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君の見る世界  作者: シン
9/22

そしてまた、月曜日になる。


毎日、毎週、毎月、季節がゆっくり、知らないあいだに流れていくのをたまに振り返って、ああ、時が過ぎたと感じて、また、呆然と明日を迎える。

そんなふうに、これからもずっと続いていく気がした。終わりがくること、僕は知っていたはずなのに、知っていることを、見て見ぬ振りをして。彼女がいれば、僕は明日を迎えられると、そう自分に呪いをかけて。


もういいよ。呪いを、といてあげる。

振りかえる姿が手に届きそうで届かない。


そんな夢を見た。


月曜日、ちらちらと雪が降っていた。彼女は学校を休んだ。理由は多分、墓参りだ。一年前も、この日は欠席で、次の日会うと少しだけ線香の匂いがした。

でも、今年は違った。次の日になっても彼女は学校に来なかった。そして、次の日も、次の日も。彼女が三日以上続けて欠席をしたのは初めてだった。悪夢を見たあとの気分になって、怖かった。


彼女が学校を休んで五日が経った金曜日、僕は彼女の家を訪ねることを決めた。今まで、彼女の家を訪ねたは一度もなかった。彼女が僕の家に来たこともなかった。家に行く理由もなかったし、家という場所に踏み込んではいけないと、お互い、ぼんやりとそう思っていたんだと思う。でも今回はなぜだか、踏み込まなければいけない気がした。無性に僕をかきたてる何かがあった。

放課後になって、僕はしばらく自分の席に座ったまま、動けなかった。なぜ動けないのか、自分でわかっていた。扉を開けると、誰もいない空間、それには慣れたはずだった。しかし、母が出ていったあの日の扉と、どうしても重ねてしまい、足がすくむ。

「彼女、最近来ないね。」

櫻木さんがいたこと、僕は知らなかった。

「…あぁ。休んでるみたい。」

「彼女のところに行くの?」

無表情だった。櫻木さんは、いつも笑顔がたえない人で、彼女のそんな顔は見たことがなかった。きっと僕に、ノーと言ってほしいのだろうと思ったからノーと言うつもりだった。しかし、その言葉は遮られた。

「行くなら、連れて行って欲しい。彼女と話が、してみたいの。」

今度は笑って言った。僕に、それを止める権利はない、と自分に言い聞かせ、一人は怖かったということには気づかないふりをした。分かった、行こう。と言って、僕達は彼女の家へ向かった。


帰り道、僕からは一言も話さなかった。櫻木さんはいくつか僕に話しかけたけれど、僕の返事が空返事であると分かると、喋るのをやめた。

僕の家を20m過ぎた先、彼女の家だ。それを目にした時から、僕を恐怖に近いなにかがおそった。足が震えているのか、目がくらんでいるのか、自分が今、立っているのか、何もかも、分からなくなりそうだった。黒いその何かは僕に何度も問いかける。


「扉を開けて、そこに、なにがあるの?」


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