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トンとことこ♪ 5話

アンデンテの街に入ったモモと俺は、そのまま冒険者ギルドに向かっていた。


セーウルフ討伐のクエストの報告期限が今日までなのだ。


木造の建物に入り、銀行の窓口みたいな所で整理板を取ってしばらく待つ。


その間も俺は注目の的になっていた。


「スライム? ……いや、ブタ? ……」


目を細めて俺を見る冒険者。ブタです!


「イベリコ! 伏せ!」


ブリーダーと化したモモの調教に俺は従う。


「おう! ペタン♪」


こんな感じか?潰れたブタまんだ!


「喋ってる……」


「イベリコ!一回転!」


えっ!?難易度が急に上がったけどやってみる。


「えっ!? と……とうっ! あぅ! ……無理か。」


一人バックドロップになってしまいました。


「可愛い~♪」


聞こえてない振りをしてるが、実は嬉しい俺♪


「イベリコ! ちんちん!」


「ないっす! 耳と鼻以外に穴がないっす!」


性別ブタだもん……


「変わったユニークモンスターだな。いや、変わっているから……あれ?」


どうやらユニークモンスターの定義は無さそうだ。


「64番でお待ちの方どうぞ。」


「は~い♪ 行くよ。イベリコ。」


「は~い♪」


モモに抱えられて向かう受付には犬耳を生やしたお姉さんがいた。


もふりたい…♪ 座っているから身長は分からないが、歳は20代半ばかな…ナチュラルショートの青蒼い髪が綺麗だな~♪ 体つきはしっかりしてて、アウトドア派に見える。


総合すると………明るく元気なお姉さん! 園児と一緒に鬼ごっこをする絵が浮かぶ。


「お帰りなさい。モモちゃん……ところで、そのモンスターは何?」


「テイムしたユニークモンスターのイベリコよ♪」


カウンターに俺を置いてくれたので会釈する。


「はじめまして。俺、イベリコ♪ 不思議なブタさんです。悪いモンスターじゃないから怖がらないでね♪」


「ずっと見てたけど賢い子ね。私はイザベラよ。ようこそ冒険者ギルドへ♪ 触ってもいい?」


うずうずっ吹き出しがイザベラさののバックに見える。分かりやすい…


「脂肪の塊ですが、お好きどうぞ。あっ! 地面を歩いたので、お膝に乗せると汚れちゃいますよ!」


気にしないで俺をぽよぽよ♪ と頬に手を添えて感触を楽しんでいる。


「あらあら!? ふふふ♪大丈夫よ。ぽよぽよしてて温かいわね~♪ モモちゃん、この子をパーティー申請するのね? それとクエストの方……ダメだった?」


気を使って遠慮気味に聞いてあげる。モモはまだ

13歳の子供だもんな。その辺りの扱いを心得ている人で良かった。


偉いよね。俺の13歳の頃と比べて雲泥の差だ。


「ふっふつふ~♪ じゃじゃ~ん♪ セーウルフの尻尾♪」


左手を腰に当て、右手にはセーウルフの尻尾を高々と掲げ、みんなに見えるようにかざす。


「なっ……なんだと!!! あのモモが任務を達成だと!!!」


「明日はドラゴンが来るんじゃねえか?」


「いや! 邪神の復活だ!」


偉い言われようである。モモ……一体今まで何をして来たの?


「ねぇ、モモちゃん。お姉さんの目を見なさい…………モモちゃんがセーウルフを狩ったの?」


半目でじー♪ っと見つめる視線にモモは沈黙を貫くが…


「…………………………………チラッ♪」


イザベラさんの膝に乗っている俺を見て、察したのか、仕方ないわね♪ と言った感じで肩をすくめると受理してくれた。


「……まあいいでしょ。横取りや規約に違反してないのなら特に言うことはありません。だけど、次からはちゃんと報告しようね。」


「……はぁ~い。」


軽く注意を受けてしまったが、胸に手を当てて撫で下ろしている。


「モモ、がんば!」


「ありがとう……イベリコ♪」


そうそう、そんな顔はモモには似合わない。


「じゃあ、クエストの報酬の大銅貨5枚ね。素材もあるなら出して。すぐに換金して上げるから。」


「イベリコお願い。」


「は~い♪ イザベラさん、ここの上に出していいの?」


「ええ………まさか……」


頭の中の表示窓を開いて、ブタ小屋からセーウルフの素材分けした牙やら皮を受付のカウンターに出す。


「おっおい………」


「空間魔法だと!?」


ざわつく室内。俺とモモだけ??? である。冒険者に取って荷物とは極力減らすに越したことがないものである。


例え、戦闘面での力は無くとも荷物を大量に運べる空間魔術師やアイテム所持者は高ランクパーティーから引く手あまたである。


「イベリコのそれって魔法なの?」


「なんでしょ?ブタだからよく分かりません。」


ガチで分からないよ……駄神に一番問い詰めたいのは俺だ。


「やったじゃないモモちゃん♪レアチート持ちのモンスターをテイムしたなんて…モモちゃんには丁度バランスが取れていいと思うわ。」


「イザベラさん酷い!!いいもんいいもん……いつか有名になって見返してやるんだから…」


出来れば誉めて伸ばしてあげたいが、世界がそれを許さないようだ…


「(違った意味でなら有名なんだけどね。)……まあまあ、いじけないで…これで全部?」


豚に真珠。あれがあったな!


