表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/151

第10羽 追徴 ②ダンスパーティ /全員美形 -2/5-

「俺は良いとして、レオンと、皆は今夜どうする?ウィルは大丈夫か?」

そのままアビーが移動しはじめたので、車寄せで話し合う。


「俺の家は広いから、お前等全員泊まっても平気だぜ」

ウィルは苦笑した。


「じゃあ、迷惑でなきゃ俺も泊らせてもらうかな…。悪いな」

レオンはそう言った。速水がばっくれないか見張る気だろう。

「ああ。是非来てくれ。歓迎する!君達もどうだ?ジャックの知り合いだろ」

ウィルはアビー達を見て言った。


「ええ。ミスターヒルトン。私達も折角だし泊まりたいわ。クラブDJ、W・Jヒルトンの『ダンスパーティ』を心ゆくまで楽しみたいの。いいかしら?」

アビーはウィルに聞いた。

「ああ。もちろん良いぜ」

ウィルは答えた。


「ありがとう。ベイジル?」

アビーが目線と共にベイジルに確認する。

「仕方無い」

ベイジルが言った。

「珍しいスマイルジャックが居るしな」

クリフは少し苦笑気味だ。速水を見て何か言いたげに肩をすくめた。

要するに彼は先程自己紹介で速水に握手を求め、完璧に無視されたのだ。


「…」

「キレるなよ」

スマイルジャックと言われ黙った速水に、レオンが言った。

「キレないって。別に良い。クリフだっけ。さっきは無視して悪かった。反省してる」

「あれ?」

クリフは拍子抜けしたようだ。

速水から普通の表情でごく自然に手を差し出され、クリフは何となく握手をする。


…速水は、どうせ縁も無いだろうと適当に接してしまった事を反省していた。

人生何があるか分からない。

速水は友人を増やそうとしていた事を久しぶりに思い出した。

だが隼人と、圭二郎だけじゃ足りないのだろうか?


「お前、ちょっと丸くなったか?」

レオンそう言った時、今日は濃いグリーンのドレス着たルイーズがこちらに来た。


後ろに二名、ラフなスーツ姿の若者が居る。

この二人は確か初日にトランプで速水達に席を譲った…。


「キースとイアンも連れて行って。二人もダンサーなの。ねえウィル、良かったら私も後で行って良い?」

ルイーズが紹介をする。そして彼女も行く気らしい。


キースは黒人で、ドレッド状の黒髪を短く刈り込んだ青年。二十代半ば?

イアンは浅黒い肌に真ん中分けの、短い黒髪──彼はどう見てもアラブ・中東系。

格好は二人とも正装。

窮屈そうなキースと違って、イアンは育ちが良さそうだ。いかにも着慣れた、金持ち特有の雰囲気がある。

イアンの年はおそらく速水と同じくらいか少し下。…確かトランプでは若い彼が負けていた。

イアンはなぜか速水の方を睨むような感じだ。


「どんどん増えるな」

レオンが言った。

「ゴメンね、キング。ウィル、後でアランは直接行くって」

「いいさ。もうまとめてみんな来い!」

ウィルが快活に笑って言った。


「おい、今日泊まりなら、荷物はどうする?取りに帰るか?」

レオンが聞く。

一日くらいなら借りれば良いが、速水はしばらくウィルの別荘にいるつもりに違いない。

「いや。犬に持って来て貰えば良い。ここからならすぐだし──。ホテルは別にそのままでも…」


「まあ!犬を飼ってるの?犬種は?」

「えっ」

アビーに言われ、速水は硬直した。


そうして各々、車で着いた別荘は、海のすぐ近くだった。

速水はアビーと一緒に車に乗った。むしろアビーが勝手に乗って来た。


「ドックってその人の名前なの?」

「…まあ、そう言う」

精一杯濁したが…車から降りた速水は久しぶりに罪悪感を感じていた。



■ ■ ■



「凄いな…!」

速水は驚いた。その別荘はかなりの豪邸だった。

サンフランシスコ湾を望む三階建て。広さで言えばアランの家の方が若干広いが…。


一階のフロアには大勢の人がいて、まるでダンスクラブだ。

音響が整い、音楽が流れ、皆が好きに踊っている。

DJはもちろんウィル。


相変わらずの金持ちだって言うのは良く分かった。


「踊るか?」

レオンが笑った。


「…、踊って来いよ、俺はここで見てる」

速水は言って、壁にもたれる。

「お前、やっぱり具合悪いのか?」

「いいや。大丈夫だけど、こういう風に大勢で踊るの、実は苦手なんだ」

速水は苦笑した。


そのうちにレオンは誘われ、皆の輪の中に消えていく──。


「笑ってないジャック。一緒に、お外に出ましょう。もっとお話がしたいわ」

アビーが話しかけて来た。

速水は苦笑した。

「…じゃあ、誰か連れて行こう。あ、クリフ」

速水は丁度近くにいたクリフを連れ、三人でフロアの外に出た。



ライトアップされた庭には、当然のように酒を運ぶ給仕がいて、長いテーブルがあり、白いテーブルクロスの上に軽食が並んでいる。

ここも賑わっていて、ダンスに疲れた各々が自由に軽食を取ったり、酒を飲んだりしている。

庭の片隅にはステージが、簡易的な、おそらくいつでも出しっぱなしの──があり、舞台の隅で、派手な服装の女性DJが音楽を奏でている。

ステージ上には何人か踊っている人達がいる。どうやら誰でも上がって良いようだ。

今またステージ中央の、三段ほどのステップから数名の男女が舞台に上がっていった。


ステージには背景があって、ストリートっぽい派手な絵が書かれている。

その向こうには暗い海が青く見える。これは舞台を照らすライトのおかげだ。

観客席はそれほど多くなく、横二列。縦は三、三で六列。三列目と四列目の間に若干のスペースがある。皆、ドリンク片手にダンスを見たり、あまり見ずに談笑したりしている。


「クリフ。それにしても、広いお家ね」

白い軒下でアビーが言った。丁度、白いベンチがある。

彼女はそのベンチの上にまずウサギを置き、その隣に腰を下ろした。


「ホントそうだな。プールが普通にある。俺の家にもあったけど、荒れてた」

壁を背に、プールを眺めクリフが答える。クリフは美青年だ。

髪は速水と同じくらいの長さで、髪質は柔らかく、薄茶に近い金髪。

細身で、身長は速水より少しだけ高い。

彼は幾つくらいだろうか?


