僕の一日
学校内は、学年一のイケメンに彼女ができたという噂でいっぱいだった。
僕はなるべくその噂に関わらないよう、教室の片隅で本を読んでいた。
周りの哀れむ目にどうしようもない気持ちが湧き出てくる。
本に集中しようとするが、友人から勧められ、半強制的に借りたその本は、僕の好みではなく、集中するには不適切なものだった。冷や汗が背中をつうっと撫でた。
人は興味の対象とならないかぎり、他人が何をしているかなど気にしない。
僕はいつでもここでこうして本を読んでいるわけだか、いつもは誰も気にしない。
が、今日は「奪われた男」としてのレッテルをはられ、哀れむ目が向いている。確実に。
まあ、仕方が無いか。人の噂もなんとかって聞くし。きっとすぐに新しい情報にかき消されて、忘れていく、そういう生き物なんだ僕達は。
チャイムがなり、僕はようやく哀れむ目から開放され、ふうっと息をついた。
『ため息をつくと幸せが逃げるのよ』母親の声が、谺響する。先生が入ってくると、バラバラだった生徒は規則正しく並べられた席につく。教壇の上からの眺めはさぞ美しいだろう。
さあ、今日も、君のための、一日が始まる。