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JACK+ グローバルネットワークへの反抗   作者: sungen
異能編(最終章)
103/151

第13羽 異能 ①カラス -3/4-


何か良い事でもあったのか?と道行きですれ違った母親と少女が首を傾げた。


「そうだ!今から日本に帰ろう!!」

速水は良い考えを思いついた。

そこでふと立ち止まって、曇り空を見上げる…。


ぱらぱら、と雨がぱらついている…、だがまだ降り始めたくはないようだ。


…いっそ雨に濡れて帰りたい。

速水は唇をかんだ。

周囲は寒くないが、暖かくも無い。


目線を戻すと、そこは建物の間に作られた狭い広場だった。

煉瓦とコンクリートの壁は落書きだらけだ。


半円を描くコンクリート。それを適当に囲む丁度良い高さの柵。いくつかの低いパイプ、適当に置かれた障害物。

その中で紺色のキャップをかぶった、黒人のスケーターがスケートをしている。紺のシャツ、だぼだぼのジーンズ、黒いスニーカー。ボードだけが派手な黄色。

彼以外に滑っている人はいない。

コンクリートの端まで一気に滑って、平らな狭い端で少し止まってまた滑べる。


「…」

かっこいいな、速水はそう思った。ヒュゥと、口笛を吹く。


スケーターが速水に気が付いて技を決めた。


「すごい!」

速水は笑って拍手をした。

しばらく広場の入り口の低いフェンスに手を置き、スケーターを見ていた。


速水は、「おい、そろそろ、雨が降るぜ」と言うスケーターの言葉を聞いた。

「じゃあ、もう日本に帰ろうかな」

速水は言った。

足でボードを跳ね上げる動きも格好いいと思った。


「…ジャパン?チャイニーズじゃないのか」

的外れな返答にスケーターが眉を潜めた。

「うん。カラスがそう言ってる」

「カラスって、お前の横に止まってるそれか?」


――え?

速水のすぐ横、低いフェンスの上にカラスがとまっていた。


「お前、そのカラスを飼ってるのか?――っと降ってきたな」


「…」

速水はカラスに指先を伸ばした。


「カラス。お前も一緒に日本に帰るか?」

こつ、とくちばしが指先に当たった。


「じゃあ、帰るか…?」

速水は微笑んだ。

けどカラスがいれば飛行機に乗れない。

速水はこちらに残る丁度良い理由が出来たと思った。


大きめのジャンパーを着ていて良かった。速水はカラスを上着の懐にしまった。

首だけ出していたカラスは、もぞもぞと懐におさまった。

そのまま暴れる様子も無い。


「っはは、仲良いな。じゃあ俺は行くから…な」

大粒の雨が急に降り出し、スケーターはフードをかぶって立ち去りたそうにしたが、速水は動かない。


「…日本に帰らないと、ちがう、助けないと…ちがう、…ちがう…」

速水は頭を押さえた。ふらつき、フェンスに寄りかかる。

「はぁ?…おい?大丈夫か」

キャップをかぶっているので、速水は濡れはしないが…。

そのスケーターは帰るタイミングを逃した。


唐突にブレーキの音が聞こえた。

三台の黒い車が、広間の入り口をあっと言う間に塞いだ。

「な―?」

スケーターは瞠目した。

「よし」とか「ああ」とか言う声が聞こえた。


「探しました」

スーツを着た白人が降りてきた。


「レオンさんが待ってますよ」

「…」

その言葉に速水は顔を上げた。


「…なんだ、お前の知り合いか」

スケーターはふう。と息を吐いた。ポリスかと思ったぜ。と呟く。


「さあ、行きましょう」

「レオン…」

速水はつぶやいて立ち上がった。

その拍子に、フェンスの飛び出た針金にキャップがひっかかり落ちた。

「あ」

速水はそれを拾った。


「――あ!そうかこいつあの『ジャック』か!!どこかで――」

その声が聞こえた瞬間、空気が固まった。

「殺せ」

そう言う声が聞こえた。


そして乾いた銃声が響き、ばしん!!とはじける音がした。


「――っ!!?」

速水が目を見開いた。


撃たれたのは速水だった。

「っおい!?」

速水はとっさにスケーターの前に出て彼を庇ったのだ。

スケーターが自分の代わりに撃たれた速水を抱えたが、速水はずるりと崩れ落ちた。

「な――」

撃った方も動揺している。

「まずい!どうす」「運べ!」「そいつは!?」「一緒に――」


「ぶっ殺す」

その声が聞こえた。

速水はポケットからナイフを抜き、ナイフの刃が瞬時に起き上がる。同時に速水を撃ったやつを刺した。――が、懐でカラスが暴れて急所を外してしまった。もっと訓練をしないと―。と、カラスが生きている!?


「ごほっ」

速水は急にむせ込んだ。

撃たれたのはカラスと、自分もくらった…!?

速水はギロリとした目で周囲を睨み、そこにいる六人を自分が倒れる前に倒せると判断した。

とりあえず方針転換、気絶させて逃げて、カラスの手当だ。


周囲は建物に囲まれ出口は車で塞がれているが、運の悪いスケーターを庇いながらでも楽勝。

皆サプレッサー付きの銃を持っているが、そんな物。

速水は素早く相手の伸びた腕を切りつけ、刃を逆手にし足を刺す。そのまま胴体をナイフでなぎ払い、鳩尾を殴って気絶させ、二人目…は隙だらけだったので背後からナイフの柄でぶん殴って昏倒させた。

左右に来た三人目四人目の顔を切り付け、顔面に蹴りを喰らわせ、軽く腹を刺して突き飛ばす。

残った二人は逃げそうだったので奪った拳銃で撃つ。

スケーターがあっけにとられている間に、速水は全ての男達を倒した。


「あ」

倒した後に、速水はこいつらレオンの仲間じゃないよな、そうだ、撃ってきたし。なら良かった。と思った。


そして速水は、急いで上着を開いた。膝をつく。



…カラスは運が悪かった。

くしゃくしゃで、…血だらけだ。もう動かない…。



「…ごめん」

速水は朦朧とした痛みの中で、ヒューヒュー唸り、とばっちりで死んだカラスを抱える。

…きっとこのカラスはどこか、体調とか悪くて逃げなかったんだ。

速水が拾わなければ、死なずに済んだのに。


「墓を作らなきゃ…」

「おい!病院が先だ――っ、おい!!」


速水は意識を失った。


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