「スマイルジャック、君は幾つ?」

速水がそう思って見ていると、クリフに年を聞かれた。

「十九になった」

速水は答えた。

「あ、同い年か。…へえ」

「クリフ。私、彼とお話ししたいんだけど…」

アビーが言った。

「ああ。ゴメンゴメン」


「アビー、何か話があるのか?」

速水は尋ねた。

「ええ。私達のジャックを思い出していたの。…私達は一昨年こちらに戻って来たんだけど…良かったら、力を貸してくれないかしら?」

アビーはいきなり流暢に言った。


普通に話され速水は面食らった。

アビー、彼女は車中でも個性的な話し方をしていた。


彼女の外れた話し方は、演技だったのだろうか?


「キング…レオンにはもう言った。俺たちと手を組まないかってな」

クリフが補足した。

アビーが隣のウサギをなでる。

「…仲間を集めて、知名度を上げる。それがエンペラーに会う近道なの。キングはあなたをだしにして返事を保留にしたから、私、あなたと直接話したかったの」


クリフが壁から離れ、速水に向き合う。

「面倒だけど、エンペラーは正体が分からない。正直に言うと、俺達はマフィアの『キング』と違って、サロンにほとんどツテが無いんだ。キングはエンペラーの正体は謎だって言ってたけど」


「…代わりに、歌手のコミュニティとつなぎは取れるわ」

アビーが引き継ぎ言った。


「キングは君次第って言ってた。我が儘だから何て言うか分からないって。一応、先代ジャックの仇なんだろ?…あっと、悪い、キングから聞いた。と言うか、君が地下にいる間に、噂になってたんだ。二代目ジャックが姿を消して、今は地下に居る──、姿を消した理由、それはジャックを殺した仇を探すためだ、ってね。実際に君の契約はそれだったんだろ?」

クリフが言った。レオンが話したらしい。

「ああ…、でも…?」


契約…?


速水は、はっとした。


「?どうしたの、スマイルジャック」

アビーが首を傾げた。


「そうか!それが引っかかってたんだ!!」

速水は言った。


結局、ジャックを殺した犯人は、誰だったんだ?

速水はその情報を受け取っていない。

だから何かが続いている、ずっとそんないやな感じがしていたのだ。


契約。ネットワークはやたらとそれにこだわっていた。

レオンに聞いたが、絵札の内一人が死ぬと言う事は、レオンがスクールに入った当初から契約で決まっていたらしい。レオンがアンダーに移ったとき、別室で同じ契約の引き継ぎを確認されたと言っていた。

スクール、アンダーと長い契約は続いていた?


契約はベスの死によって履行された。

レオンは当初の契約通り、兄の消息を知らされた。ノアは父親の正体。ベスは…分からないが…彼女も含めた三人は同じ内容の契約を共有していた。


だが、速水ははじめからそこに入っていなかった。

だから別室に隔離されたのだ。

…そんな事、レオン達が口止めされていた時点で気が付くべきだった!


その時聞いた、外に出た後は、『ひとまず関与しない』と言うジョーカーの言葉。

外へ出て知った、サロンイコール、裏ネットワークの存在。

…つまり外もネットワークの力の範囲内と言う事だ。


まだ何かが起きようとしている?

ウルフレッドは飼い犬では無いし、エリックは心配だ。

つまりどちらも怪しい。


だが──まさか、そんなにしつこいってあるのか…!?



速水はエリックの言葉を思い出す。

『…計画については、継続中なので…お話出来ないんです』

そうだ、彼は精一杯、何かを伝えようとしていた…!


「くそ。エリックに会わないと。サラはどこに居る!?アビー、クリフ、悪い、返事は保留で!」

速水はその場を立ち去った。


廊下を駆け出す。

さっぱり働いてなかった思考が動き始める。


…ノアがジョーカーの息子なら、多少なりとも特別待遇だったはず。

レオンがキングで俺がジャックなら、俺たちは集められた?──ノアの為に?


下手したら、ウルフレッドもノアのため?サラも、エリックも?


早くノアを探さなければ…。ノアはこちらの切り札だった。

ジョーカーになり得る絵札、いや、次の…特別なジョーカー…!


「くそ…」

速水は自分の情けなさに歯がみする思いだった。



俺はベスの死を悼みすぎてた。馬鹿だ──嫌な事は、もう繰り返したくない!!



誰かが死ぬのは、もう嫌だ!!


速水はホールの扉を押し開けた。



「レオン!!」

丁度その時、曲のつなぎ目だった。

その声はフロアに良く響いた。


「何だ?」「誰」「…ジャックだ!」「うそ」

「レオン何処だ!?」

速水は人の間を縫って、レオンを呼んだ。


「どうした?」

「レオン、帰るぞ!」

速水はレオンを見つけ彼の手を引いた。

「何だ?何かあったのか?」


「何も分からない!けど、とりあえず帰る!」

「な、おい?何言ってる?」

速水はレオンを引きずるようにして、ダンスホールを後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