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4話



なし崩し的にリーダーに成ってしまったことに思うところが無い訳ではないが、まあ成るようになるだろうと落胆的に考えた。

そして、なんちゃってリーダーとしての記念すべき一言目を発した。


「とりあえず、あの三人をどうにか拘束しよう。流石に、ずっと彼らに三人の拘束して貰うのは可哀相だ。」


これが俺のリーダーとしての最初の発言だった。

もうちょっと何か有るだろうとは自分でも思うが、正直さっきから、あの人達を放置し過ぎて気になってたのだからしょうがない。


「なにか縛れる物は無いか?」


俺がそういうと、一人の男性が


「縛れる訳ではないが、拘束は出来るぜ。しかも大量にある」


そういって、ある物を指差す。

その指先にある物はガムテープだった。


「成る程。ガムテープか。良し!皆、まず、この西ホールにあるガムテープを集めてくれ」


その言葉を聴き、全員が動き出す。


 5分後、俺の前には総計100個を超えるガムテープの山が出来上がっていた。

 そして、それらを使い三人と心臓に穴が開いたスタッフを芋虫状に拘束する事に成功した。


そして、三人の拘束から開放された人達も交えての会議が始まった。


「まず、一応リーダーさせて貰っています、東郷直樹といいます。よろしくお願いします。さて、今この日本は緊急事態にあるようです。皆さんもテレビで見たとおりです。」


この言葉で何人かが俯く。


「しかし、今私達がいるこのビックサイトもどうのような状況か分かっていません。……本来なら、こんなことは警察の仕事なのかもしれません。しかし、警察、消防にも連絡が付かない今。自分達で安全を確保するしかありません」


 ここで、一拍置き全員を見回すと殆どの人が何かを決意したような目をしているのが分かった。


「よって、まず最初にこのビックサイトを探索したいと思います。道中はこの人達のような……えーと……」


改めて考えると彼らは何と呼べば言いのだろう。

安直にゾンビと呼ぶのも……

そんな事を考えていると周囲から


「ゾンビでいいんじゃない?」


「ゾンビ以外無いだろう」


「ゾンビだな」


といった声が溢れ。

彼らの通称はゾンビに決定した。


「え~彼らゾンビの襲来が予想されます。……やっぱソンビって安直じゃない?」


俺のその言葉に笑いが起こる。


「勿論、襲来なんぞ、起こらない可能性もあります。しかし、襲われたとき、無手では何かと不便です。何か彼らを抑えられる物があるといいのですが、何かありますか」


俺がそう言うとスタッフの一人が手を上げて言った。


「私、スタッフの木下と言います。不審者用に各ホール三つずつ刺又が常備されているはずです。」


『おお~』


その言葉に周囲がどよめく。


「決まりですね。刺又を武器に探索しましょう。まず、近場からということで、この西館の2階、企業ブースから見て回ろうと思います。」


その言葉で次の行動が決定された。



 企業ブース、これは同人誌即売会に並ぶコッミケットマーケット、コミマのメインの一つである。

西館の2階を貸しきって行われるこれはかなりの規模で前日でもかなりの人が前日準備として会場入りしているはずであった。


「……いやに静かですね。木下さん。今日の前日準備って企業の方は余り人はいらっしゃらないんでしたっけ」


俺はコミマ準備会のスタッフ木下に聞く。


「いえ、前日ですから、最低50人はいるって聞いていたんですが……」


その言葉に緊張を全員が覚える。


そうしているうちに、材木や、ブース組み立て用の鉄パイプ等が散乱している企業ブースに足を踏み入れた。


入り口から少し進むとそこには10人程のゾンビが佇んでいた。


それを見た瞬間、俺は叫んだ。


「一時撤退!!」





「リーダー、何で撤退なんすか?」


一人が声を上げる。


「いや、だって刺又は6個しか無いじゃないですか」


そう、刺又は西1ホールに3個、西2ホールに3個の計6個しか無いのだ。

例えゾンビ1体に1つ使っても4体は無手で相手をしなければならない事になる。幼稚園児でもできる引き算である。


『あ』


俺がそう言うと皆が今気づいたとばかりに声を上げる。


「やばいじゃん。どうすんの」


「ゾンビに無手はな……」


「空手3段の俺の拳が火を噴くぜ!!」


一部を除いてやはり難色を示す声が上がる。


そうこうして皆で考えている間に一つの案が出る


「企業ブースに散乱している鉄パイプ全員が持てばいいんじゃない?」


『それだ!!』




画して、企業ブース制圧作戦第二段が決行される。


全員が鉄パイプを持った姿。

一歩間違えると一昔前の不良のような感じである。


そうして、どこか緊張感のないまま初めてのゾンビとの本格的な戦闘に突入した。

刺又を持っている人間は刺又でゾンビを押さえ込み、鉄パイプや木材をもっている人間はそれでゾンビの足を狙い転ばせ、ガムテープで拘束していく。


初めての戦闘はこうして約5分程で蹴りがついた。


「よし、我々の勝利だ!!」


俺のその言葉とともに、味方から歓声が上がる。


「このまま探索を続行すr……」


続きを言おうとした時、目の前に新たなゾンビの集団が現れた。


「……総員戦闘準備」


そして、さらに5分後。


「我々の勝利……ではなかったね~~~総員(以下略)」


これを後2回程繰り返すと漸くゾンビの襲撃は収まった


「今度こそ我々の勝利だ!!……にしても全部で42体かゾンビ発生の正確な時刻は分からないが、かなりペースが速いな。」


実際、最初に吉田さん達のゾンビ姿を見てから約1時間程しか経ってないことから考えると思ったより事態は深刻かもしれない。


「よし!!慎重にこの階の探索を開始する。5人で1グループ。絶対に1人にはなるな!!第一目標は生存者。第二目標はまだ残っているゾンビだ。物資は最後に回す。あくまで、この西館の安全確保が優先だ!!」


「ういーす」


「了解」


「俺の拳が火を噴くぜ」


 俺の言葉に各自が了承の意を示す。

 ……さっきから、一人武闘派がいるようだが大丈夫だろうか?


「10分後にこの場所に再集合とする。解散!!」


 そうして、遂に企業ブースの本格的な探索が開始された。







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