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リベルリライターズ〜二次元図書館司書の憂鬱  作者: じむじむじむじ
「超使えない能力のお陰でクソみたいなパーティから追放された俺は実は勇者の生まれ変わりでハーレムしながらチートスキルで無双していく予定」
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13 主人公のスキル

「なかの、お前……性格悪いどころか、一般常識が欠如してるんじゃないのか?」


 しくしくと顔を覆う俺に、この悪女は失笑を返す。


「はっ……今更何言ってんのよ。勝手なことしたあんたが悪いんじゃない」

「お前は悪いことしたやつのささやかで密かな楽しみを言いふらすのが正しいとでも思ってるのか……」


 お前だってイケメンの顔になったらめっちゃ見るくせに。俺だって気持ち悪いってわかってるから、誰にも迷惑からないようにしてるのに。

 そんな俺のことなどまるで無視して、なかのは壁に背を預ける。


「あんた、主人公がどうして追放されるか、知ってたわよね」

「……まあ、読んだことあるから」

「あいつはなんで追放されるの?」


 主人公のランスは、チート級の能力を秘めていながら、その全てを解放することができず、ごみみたいなスキル一個で完全にパーティの荷物持ちとなっている。はずだ。

 それを伝えると、なかのはふんふん、と頷く。


「……お前らって、なに、予習してくるんじゃないの?」

「普段はするわよ。今回はあんたが邪魔したから、急に来ちゃったわけ」

「あ、ああ、ごめ……」


 ん?


「邪魔してねえよな? ついに他人の記憶の改竄までし出したのか? 残虐とやらは精神にまで影響を及ぼすの?」

「いちいちうっさいわね。黙れないの?」


 心底イラついた顔で言われたので、不平を飲み込んで黙った。どうやら対策をしてこなかったのは俺のせいらしい。なかの様が言うのだからそれが真実なのです。


「それで、そのゴミスキルってなんなのよ」


 ランスのスキル。その有用性の無さから、初めはパーティメンバーからスキルを使っていないのではとすら疑われた程だ。


「おっぱいをおっきくする」

「……は?」

「だから、『おっぱいをおっきくする』のが、ランスの能力」


 正確には、触れた対象のおっぱいをほんのちょっぴり大きくする能力である。

 あまりにちょっぴりすぎて、誰も気づかなかったのだが、パーティメンバーで唯一彼と仲の良かったタンク役の男のおっぱいが大きくなったことで判明した。


「……ゴミスキルとかってはなしじゃなくない?」


 暗い脇道から、ランスたちパーティのいる武具屋を見て、なかのは言う。


「それがどう転がってチートになるのよ」

「いや、チートはまた別で」

「は?」


 洞窟のダンジョン内でヒロインと出会い、前世で彼女と出会ったことを思い出し、勇者の時のスキルを手にする。それが【暴虐】のスキルであり、それを駆使して彼は冒険を続けていくのだ。


「追放して正解ね。マジでゴミじゃないのあいつ。今の時点じゃ、胸を少し大きくするだけって」


 吐き捨てるように、なかのが言う。

 そして、前髪をかきあげるようにして、息を吐いた。


「なんで追放されなかったのかを考えないとね。ヒロインも洞窟で捨てられるよう仕向けなきゃいけないし……問題は山積みだわ」

「なあ、それって今日じゃなくてもいいの? そういうのって、バタフライエフェクト的な、ちょっとずれたら未来が変わるとかさ……」


 なかのが、少し驚いたように俺を見た。「へえ、たまにはいいこと言うじゃん」みたいな顔だ。


「『誤植本』はあくまで、物語の一部が書き換わった状態。その箇所を修正すれば、物語は問題なく展開するわ」

「ふうん」


 よくわからんが、適当に頷いておく。その反応に、なかのは腹が立ったらしく、俺のすねを蹴ってきた。普通にめっちゃ痛い。


「じゃ、はい、いってきて」


 足を抱えて蹲り悶える俺に、なかのは親指で武具屋を示した。


「どういうことで?」

「行ってきて、【誘惑】でもなんでもして、聞いてきなさいよ」

「誘惑ってそういうもんじゃないよな?」


 問答無用。なかのの笑顔はその四文字がでっかく書いてあった。


 暗がりの脇道からぺいっとつまみ出され、俺はしぶしぶ、武具屋へと向かった。

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