壁よ
「遮蔽物」「囲い」以外の象徴でも、壁を描くこともありますね。
きたならしく こびりついた壁があるなら
それをなすりつけた あいつが 何処かにいる
けがらわしく へばりついた壁があるなら
それをぬぐいつけた あいつが 必ずいる
崩れ落ちるまで 真っ白いままでと 望んだところで
陽に灼かれもするだろうし
黄ばんだり 黒ずんだり
触れられるのを拒むわけじゃなければ
手垢にまみれもするだろう
だとしたら
真っ白いままで 崩れ落ちる日をむかえることが
壁の誇らしい生き様だとは思えない
しかしながら 見てみるがいい
あいつが なすりつけた こびりつきは
その下卑た にやけづらを描く
あいつが ぬぐいつけた へばりつきに
そのいけ好かない すまし顔が浮かぶ
なすりつけて ぬぐいつけて
きれいな掌を取り戻した気になった あいつが
悪気たっぷりに
下卑た にやけづらするのも
悪びれもせずに
いけ好かない すまし顔をするのも
まるで 愉快な話なんかじゃなかった
崩れ落ちるまで 真っ白いままでと 望んでいた壁は
陽に灼かれもするだろうし
黄ばんだり 黒ずんだり
手垢にまみれたりして
誇らしい生き様を
まっとうすることができたはずなのだ
きたならしく こびりついて
けがらわしく へばりついて
崩れ落ちる日をむかえた壁よ
とても きれいだとは言えない掌をしたおれは
おまえの その無念に
そっと 手を添えてやるこもできない
天井や床のイメージを抜きにして、壁単独で想い描けるのも面白いところです。
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