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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第1章 幸運か不運か、それは神のみぞ知る

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 建国記念式典の関連行事が全て終了し、数日が経過した頃。カイルは自室に、ルーファスの訪問を受けた。


「殿下、宰相閣下がいらっしゃいました。応接室にお通ししています」

「ああ、時間通りだな」

 書斎で書類に目を通していたカイルに、リーンが声をかけてくる。それを受けてカイルは立ち上がったが、困惑気味の台詞が続いた。


「それから……、閣下が、アスラン殿下を同伴していらっしゃいました。お二方とも『互いの話の内容は大体似通っているから気にするな』と言われたもので、一緒にお通ししております」

「え? アスラン兄上が?」

「はい。よろしいでしょうか?」

 予定外の客人に、カイルは驚いて問い返した。しかし神妙にお伺いを立ててくるリーンに対し、すぐに了承の返事をする。


「二人が揃って問題ないと言っているのだから、構わないだろう。すぐに行く」

「分かりました」

 リーンに続いて廊下に出たカイルは、すぐ傍の応接室に向かいながら考えを巡らせた。


(時期的に、大叔父上は俺に下賜される領地と家門の正式通達に出向いて来たはずだが、どうして兄上が同席するのか……。そもそも大使が口にした通り、兄上が貴族の身分すら剥奪されるのを、もう既にご存じなのだろうか?)

 状況によっては話題に留意しないといけないと思いながら、カイルは応接室のドアを開けた。


「お二人とも、お待たせしました」

 取り敢えず笑顔を作って挨拶すると、ソファーに並んで座っていたルーファスとアスランも、いつもの様子で言葉を返してくる。


「いや、たいして待ってはいないな」

「事前の連絡もなしに、押しかけて悪いな、カイル」

「それは一向に構わないのですが……。すみません、一杯だけお茶を飲ませてください」

「どうぞ」

「別に断りを入れる必要はないぞ?」

(どんな話の流れになるのか全く見当がつかないが、落ち着け、俺。他国の大使からの伝聞というのがかなり情けないが、予め衝撃的な内容は耳にしているんだからな)

 自分用のお茶を淹れてくれたメリアが一礼して退出し、それを見送ってからカイルはゆっくりとお茶を飲み始めた。その間、目の前の二人はそれぞれ室内に目を向けて黙考しており、微妙に気まずい沈黙が続く。そうしてお茶を一杯分飲む時間をかけてカイルは心を落ち着かせ、ルーファスに声をかけた。


「お待たせしました。それでは宰相、どうぞお話しください」

 そう促されたルーファスは、淡々と話を切り出す。


「以前殿下にお伝えしておりましたが、あなたに下賜される領地と家門が正式決定しました。来週にも簡素な任命式を執り行った上で、手続きを完了させます」

「当初の予定とは異なり臣籍降下が前倒しになった上、領地はトルファンでフェロール伯爵家を継承するらしいですね」

 伝えるはずの内容を既にカイルが知っていた事実に、ルーファスは意外そうな顔つきになった。


「随分、耳が早くていらっしゃいますな」

「先日、バルザック帝国大使、ユーニス伯からお伺いしました」

「なるほどな……。そこまで筒抜けとは、困ったものだ」

 苦々しさを隠そうともせずに、ルーファスが悪態を吐く。そこでアスランが会話に加わった。


「驚いたな。もう知っているとは思わなかった。それなら、俺の今後についても知っているよな?」

「……はい。不愉快かつ理不尽極まりない事に、兄上が領地を与えられず貴族としても認められなくなるなど、馬鹿馬鹿しくて口にしたくもありませんが」

 なんとか怒りを押し殺しながらカイルが言葉を返すと、応接室とドアで繋がっている控室の方から、何やら物が倒れるような音と、押し殺した複数の声らしいものが微かに伝わってきた。


(多分、使用人の休憩室に皆が集まって、リーンがここの話を聞き取って皆に話していたか。でも俺の懲罰的な処遇を聞いた瞬間、激怒したリーンが部屋を飛び出して廊下を爆走して、隣の控室に飛び込んだところで皆に組みつかれて倒れながら、何かを盛大に倒した。でもまだ、現在進行形で揉めている気配がするな)

 既に夜会で知らされた内容ではあったが、耳に入れた途端に激高するに違いない部下達に、カイルはそれまで伝えていなかった。まあ、仕方がないかとカイルが遠い目をしていると、ルーファスが控室に繋がるドアに目を向けながら、呆れ気味に告げる。


「何やら、落ち着きがない者がいるらしいな」

「……申し訳ございません」

「構わない。あの者達を紹介したのは、私だからな」

 恐縮したカイルにルーファスが鷹揚に頷いたところで、アスランが会話を再開した。


「俺の事情も知っているなら話は早い。お前に、俺を雇ってもらおうと思っている」

 あまりにもさらりと言われてしまい、カイルは意味を捉え損ねて戸惑った。


「はい? 誰が、誰を雇うですって?」

「だからカイルが、俺を、フェロール伯爵家の騎士として雇ってくれないかと言っている」

「はぁああああ⁉︎ どうしてそうなるんですか⁉︎」

 驚愕して、カイルは思わず目の前のテーブルに両手をついて中腰になりながら叫んだ。しかし彼の眼前で、ルーファスとアスランの平然とした会話が交わされた。


「そんなに驚く事か? それに、それほどおかしい事でもないと思うが」

「そうですね。武術一辺倒のアスラン殿下に、商売など無理です。騎士として身を立てるのが最善、いえ唯一の道かと」

「あははは、遠慮がなさ過ぎますね、宰相閣下。真実だから反論できませんが」

「時間と労力は無駄にしない主義です。カイル殿下、こちらの兄上は、殿下のためなら低賃金でも最大限の働きをしてくれますぞ? こんな都合の良い駒を、確保しておかないなど愚の骨頂」

「いえ、あの、ちょっと待ってください!」

 動揺しながらも慌てて制止しようとしたカイルだったが、ルーファスは微塵も容赦なかった。


「前々からアスラン殿下は、殿下から離れる気配のないメリアに言い寄っていますのでな。この後に及んでも、殿下から離れるはずはありますまい。というかメリアを餌にすれば、無給でも良い働きをしてくれるに違いありません」

「確かにその通りですが、遠慮がなさすぎますね、宰相閣下」

「無給って……、人を守銭奴扱いしないでください!」

(この人、本当に容赦ないな。そうでないと一国の舵取りなどできないのだろうが)

 アスランは苦笑いしながら肯定したが、カイルはそこまで平然と対応できなかった。するとここで勢いよく控室に繋がるドアが押し開けられ、メリアが顔を紅潮させながら飛び込んできた。


 

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