第12羽 メッセージ ③約束 -3/3-
「…あれ?」
だが、しばらく待っても反応は無かった。
ノアは今度はノックした。
少し待って、もう一度ベル。
「おかしいな。留守?」
そう呟く。来訪はきちんと伝えたハズだ。
「鍵掛かってないね…」
ノアは言って、ドアノブに手を掛けた。やはり、あっさり空いた。
ノアはためらわずに部屋に入った。
「おい?」
「あ。やっぱり誰もいない」
室内からは、人がいる気配がしなかった。
ドアは鍵が掛かっていると、叩いたときの響き方が全然違う。
さっきノックしたときの音は、音の終わり方がニーク氏の館の扉の響きに似ていた。
「…?」
イアンがそんなノアを怪訝そうに見た。そして後に続く。
その時にはノアはもうリビングに進んでいた。
ノアは一階の部屋を見た。昼間なので自然光が差し明るい。
入ってすぐに広いリビング、まっすぐ、少し先にキッチンテーブル。椅子は六つ。チェアには派手な幾何学模様の布がかけてある。
その左はおそらくキッチン。家具はライトブラウンの木材で統一されている。
壁や間仕切りは無い。
キッチンの奥にまだいくつかの部屋があるようだ。そこにはドアがついている。キッチンの右向かいに二階へ上がる階段。階段には滑り止めらしき白色の絨毯が貼り付けてある。
一番奥、窓を背に六人くらい掛けられそうな、緑色でL字型のソファー。
ソファーにも、派手な柄のカバーが掛けてある。これはきっとベスが言っていた母親の趣味のキルトという布だ。生活感がある。
ノアはスクール、アンダーの部屋と比べ、とても広いな思った。
「…?」
そこで、――そう言えば…?と思ってノアは後ろを振り返った。
すこし首を傾げ、またテーブルに目をやる。
やはり留守なのか、と溜息を付きそうになって、ん、と声を出した。
…キッチンテーブルの真ん中に、紙が置いてある。
『ノアへ』
「――…これ?」
ノアははっとし、すぐにその書き置きを手に取った。だが意外に長い。イアンも同時に読んだ。
『ベスの両親の身柄を保護している』
その後、十行ほど続く。
「!」
イアンがその紙をノアから奪う。差し出し人は。
「――レオン!?」
ノアは声を上げた。
「おい、状況を!」
イアンが無線を取り出し通信をする。だが返事は無い。
そう言えば、ノアは先程から気になる事があった。
「ねえ、イアン――さっきから、外が…少し騒がしくない?あと、何か変な音がするんだけど」
「音?何だ?」
イアンの声は切迫している。
「何か、辺りに水を撒いてるみたいな…?バシャバシャって」
ノアの呟きに、イアンは今気づいた様子で周囲を見た。
「――『油』だ!!」
イアンが大声で言って、ノアの手を引いた。
「え!?」「逃げるぞ!!」
ドン!ドン!と揺れる音がした――!?
入り口のドアだ。鍵が掛かっている?さっきイアンが掛けた?誰かが蹴破ろうとした音?
「っ!!急げ!二階だ!!」「え、え!?」
イアンはノアの手を引き、階段を駆け上がる。
銃声!
直後ノアは背後の轟音に驚き叫んだ。
「――っ!?―うゎあああああ!!?」
玄関扉と、居間のテーブルが吹き飛んだ。ノアを追ってきたのは炎だった。
二階へ。窓まで走り、イアンが窓を開け外を確認した。
白いボックスカーが建物の周囲に止まっている。
「馬鹿な!?――くそ!!」
ボックスカーから四角い物を背負った、白い防護服の連中がぞろぞろと降りてきている。
「っ!?」
イアンに続いてノアが外のぞくと、裏へ回っていたサロンの黒い車が三台。
そのうち一台のドアが開いたまま――その車の黒服が一人倒れている。赤色が見えた。
白い奴らは建物の周囲に、つながった建物全ての根元に『油』らしき物を撒き始めた。そしてハシゴをノアとイアンのいる出窓に掛けようとする。
黒服の一人が四角からチューブでつながった長いノズルを受け取り、倒れた黒服に向ける。
炎が見えた。
イアンは外のはしごを上る防護服に向けて発砲した。
バン!バン!バン!と音が響き――ソイツら三人が転落し死んだ。まだ群がる。
「!!イアン!?」
頭を撃って!!殺した―!!
「やばい!――これを使え!!」
イアンは周囲を見ながら、ノアに用意していたらしい自動拳銃を渡した。
バチバチと燃える音、その時、ダン!と、イアンがノアの背後、火煙と共に二階に上がって来た防護服に発砲した。
一発で死んだ。だが次が居る。
ソイツがやたら炎をまき散らす。イアンに撃たれそいつも死んだ。
「屋根へ逃げるぞ!先に!」「え、ええ!!?」
すでに煙が充満している。火の勢いが早い。
―何なんだ!!
「―イアン!」
ノアは先に窓から出て、屋根に手を掛け、屋根に登りすぐにイアンを引き上げた。
馬鹿みたいに人を撃ちまくり、二人はベスの家から脱出した。




