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私の好きな彼。

作者: 下澤華月

今年で2年目の彼とのクリスマス。

きっと、一緒に過ごしてくれると思っていたのが思い違いだった。




「あ、ごめん。24日は趣味友と一緒に過ごす」


……は?

いやいや、ホントに言ってんの?

24日は一緒にいてくれないの?


「いや、だって俺らの記念日って25日だし、クリスマスもそうじゃん?イブにまで会わなくてよくない?」


彼の趣味は、TCG。いわゆるトレーディングカードゲームと呼ばれるものだ。

公式大会にも出て、そこそこの戦績を残してることもあり、それなりに知られている。


24日はそのイベントがあるらしく、そっちに行くらしい。



なんだろ、私の心が狭いのかな…。


このことを学校で友人に話した。


「なにそれ、サイテー!彼、女心まるでわかってないね!」

「でも、応援してるって言っちゃった手前、無理強いするのはダメかなって……」


彼女はため息をつき、言った。


「アンタ、自分のTwitter見直す?」


そういって携帯をこちらに向けてきた。

そこには、昨日の私のご乱心っぷりが。


『なんなのアイツ!!』

『たしかに、去年もイブに会ってないけどさ!!』

『それでも、なくない!?ただでさえ会う機会すくないのに!!』


などと、彼に対する不満を不特定多数の人たちに晒していた。


「いや、ごめん…。TLうるさかったよね……」

「ううん。見てる分には面白かったからいいよ」


そういって彼女は笑う。


ああ、なんていい子なんだろう。

こんな子の彼氏になりたかった。


「何考えてるのかわからないけど、なんで遠い目してんの…」

「俺の彼女にならない?」

「いや、ごめんなさい」


目を合わせて2人で笑う。



きっと、彼氏がいなければこんなこと考えなくて済むのに。



そう思って私は深くため息をついた。



土曜日。

彼とのデート。

なんだか、あのことがあってから会うのが億劫になっている。

互いに意地になってしまったのは認めて、謝ったが、それでも私の気持ちは晴れない。

私と会う前からカードゲームをやっていた彼にとって、むしろ、予定がある方が自然なんだとは思う。

だから、優先してほしいと思っていても、生活の一部と化している彼にとってはただただめんどくさい女だと思われているのだろう。


こうして、冷静になってみると、とことん彼の生活の中心は趣味なんだなぁ……。


「おはよ」


自分の中で一区切りついたところで、彼がやってきた。


「おはよ」


笑顔をつくると、彼は私の頭を撫でて、


「なんか、隠してる?」


「ん?別に?」


こういうときの彼は本当に鋭い。

だからって、分かられてたまるか。


「そう?ならいいけど」


彼が私の手を引いて言った。


「じゃ、行こうか」


私たちは今日のデート場所である、新宿に足を踏み入れた。




お昼時、カフェに入り一息。


「可愛かったね!特にあの姿が最高!」

「そうだね~!」


私たちはとあるlimeのキャラクタースタンプにハマっており、今日はその展示会があったのだ。


こうして、無邪気に楽しんでる姿が好きだけど、やっぱりこの前のことを思い出し、複雑な気持ちになる。


「わっ、なに?」


私は彼の髪の毛をぐしゃぐしゃと撫でくりまわした。


「なんでもないよ」


彼の見えないように私は自分の心の狭さを呪うようにため息をついた。




あっという間に彼との時間は過ぎていき、夕飯も食べ終え、帰路につく。


「今日もあっという間だったね」

「そうだね~」


そして無言。

毎回、帰る時間が近づくと私たちは無言になる。まるで、名残惜しいということを悟られないように。


「あ、私こっち……」

「うん……」


繋いでいる手を互いに離そうとしない。

わかってる。離さなきゃいけないことは。


どちらからともなく、手を離す。


「じゃあね、ばいばい」


私が行こうとすると彼が呼び止める。


「待って!」


私は何かと思い、振り返ると彼の顔が至近距離にあり、気づいたらキスされていた。


「ちょっ!?」


私は、割と人の目を気にするので、あまり目立つようなことはしてほしくない。

彼は、知っているはずなのに、そんなことお構いなしだ、という風に私を抱きしめた。


「あぁ、離したくないなぁ」


彼の手に力がこもる。

私も、と伝わるように彼の服を強く握る。


彼は少しずつ力を抜き、私から身体を離した。


「ねぇ」

「ん?」

「やっぱり、イブ会わない?」


私は驚いて目を見開く。


「え、でも会えないって…」

「うん、日中は無理だから夜に夜にご飯食べに行こうよ。あと、」


彼は一息置いて言った。


「━━俺の家に止まらない?」


不覚にも胸が高鳴った。

自分の顔が熱くなるのを感じ、顔を下に向け、少しだけ首を上下に動かした。


彼は、やった、と言い私の手を握って言った。

「じゃ、24日、楽しみにしてる。遅くなると行けないから、そろそろ行きな」


引き止めたのは誰だよ!

なんてことは言わずに、私はこくりと頷いた。


彼と別れ、しばらく電車に揺られていると、彼からlimeが来た。


『今日はありがとう!楽しかった!24日楽しみにしてるね♡』


私は苦笑してしまいそうになり、返信する。


『私もありがとう。楽しかったよ。会ってくれるって言ってくれて嬉しかった。私も楽しみにしてるね』



次会えるのはクリスマスイブ。

やっぱり、彼の趣味に振り回されてるなぁと思いつつも、早くイブにならないかな、と思う自分がいるのに気付き、単純すぎて笑いそうになってしまった。

そんな彼が大好きで、今ある幸せを噛み締めた。

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