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加護詐欺王子とは言わせない〜実は超絶チートの七転八起人生〜  作者: 如月 玲
第1章 幸運か不運か、それは神のみぞ知る

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(19)理不尽な横槍

 カイル達の試合の他は特に大きなトラブルもなく、トーナメントの一回戦が全て滞りなく終了し、二回戦第一試合の順番になった。


「今度はカイルとだな。勿論、手加減しないからな?」

「望むところです。よろしくお願いします」

 競技場への出入り口でカイルとアスランが声をかけあっていると、背後から予想外の声が割り込む。


「生憎だが、貴様と対戦するのはカイルではなく俺だ。カイル、お前は引っ込んでいろ」

 どこぞに逃げ出したと思っていたら、いつの間にか着替えて戻って来ていたらしいランドルフの横柄な物言いに、アスランは怪訝な顔を向けた。


「はぁ? 何を言っている。一回戦の勝者はカイルだろうが」

「あんな卑怯な手で、勝ち名乗りを受けられると思っているのか!? 父上もお怒りだぞ! あれを見ろ!!」

 憤然としながらランドルフが指で指し示した方に目を向けたカイルとアスランは、自分達の父親が貴賓席の最上段から立ち上がったのが見えた。


「静まれ! 次の試合について、陛下からお話がある!」

 その審判の声で場内が静まり返り、ヘレイスがもったいぶった様子で口を開く。


「次の試合だが、一回戦第一試合でカイル・フィン・グラントが行った足蹴りや体当たりの動作は、本来の騎士の動きに相応しくない品位に欠けた行為である。よってカイル・フィン・グラントを反則負けとし、二回戦第一試合はランドルフ・バルツ・グラントとアスラン・アル・グラントの対戦とする」

 その説明に居合わせた大半の者達は唖然としたが、普段からランドルフを次期国王に推している者達は快哉を叫んだ。


「ははは、そうこなくては!」

「ランドルフ様があんな卑怯な技にやられるなんて、許せませんよ!」

「さすが国王陛下。ものの道理を分かっていらっしゃる!」

「さっきは興醒めでしたものね!」

「あんな試合が我が国の騎士の戦いなどと他国の方々に思われてしまったら、我が国の恥ですな!」

 しかし表面化していないものの、国王の裁定を苦々しく思う人間も一定数存在していた。


「はぁ? 足払いや体当たりなんて、他の奴もやってるだろ」

「どんなお上品な戦い方をしろっていうんだ」

「見てみろよ。他国の大使達も、呆れて薄笑いをしているぞ」

「我が国の騎士達がとんだお上品な腰抜け揃いだと伝わって、他国の笑いものになるのが確実だな」

「あんなへっぽこ王子の為に、俺達の顔に泥を塗る気か」

 出入り口近くに席が与えられていた参加者の騎士達は、揃って不快そうに囁き合う。そんな声は全く耳に入らない様子のランドルフは、勝ち誇った顔でカイルに対して言い放った。


「ほら、分かったのならさっさと下がれ。目障りだ」

「想像以上に恥知らずだったようだな……」

 横柄に手を振り追い払う真似をする異母兄に、カイルは怒りを通り越して呆れ果ててしまった。するとここで肩に手が置かれ、アスランが低い声で呼びかけてくる。


「カイル、ちょっとこちらに」

 何故かそのままカイルは、数歩出入り口の方に押しやられた。そしてランドルフに背中を向けたアスランが、怒気を顕わにしながら平坦な声で告げる。


「ここはおとなしく下がってくれ。今まで散々我慢してきたが、今度という今度は完全に愛想が尽きた。お前の代わりに俺が、あの恥知らずの馬鹿の顔と腐れ親父の面子メンツを、試合開始十秒で纏めて潰してやる」

(ちょっと待て、兄上の顔が超絶に怖いぞ!? 本気と言うか、最前線での戦闘の時はこんな顔なのか? 眼光だけで人が殺せそうで、寒気がするんだが!?)

 どう考えても本気としか思えない異母兄の様子に、カイルの怒りは完全に吹き飛び、全身に冷や汗が流れた。


「あの……、兄上? 俺は別に気にしていませんし構いませんから、できるだけ穏便に事を済ませていただけませんか?」

「すまんな、カイル。俺はお前に比べたら無学に等しいから、『穏便』という言葉の意味が分からん。これが終わったら、きちんと習得しよう」

「ああああのっ、アスラン兄上!?」

 端的に断りを入れると、アスランはカイルが恐れ戦いた極悪な顔を無表情に変え、何事もなかったかのようにランドルフに向かって歩いて行った。その危険性を流石に傍観できなかったカイルは慌てて引き止めようとしたが、そんな彼を何人かの騎士が取り囲んで宥める。


「カイル殿下、こちらに。おとなしく観戦しましょう」

「アスラン殿下がああなったら、もう駄目です。目の前の敵を粉砕するまで止まりません」

「私達は経験済みで、嫌というほど知っていますので」

「そんな事を言わないで、誰か止めてくれないか?」

「無理です」

「無駄です」

「諦めてください」

「…………」

 アスランの部下もしくは同僚達は、カイルに憐憫の眼差しを向けながらも、その懇願を言下に却下した。それでカイルも説得を諦め、促されるまま出入り口から観覧席へと戻る。そして変則的で理不尽すぎる二回戦第一試合が行われることとなった。






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