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JACK+ グローバルネットワークへの反抗   作者: sungen
シカゴ編(2月24日~)
86/151

第12羽 メッセージ ②偽装 -1/2-

二月二十七日。


「ふぁ…」

起きがけのレオンは、あくびをしながら新聞を取り、適当な朝食をテーブルに置いた。

簡単なブレッド。


その後湯を沸かし、インスタント珈琲を煎れる。

適当にテレビを付け、珈琲を手に持ち、椅子に座り、バサリと新聞を開いた。


そう言えばここ数日、レオンはまともに寝ていなかった。

だがレオンは存外まともな時刻に目が覚めて、よかったと思った。



…ノアとイアンはもう、サンフランシスコに向け出発しただろうか?



この部屋は、速水がいた頃は綺麗に片づいていたのだが…、その速水は出て行って久しい。

おかげで今この部屋は、程々以下と言った様子になっている。

以前は速水が作っていた朝、昼、晩メシも、今はレトルトや冷凍食品、ピザが主。


宅配はこのアパートまでならギリギリ持って来てくれるが、ホームに。と言うと即電話を切られる。


速水は現在、自宅で療養中。

もとい、監禁されヤク中。


「ハァ…」

レオンは溜息を付いた。もちろん良い状況な訳が無い。最悪だ。

こうなったのはレオンの打つ手が遅れたからだ。

色々な懸念を優先し、仲間である速水の安全確保を怠った。

というか全く、ノーフォローだった。


レオンは、セット前の髪を忌々しげにかき上げた。


(超能力だと!?…あのクソ親父。クソっ!!俺も気づけっての。だからアイツは普通じゃ無いんだって!!)


速水に関してレオンは幻聴・超能力以外も、思う事が色々あった。

おかしいと思ったのは主に外に出てから。

いや、スクールでも、アンダーでも…ずっとそんな気はしていたのだ。


もしかしたら?コイツ?――。まさか。すごく?…という。


…本人が何気ない風を装っていたので、あえて尋ねなかったのだ。

上手く言えないがレオンは今、速水に裏切られた気分だった。


俺はそんなに信用されていなかったのか?

俺はまだ昔のままなのか?だから、あいつは俺を信じなかった?

本当に、もう少しな…。


「っとに。くそ。はァ…」

…色々面倒みてやったのに、あの『野生のカラス』はレオンに懐かない。


戻ってきたらあらいざらい全部聞いてやる…。


レオンはそう決意し、ブツブツ言いながら適当なブレッドを千切った。

そして、ふと眼光を鋭くする。


一月後の三月二十四日…。

その日、エリック及びプロジェクトチームが速水のアパートから引き上げる予定だ。


レオンはその日までに、やるべき事がある。



約束通り、レオンの親父は退いた。

『キング』は今はレオン。…一応は。


…ダンスファミリーは絶対的な存在『BIG』を頂点とするピラミッド型社会。

踊りの実力などからファミリーネームが与えられ、その人物の家族ファミリー内の役割=ポジションが決まり、役割を果たしながら、お互いにダンスを高め合う。

名前ネーム衝突セッションにより、奪われたり、また引き継がれたりする事もある。


亡き祖父の代わりにBIGとなったのは、レオンの父。

通常、BIGはリーダーだが、レオンのファミリーではBIGは不可侵名誉職という扱い。つまり隠居。


男性幹部『Micro』は、BIG以下、十三名からなる。

BIGを入れると十四名。その下に構成員が付く。


BIG…アルバート・マクギニス(レオンの父)

KING…レオナルド・マクギニス(レオン)

KING・Jr…ロナルド・マクギニス(レオンの兄/行方不明)

Young・KING…現在空席。元はレオン。

Boy…ヤン

Kid…ジェイラス・カラズ

Baby…ディー(D)

Soulja…チャーリー・テート

Prince…アルヴァ(Princessの恋人)

