2話 神頼み
12月31日
現在は大学の冬休み期間である。
そして、
「エロゲー最高、尊い。あぁ素晴らしいかな引きこもり。」
俺は引きこもり生活を謳歌していた。
12月の始め以降、必要最低限の用事以外は家の外、というよりコタツから出ていなかった。単位などとうの昔に捨てた。
スマホも極力開かず、飲みの誘いもすべて断っていた。
俺の落ち込み期間は一向に終わる気配がなく、かといって状況を変えようなど毛ほども考えず、ひたすらに二次元に逃避していた。
いよいよ立ち直れなくなったのかもしれない。
ストレスを抱えながらもそれに対処する手段を持たず、手段を見つけることも出来ないまま1年近くが経過したのだ。ストレスは少しずつではあるが俺の心を溶かし続け、そろそろ限界だったのだろう。
とは言っても、ラノベを読んだりパソコンをする気力はあるのだからまだ回復の見込みはあるはずだ。3年生の前期からまた頑張れば良い、まだ立て直せる。そんなに深く考えることじゃないよね!よし、エロゲしよう!
などと、ダメ人間思考に耽っていると怒濤のノックが玄関から響いてきた。
「おいおい、宅配業者といえど度が過ぎてるぞ.....」
やりかけのエロゲーを放置したまま、渋々ドアを開けると
「おい、引きこもり。二年参りに行くぞ」
そこには鬼の形相で可奈が仁王立ちしていた。
俺が大学に行かなくなってからKINEを放置し続けたことにより可奈様は相当お怒りらしい。まずい、適当になんか返信しとけば良かった。
「すまん、俺風邪引いててさ☆」
「そう、早く準備してね。5分だけ時間あげるから」
あれ、おかしいな日本語が通じてない
「あの、ボク風邪引いてて.....」
「5分だけあげるって言ってるんだけど、意味わからないかな?」
あ、これは俺が理解できでなかった。このままだと本当に入院しちゃう。
「ウッス!」
人間といえど動物、自分より強い動物には絶対服従なのでした。
というわけで、このクソ寒いなか鬼につれられて近くの神社へ2年参りに来たわけだがなんでこんなに人が多いのだろう。寒いし、もはや痛い。ジャパニーズ精神は時に狂ってますネッ!
境内は深夜だというのに賑やかで屋台もちらほらとでているらしい。
こういう雰囲気は好きだ
「あれ、鬼って神社入れるんすかね....?」
「まだそんな減らず口がたたけたのね、やっぱりその腐りきった根性治すには体から痛めつけないとダメかしらね?」
おっと、素朴な疑問が口に出てしまっていたらしい。気をつけねば、殺られる。
「なんでもないっす.......」
「あんたが大学来なくなってからどんだけ心配したと思ってんのよ、一応KINEのメッセージは開いてるみたいだから生存は確認できてたけど。合宿から様子おかしかったけど、またアレ?」
こいつには俺の落ち込み期間の事を話してあるので、察しはついていたらしい。
「まぁそんなとこだな」
「あんたね、別に落ち込むのはかまわないけど連絡くらい入れなさいよ。みんな心配してんだから」
「すまん」
普通に怒られた、こいつは誰に対しても面倒見が良くて、ちゃんとダメなことはダメと叱ってくれるのだ。最初こそ面倒だと感じたが、なんだかんだ今ではこいつと接するのが一番楽かもしれない。気を使わなくていいというか、素の自分でいられるというか。おそらくコイツが自分の本心を包み隠さず人に伝える性分だからだろう。
「あんな狭い部屋に閉じこもってゲームばっかりしてるから余計に落ち込むの、外にでなさい」
「だからって家まで来られるのはさすがに迷惑.....」
可奈と話していると俺が人生で磨き上げてきたへりくつも全く歯が立たない
まじめ人間め。
可奈から説教をくらいつつ列に並んでいるとようやく自分たちの順場がやってきた。
お詣りの作法は忘れたが賽銭いれて、鈴振ってから手を合わせておけば問題ない気がする。
―――この生活になにか変化が起きるように
刺激をください神様
この胸のつかえをとりさってくださいお願いします
幼い頃、母に「自分の力でどうにかなることを神様に頼むものじゃない」と教えられたので自分ではどうにもならなさそうなお願い事をしてみることにした。
本当にお願いしますよ神様、どうにかしてください
自分が悪いのは百も承知なのだが、それでもどうにかしてほしい
願い事をして目を開けるとそこは森の中だった。
単位をとるのは難しい
文章を書くのは好きなんですけどね、レポートって引用と考察だけですから味気なかったです