「まだあるっす♪イザベラさん、手を出してほしいです。」


「ええ……こうでいい?」


両手で水を掬うみたいに合わせ、構えた手のひらの上に真珠が2つ現れ転がる。


「ついでにそれも、換金お願いします♪」


「なっ!?ちょっと待って!!レドリックさん、来て下さい!」


ギルドの人がこちらを窺っていたこともあり、呼ばれて直ぐにやって来たレドリックさん。


彼は40代位の細マッチョな上に、ダンディで渋めな角刈りの黒髪だ……そういう趣味の人なら一発で堕ちそうなほどレベルが高い。


「そういえば、イベリコ言ってたわね。これが…」


「何やら楽しそうだがどうした?……ほう♪見事な真珠じゃないか。どれ鑑定しよう。」


真珠をルーペのような物で調べた結果…


「大銀貨……いや、金貨1枚はいくな。2つ合わせて金貨2枚だが、商人の所に持って行けば金貨3枚の値はつくと思うぞ。」


また出せる物だしいいでしょ。それにギルドに恩を売る意味でも、モモの為に売ってしまおう。


「構わないです。ギルドに売ります。これからもお世話になりますから♪だけど、いいクエストをモモに紹介して下さいね♪」


「ちょっと!イベリコ!」


遠回しに言ってとぼけられても嫌だからハッキリと言った。ブタだし、このキャラを使わない手はない。


「うはははは♪ その程度でいいなら安いもんだ。イザベラよ。そういうわけだ。買い取りの手続きだ。イベリコ君、私はレドリック、よろしくな。ここのサブマスターだ。マスターは今不在だから後日紹介するよ、またおいで。じゃあ~私は失礼するよ。」


「ありがとうございました。ばいば~い♪」


頭を優しく一撫でしてからまた戻ってしまった。そして、テーブルには真珠代の金貨が、それとクエスト任務達成の大銅貨5枚とセーウルフの皮と牙の同じく大銅貨5枚の合わせて小銀貨1枚の計金貨2枚と小銀貨1枚が払い出された。


「はい♪ モモにあげる♪ ブタが金貨を持っていても宝の持ち腐れだからね♪」


鼻で器用に金貨に吸い付き、モモの手のひらに渡すとモモは狼狽える。


「あわわわわ………どどどどどどうしようイベリコ!こんな大金、持った事がないよ。」


「あらら~……モモちゃん落ち着こうね。あと、盗まれないようにしっかりとしまいなさい。」


「はい!……イベリコ、本当にいいの?」


不安なのか胸元に手を置くモモ。そんなことを聞かなくても受け取ってくれる関係を築いていこう。


「おーけー♪モモは俺の仲間だ♪」


「ありがとうイベリコ♪ これで孤児院に一杯寄付出来るよ♪」


装備や美味しい物じゃなくて寄付か♪ モモが相棒で良かった♪


「なら、早速行こう!イザベラさん!パーティー申請早く早く!」


「あはははは♪ 分かったわ。モモちゃん、これに記入して。で、その間に私はイベリコを調べる♪」


「いやん♪ イザベラさんってば大胆ですね。」


俺を掴んで裏っ返したり、手で挟んでむにむにしたり、頬に手を添えて形を変えて楽しんでいる。


「私ってば、受けより攻め専門なの♪」


ペロリと舌舐めずりを見せ、ドキッ♪ とさせる。


「まじっすか!? でも、モモの前だからその辺で…♪」


「あははは♪ ユニークモンスターでも君は特に変わっているわ♪」


「恐縮です♪」


軽い冗談を言いあえるのっていいな♪ ブタでもこれなら上手くやっていけそうだ。


「むーー書けたわよ! 二人でいちゃいちゃしちゃダメ!イベリコは私のペッ………仲間なんだから。」


………………その続きは何……うん、分かっているさ………しくしくしく♪


「今あんた……」


「非常食じゃない分……まだマシです。しくしくしく♪」


「んっんん♪ じゃあ、ここに書いたので失礼します。行くよイベリコ!」


「あっ! ばいば~い♪」


逃げるように出ていくモモを俺は追い駆ける。


「転ばないように気を付けるのよ~♪ ……変なパーティーが出来たわね。パーティー名は………ハッピーエンカウンターね。ふふふ♪ ……65番でお待ちのお方どうぞ♪」


手に残るぷにぷに♪ な感触を思い出しながら、つい、笑顔が溢れる彼女であった。









孤児院に向かう途中の路地で四人の冒険者に囲まれる。人が往来する中、人目も憚らず堂々としたもんだ。


「よぉ~♪ モモ、いいモンスターを捕まえたじゃねぇかよ。お前には勿体ないから俺らがもらってやるよ♪」


道理が通じないバカ発見……


「モモ、この世紀末ばりのバカでヒャッハーな連中は何?」


「ただのゴミよゴミ。そこを退きなさいよ汚物。」


本当にモモはゴミを見るような目で男達を見る。


「調子に乗んなよモモ! 先輩に向かってその口の聞き方はなんだ!」


「はぁ~? 孤児院の姐さんを犯そうとして、返り討ちにあって、罰に発情した犬にヒャッハーされたお馬鹿さんが何言ってるのかしら♪ あはははは♪」


「ぶははははは♪ モモ! それ本当なの?」


ワンダフルな光景だな!