Genral…オズワルド・ビィティー

Monster…ジョニー・マッキャン

Rowdy…バット・アルマンド

Infinity…マット・グルーヴス(サンフランシスコへ同行・腕っ節が強い)

Child…ダリル・ファルコナー(サンフランシスコへ同行・腕っ節が強い)


特別枠

JACK…サク・ハヤミ


『JACK』

――元々、レオンのファミリーにはその客分用のネームが存在した。

だが客分も適当な人物も居なかったため、空席だった。


速水は知るよしも無いが、レオンの父が速水にその名を与えていた。

これはレオンも了承している。だから速水は自由にこの街を歩けて、ホームに出入りができて、BIGやKINGと対等に話せたのだ。速水は確かにJACKだし、自然な流れとも言える。


そして、女性幹部『Mini』これは日本で言う所のレディースのような物。

彼女達もファミリーには欠かせない。

…『Micro』と『Mini』半四角錐が二つ合わさり、ピラミッド形作っている。

もちろんBIG、KINGの下。KINGと並ぶQUEENは現在空席。

JACKは特別枠、つまり客分なので序列は関係無し。ピラミッドの外で適当に遊んでいる。


QUEEN…メアリー(レオンの母。離婚空席・名前のみ残る)

Lady…ジャンナ(レオンの祖母。先代BIGの妻)

Sister…オリヴィア(レオンの叔母。レオンの父の妹、メアリーは嫁入りした)

Miss…リーズ

Princess…キティ(オリヴィアの娘。レオンのいとこ・別名、我が儘プリンセス)

…以下、『Mini』も実力ある、個性派揃い。こちらも『Micro』と同じく十三名。


下っ端を全員合わせても二百名ほど。規模としては片田舎マフィア、という風だが、レオンの父は祖父の代からの大戦争を終結させた為、この一帯での影響力はかなり強い。


――、とにかく本当に癖のある連中で、Micro、Mini、下っ端問わず、未だに兄の帰りを待っている者も多い。

レオンはそいつらに勝たなければならない。いや、別に全員に勝つ必要は無いのだが――。


…あの我が儘プリンセスなど、どうやって説得出来るのか…。

レオンは頭を抱えた。


レオンは真に『キング』と認められ、そしてネットワークを潰すために旅立つ。

そのつもりだ。


もちろん全員連れて行く訳にはいかない。彼等にも家族や生活がある。

ついて来られる者だけ。


…だが、誰がわざわざついてくる?別にアメリカで生活していれば良い。


この先、速水を助けられるのはレオンしかいない。…少なくとも、レオンはそう思っている。…若干溜息を付きながら。

つまり『友人の為』『家族の為』『ダンスを守る為』。――苦笑し、出掛けるには十分な理由だ。


レオンは一人でもやると決めた。だがネットワークは馬鹿にでかい。

…レオンだけでは、さすがにどうにもならない。そしてずっとここにいてもネットワークは倒せない。

老舗ダンスマフィア『KING』を軸に、まずはアメリカ国内で、対抗する勢力をまとめ上げなければ。


根っからのクランパーである「レオン」は、レオンの兄ほど、ファミリー内の人気や人望がある訳では無い。


…現在、確実にレオンの味方なのは。


Boy…ヤン(レオンに負けた)

Kid…ジェイラス・カラズ(ハヤミに負けた。先代JACKのファン)

Infinity…マット・グルーヴス(サンフランシスコへ同行・腕っ節が強い・レオンに負けた。ハヤミにも負けた)

Child…ダリル・ファルコナー(サンフランシスコへ同行・腕っ節が強い・レオンに負けた。ハヤミにも負けた)

Soulja…チャーリー・テート(レオンの友人。レオンとはドロー)

Prince…アルヴァ(Princessの恋人・非常によく出来た人物。兄の親友)


そしてレオンの師匠の後継者、リッキーとトニー、情報屋のテリー。


これだけだ。


――他の連中は…だから癖者ぞろいなんだよ!!

