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恋をする、ということが一体どういうことなのか、その片鱗を理解したのが入学して3ヶ月ほど経ったあくる日だった。
大学生活は、自分のしていた想像とは程遠く、入学して2週間もしないうちに私は退屈に苛まれた。また同じ毎日が繰り返されようとしている。そんな兆候に耐えかねた私は、サークルに入ることにし、同時にアルバイトも始めることにした。勉学は最低限だけの事をして、あと外の世界を堪能しようと考えていたのだ。4年間はきっとあっという間だ。とにかく毎日に刺激を与えなければ、私は何も得られない。当時はそれだけに必死だった。
サークルは人数の多い文化系サークルを選んだ。
初めて訪問した部室にいた1つ上の先輩。その人に会うことによって、私の人生は大きく変化しようとしていた。今はそう思うようにしている。けれどわかってもいる。”そんなこと”は私の人生において重要なターニングポイントじゃない。
初めてその人と会った時、雷が落ちるとはこの事なのかと思った。特に際立って容姿端麗なわけでも、話が上手いわけでもない。ただ私には、この人と話したい、一緒にいたいと思えるような人だった。
もしこの人が私を抱きしめてくれるのなら、人目があったってなんだって構わない。そう思ったのだ。
人に対してそんな風に思ったことは一度もなかった。
恋をする、というのは、こういうことなんだ、とその時強く感じたのを今でも鮮明に覚えている。恋は盲目とはうまくいったもので、確かに何も見えないし聞こえない。交わりたいと思ったのもこの時が初めてだった。この3ヶ月後、私は彼とそういうことになるわけだが、それは決して祝福されるような関係性ではなかった。それにまた酔いしれた自分もいた。
全てはここから始まったんだと思う。
心地よい匂いをさせながら、心は地獄へ落とされていった。