない奴は、待遇向上を確約しての抱き込みだな」

「まだひと月経過していないのに、さすがですね。残りの二割は、上から直接息がかかっていたり、縁故関係ありとかですか?」

「ああ。下手に接触すると、こちらが動いているのを察されるからな」

「そうなると……。万が一、連中がカイル様に対して敵対行動、具体的に謀反を企てても、現場指揮官のうち奴らの思い通りに動く人間はごく少数、と考えておいて宜しいですね?」

 そこでダレンが確認を入れ、サーディンも真顔に戻って頷く。


「その通りだ。だから余計に、連中が姑息な手を使ってくるのを警戒せねばならん。引き続きメリアを筆頭に、お前達も伯爵の周囲を固めておいてくれ」

「心得ました」

 ここで話に区切りがついたのを見計らたカイルが、サーディンに声をかけた。


「サーディン。騎士の皆の体調は大丈夫だろうか? 連日のように酒を飲んでいるというのを、小耳に挟んでいるのだが」

 しかしそれを聞いたサーディンは、豪快に笑いながら応じる。


「伯爵、心配はご無用です。大して飲めない者には、他の役割をしっかりとこなして貰っておりますからな!」

「それは勿論だが……。それなりに飲めるとしても、節度や限度を守っているのかと少々心配で」

「お気遣いありがとうございます。ところでダレン、そちらの進捗具合はどうだ?」

 笑顔のままサーディンはさらりと話題と話の相手を変え、対するダレンも冷静に答える。


「こちらもほぼ、把握できています。そろそろ本格的に、証拠固めに入ろうかと考えていたところでした」

「それでは当初の予定通り、入城後一ヶ月でなんとかできそうだな」

「はい。さっさと終わらせて、領内改革に取りかかりたいですからね。ところでカイル様。お渡ししておいた資料を基に、今後の領内運営の基本方針と基本計画の作成をお願いしていましたが、そろそろ提出していただけますか? 事が済むまでには精査しておきたいので」

 急に話の矛先を向けられたカイルは僅かに動揺しながら、机の引き出しを開けつつ応じる。


「あ、ああ。できている。今渡しても構わないか?」

「お願いします」

「それでは、これで失礼いたします」

 書類を渡しているうちにサーディンはさっさとその場を後にし、カイルはサーディンの下にいる騎士達がどのような活動をしているのか、正確な内容を追及する機会を逸したのだった。




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