04 リベルリライター
「物語を、修正?」
「そ。ま、勿論目録作ったり、カウンターで作業したり応対することもあるにはあるけど、あたしたちは誤植を直す、『リベルリライター』だから」
なかのはそう答えると、立ち上がる。
「あんたの仲間を連れてきてあげるから、待ってて」
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鏡の中の自分を眺めること数分、なかのが女の子2人を連れて戻ってきた。
ロリッ子と、巨乳。
なんとなく俺がそこそこかわいい女子三人に囲まれていると思うと、まあまあハーレムと言える状況なんじゃないかと思えてくる。
悲しいかな、一番可愛いのは俺なんだがな。
勝ち誇った笑みを浮かべてふんぞり返っていると、
小学生くらいのロリが、ぺこりと頭を下げた。
「神子時コトと申します。よろしくお願いします」
「おう、よろしく」
なかなかしっかりしている。その下げられた頭を撫でようとすると、ピシッと鋭い痛みが手の甲を走った。
ロリ−−−もといコトが、俺の手をはたき落としたのだ。
「すみませんが、コトの頭は日本円で一撫で五百五十円です。なんと、驚きのリーズナブル。ですが、前払いです。はよ」
そう言って、図々しくも手のひらを突き出してくる。その手に、デコピンをお見舞いしてやる。
「なんてことを……。あなたとの国交は無理そうです。おコト、怒っとります」
「全然上手くねえからな。可愛くねえチビめ。次物乞いしやがったらその手に唾吐いてやる」
頭を撫でようとしただけで金をせびるような奴はロリッ子ではない。チビガキだ。そもそも俺はロリっ子は好きじゃない。
「あの……」
おずおずと、巨乳が一歩近づいてくる。ゆさっとそのおっぱいが揺れる。男の性で、そこに目を奪われてしまう。そうそう、俺が好きなのはこう言う色気のある女だ。
俺におっぱいがあれば、あんな無駄にでかい乳よりも美しい、無駄のないおっぱいがあるはずだったのに畜生。
「私は金森ミモリ……ミモリって呼んでください」
そう言って、にっこりと微笑むミモリ。
「おう。俺のことはイスキでいいよ。よろしく」
「はい……!」
柔らかく女の子らしい笑みに癒される。こいつが一番まともだ。
握手しようと手を差し出すと、ミモリがすすーっと高速で後ろに下がっていく。
「……」
驚いて出した手をしまえずにいると、ミモリが怖いほどの無表情で告げた。
「ごめんなさい、私男の人って苦手で。触ると吐いちゃうんです」
「……そう」
その無表情から伝わってくる気迫に、俺は手を下ろした。
撫でようとすればはたき落とされ、握手しようとすれば逃げられ。握手できたとしても訳のわからん冗談を言われ血を通えなくさせられ。
ただのハーレムでないことだけは、身にしみてわかった。
でもいいんだ。だって俺には、この中のどの女よりも可愛い俺がいるんだから。
すっかり俺の所有物となった手鏡(元はなかののもの)を眺めて、俺は折れた心の修復にかかる。
「ふふ、すっかり仲良しじゃない」
どこをどう見ていたのか、微笑ましそうにそう言うなかの。
テーブルの上に置かれていた『ちかよるな』が、ふよふよと彼女の元は飛んでいく。
「そろそろ行ってみましょうか」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺まだよくわかってないし」
「話をするより、体験してもらった方が早いわ。じゃ、とりあえず行ってきます−−−」
「−−−うわ−−−」
重力が、その本から発生しているかのように−−−。
俺たちは頭から、『ちかよるな』に吸い込まれていった。
……関係ないけど、ミモリにああいう対応された後だと、この本の略称に凄く悪意を感じる。