レオンは残りのFamilyのメンバーを思い浮かべ、頭を抱えた。


皆、レオンの兄と、レオンをよく知るだけに――レオンを、面白がり試している節がある。


だが速水の為にも、死んだベスの為にも…。

ダンスの神の為にも。やらなければ。


ブレイク・クラウン時代を経て、いま時代は『ブレイク&KRUMP』全盛。


地下に対しての闇。

元々レオン達は、とても健全なマフィアだったが、紆余曲折の大戦争を経て、最後に銃を捨てた。

現在のシノギは、闇ダンスクラブ「など」の経営、闇ダンス大会などの主催。たまにギリギリ合法なドラッグ販売。そのほかストリップやらも色々。


…やっていることは、ネットワークとたいしてして変わらない。

変わらない、という事は平和的という事だが、レオンはネットワークより、自分達の方やや真っ当だと考えていた。…似たような物だが。


ダンスマフィアは、世界平和を掲げてはいない。だが、ダンスの力と神を信じている。

そのむちゃくちゃな方針に従わない模範マフィアは、暴力で潰された。多くの血が流れた。


ダンスマフィアは、純粋なKRUMP派とは言いがたい。絶対に言えない。


レオンと兄は憤り、そして家を、街を飛び出した。

師匠に出会い。兄弟で映画に出たり――。


―そして。突然兄は消えた。

ネットワーク。…そいつ等が攫った?


レオンは親父を締め上げたが。親父は相変わらずだった。

『じゃあ、やってみろ?探してみろよ。そうしたら『KING』の名前をくれてやる』

酔っ払った、イかれた父親の声がカンに触った。


『それまで、街がぶっ壊れないように見ててやる』

若いレオンは、親父の狂った笑い声にむかついた。

『――キングは、兄貴だ!!俺は必ず。兄貴を探し出す。兄貴と一緒に、このファミリーを、この街を立て直す!』

レオンは叫び、契約を交わしスクールへ。


そこでノアとベス。先代ジャック。

…そして、速水に出会った。


速水が見ている物は、兄が見ている物に似ているのでは無いだろうか?


レオンは、速水の理想とか、思想とか。そう言った物が、兄と似通っていると感じた。

不屈の精神、負けん気とでも言うか。だから、速水を仲間にしたかった。

コイツなら、俺が死ねば、やるだろう。――だから目をかけていた?


だが…レオンの代わりにベスが死に。

レオンが出てきてみれば。


――レオンにしたら、『出てきてみれば、いつの間にか…』という感じだったが。

現在、レオン達のファミリーが支配下する街には、割れていない窓ガラスがある。

子供の笑い声が聞こえる。それが信じられない。


…今もホームに宅配が来ないのは、酷い時代の名残だ。



二月はあと一日。

引き続き本日の合衆国。トップニュースはビル火災。強盗、殺人、レイプ。


『凄まじい勢いで燃えています――』

イかれたテロ集団。


…ああ。どこも、世界はいつも通りだな。

相変わらず、腐った世の中だ。

また銃の乱射か。

いっそ、銃がなければいいのにな。だがライフル協会が――。


そう思い、レオンは着替えながらチャンネルを変えた。

カリフォルニア州知事選挙。前知事の失脚理由。


選挙?ま、行かないな。俺はそれどころじゃ無い。急ぐか。

レオンは時計を確認し、冷めかけた珈琲を一気に飲む。


「―ん?」

と、そこでレオンは新聞のゴシップ記事に目を止めた。

『あの二代目ジャックが電撃婚約!!?』


なんだ下らない、スッパ抜きか。さっさと飲んで―。


二代目ジャックだと!?

レオンは思わず二度見した。

丁度、アナウンサーが高らかにニュースを告げる。

『お相手は若手人気歌手のアビゲイル・クイーン!!彼女の父親はなんとあのW・J・ヒルトンだったのです!!』



レオンは盛大に珈琲を吹いた。


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