第12羽 メッセージ ①警告 -1/4-
――二月二十四日。夜。
『ノア。ジョーカーは、あのウィリアム・ジェスター・ヒルトンだ』
レオンは、アルバムを見せた後でノアにそう言った。
時間も無い中で、レオンはそれだけは言いたかったらしい。
『マジかよ…!!あの!?』
…あの超有名な、売れまくりらしいEDMアーティスト。
ソイツがジョーカーなら、ノアの父親はそいつ。
聞かされたノアはもちろん驚いた。そして頭を抱えた。
ベスを殺したことと言い、とんでもない犯罪者を親に持ってしまった…。
歯ぎしりばかりのレオンの話では、今居るこのイアンも…ジョーカーの計画の為に、サンフランシスコで下らない茶番を演じ、速水をグルになって騙したらしい。
速水のアパートメントの隣に住んでいた一家、――今はレオンの持つ別の物件にいる――の子供達が、彼の家を訪ねる白い髪の目立つ人物を目撃していた。
そしてルイーズらしき褐色ぎみの肌の金髪美女がいたと言う…。
そして速水が子供の頃からの計画…と来れば間違い無い。
むしろ隠す気はもう全く無いのだろう。
…そうだな?とレオンに聞かれたイアンは、ああ、と言って目線を床に落としていた。
イアンは深い溜息をついていた。
だから俺はいやだったんだ、――とでも言いたげに。
どうやらイアンは、最低限の事しか言わない気らしい。
速水がプロジェクトに自宅監禁されてから、ノアが来るまでの短時間に、レオンはあの場にいたアラン、ルイーズを最優先で仲間に洗わせていた。
あの二人はジョーカーの昔からの友人と聞いた。つまり、明らかに怪しいからだ。
ノアは良くそこまで頭が回るな、と感心した。
そして――レオンの仲間、ジェイラスとヤンの報告によれば、この二人はおそらく真っ黒。
…キースとイアンが、ジョーカーの命令を聞いて動いていたのは確定している。
イアン本人も渋々認めた。今回だけだった、と。
つまり今回はイアンに、ジョーカー本人から直々に『お呼び』がかったらしい。
イアンの役目は単なる賑やかし。適当に人を貸せ。ジョーカーはそう言った。
イアン達はジョーカーに会い、馬鹿な計画を聞き当然反対したが、イアンはイアンの妹の事があるので積極的ではない物の、…断る気は無かったらしい。もちろん断る事は不可能だったが。
あの場にいた、アビー、クリフ、ベイジルは、一昨年からずっと監禁状態の歌のジャック解放の条件がそれだった。これはウルフレッドを通じてレオンがアビーに確認済み。
その事実にレオンは心底怒っていて、今後アビー達と組むかは不明。むしろ一度裏切った相手は信用できない。そう言っていた。
…レオンはこういう所が昔のままだ。と言うかヤクザっぽい。
反対にアビー達はぜひにと協力を申し出ている。
つまり…レオンはレシピエントについて、レシピエントだというアビーに尋ねたのだ。
…速水の事を知り、向こうは血相を変え『すぐに組みましょう、会って話を』と言ってきたらしい。
そこで『ふざけるな!』とキレて電話を切ったのはレオンだ。
ノアはそれを聞いて呆れた。ジャックに感化されて大分更正したと思っていたが…やはり時々、そうでもないらしい。
ノアは協力するかは別として、「せめて一度会って向こうの言い分くらい聞けば?人質がいたんだろ?」と言っておいた。
『…分かってる…だがな…』
一応レオンも分かっているようで、そう言って溜息を付いていた。
速水がどんなゲスな方法で陥れられたのか…、それを思うとやるせないのだろう。
『今後、いや、過去も。ハヤミに一歩でも近づく奴は、全員洗う。…この茶番を止められなかった俺が唯一出来るのはそれくらいだ。…また何かあったら、すぐコイツかキースにでも連絡する。…つながるかは分からないがな』
レオンはイアンを見てそう言った。