「ええ♪ それで孤児院から逃げ出した前代未門のバカ。バカ過ぎて通りの人も相手にしないのよ、この四人の場合……」


落ちぶれてんな……救いようのないバカか……


「てめぇ!!! 覚悟出来てんだろうな!!!」


「バカにつける薬はないってホントね。今度騒ぎを起こせば領主様が黙ってないわよ?」


バカだから懲りないんだろうけど、モモの顔はマジだ。


「うっせんだよ!!! 領主がなんだってんだ!!! あんなボンボンに舐められる俺らじゃねぇんだよ!」


あっ! ……通行人が急に止まった。顔つきがさっきとまるで違う。これは一体…


「バカっ!!!! ……ホントにバカだわあんた達……もう、どうなっても知らないからね……」


「うっせえ!! 殺ってやる! 覚悟しろモモ! おめぇは……」


このバカマジだ!


「吹っ飛べ!」


腰に下げた剣を抜いたので、手加減してオリハルコンの家を出し、軽く空へ舞い上がらせた。なのでもちろん今は地面に激突して気絶している。


「おいおいなんだあれ? ……」


「土魔法?いやなんだ? ……」


「すっげえ~~……」


この騒ぎを聞き付けたのか、馬に乗った自警団の人達がやって来る。そして、馬から降りるとこちらに寄ってくる。


「お疲れ様です。マキさん……」


気軽に挨拶をするモモ。相手は心配した様子だ。その関係は姉妹の様に見える。


「モモ! 怪我なかったか?この四バカが公衆の面前でとんでもない事を口走ったって聞いてな。ホントなのか?」


「……うん。流石に庇いきれない。どうしようもないバカだったけど……昔はあんなんじゃなかったのに……」


二人は地面に落ちている剣や、周りの通行人の数を見て諦めた顔をする。


「……お前ら、周りの者から事情聴取したら……私の所に来い。バカが…奴隷落ち確定だ。強盗に殺人未遂、止めに領主様の悪口を言う……領主様が王の弟だって知ってるだろうが……」


奴隷と言う単語に俺もバカの行く先が予想出来た。二度と日を見ることはないんだろうな……


自警団の聞き込みは直ぐに終わったようだ。こちらに駆け寄りマキさんの前に並ぶ。


「マキ様。周りの者の話を聞く限りでは……モモちゃんに対しての罪もそうですが、これだけ多くの証言がある以上、王族を罵った罪はどうしようもありません。……心中お察しします。では、我らは捕らえて連れて行きます。マキ様はモモちゃんについてあげて下さい。」


「ここで楽にしてやりたいが……分かった。連れて行け。」


「「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」」


動かない四バカを縄で縛りつけると、彼らはマキさんを残してどこかに行ってしまった。


目と目が合う。俺とマキさんが。俺のターンがやっと来たか。


「ところでモモ……じーーーーーーーーーー♪ ツンツン♪」


「いやん♪」


「喋った!?」


「はじめまして。俺、イベリコ♪ 不思議なブタさんです。悪いモンスターじゃないから怖がらないでね♪」


「私の相棒よ♪」


鼻高々なモモ。照れるな、なんか♪


「ユニークモンスターか!? へぇ~♪ ……お前、何が出来るんだ?」


「そこの家を出したりって、消さないと……えいっ♪」


「あっ! 消えた……イベリコのチートか!?」


瞬時に消えたオリハルコンのお家。周りにいた人達も色々と調べていたようだ。


「色々出来ますが美味しいおダシが取れたり、ドバーーー♪ ……こんな風にお湯を出せます♪」


「あちっ……へぇ~♪ 面白いな。もう一回出してくれよ♪」


「ここじゃあ、邪魔になるので、何処か広い場所があればいいですよ。」


「なら、マキさんも久しぶりに孤児院に行かない?四バカじゃないけど、警護してほしいな~♪」


「そういう事ならサボ……仕事だからついて行くか。」


「今サボるって言いかけたよね……」


「細かい事は気にするな。ほれ、あたいが連れってやるから馬に乗りな。あんたはあたいの服の中に入ってな♪」


「ちょ!? マキさん!!! レディーがそんな事したらダメだよ!!」


「あのな~……ブタに触られても何ともないっつうの……」


「良かったねイベリコ♪」


「大人しくしてまふ……♪」


パカパカと揺られながら孤児院に向かう。マキさんの服の中は……天国でした♪

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