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超心理的青春  作者: ryouka
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その1 始まる以前

 



 高校に入学してからというもの、ろくなことなんてない。何が有名進学校だ。裏を開けてみればこの通り、命の取引を繰り返す日々だ。

 今だってこんなこと考えてる場合じゃない、鳴り止まない銃声、張り詰めた空気、弾薬の匂い。ここにいると、この国が平和を唱えてることが嘘のように思えてくる。もうすぐ僕は死ぬのかもしれない、天照もはぐれてしまったし、他のみんなはどうなったか知らない。探そうと思えば超心理の加護で見つけれるんだろうけど、もう疲れたよ。この1年、僕は何をしてきたんだろう。死ぬ前にそれくらいは知りたいよ。

 那実、お前ならこの状況どうする?

 僕、伊佐薙イサナギはもうすぐ高校生になる。

 現在、中学3年生で、まさに今、高校生になるために受験校へ双子の兄と向かっている。

 その学校は日本でも有名進学校で、普通に考えれば僕たちが受験するようなところではなかった。


 1ヵ月前のある日、封筒が届いた。送り主は「京都文化芸能大学付属高校」文章の内容はこんな感じだった。

 「あなたを『特別能力開発学科』へと推薦したいと考えています。もし進学校を決定していないのであればこちらにご連絡ください」とのこと。

 いきなりのことだったので、わけがわからず、双子の兄である那実(ナミ)に相談することにした。名前は女っぽいけど、どこから見ても男である。外見内面どちらから見ても。双子の弟の僕が言うんだから間違いない。

 「那実、ちょっと相談があるんやけど」僕がそういうと、いつもより速く反応して、「俺もや、ちょっと聞いてくれへん?」

 那実から相談とは珍しいことだ、いったいどういう相談? 恋愛方面は勘弁で。

 「薙に恋話しても無駄やろ」悔しいけどその通り。

 「もっと別なことや・・・進路のこと」もしかして、那実にも同じ封筒が届いたのか?

 「京都文芸高から封筒がきたんやけど」やっぱり。

 どういう偶然だろう、話にしては出来過ぎてるし。

 「おかしいな、僕にも届いたよ。その封筒」

 「そりゃびっくりだ。で、どうする?」那実はどうするんだ?

 「俺は一度高校に連絡するべきだと思うけどな」まぁ一般論だね

 「で、どういうつもりか聞かなあかん」

 早速を電話するべきだと思い、部屋に取りに行こうと思うと、那実がもう通話中だった。相変わらず行動が早い。僕が遅いだけか?

 「もしもし、京都文化芸能大学付属高校でお間違いないでしょうか? ハイ、特別能力開発学科について封筒が届いた伊佐那実といいます。なぜ僕に推薦の封筒を送ってきたのか気になりまして……ハイ、………ハイ」

 どうしたんだろ? さっきから「ハイ」しか言ってない。

 「ちょっと待っていただけますか? ……電話中や黙れ!」

 そんなに怒らなくてもいいだろ。早く通話が終わればいいのに。内容が気になって仕方ない。

 「わかりました。そちらから伺っていただけるならうれしいことです。では後日、ハイ、お手数かけました」

 那実の中途半端に丁寧な敬語がやっと終わった。こいつがこんな話し方すると虫唾が走る、半音高い声も。

 「今度の土曜日、家まで来てくれるやって」

 「どういうこと?」

 「俺が、詳しいことを聞かせてくれ言うたら、電話ではなんなのでこちらから伺わせてもらいますやて。親にも話があるようやし、それが手っ取り早いと思って。これでええやろ?」

 確かに来てくれるなら、それにこしたことはないけど。

 「お母さんに言わなあかんのちゃうの」

 「そうやな、土曜日に推薦校の先生来るから空けとけってな。俺が言うといたるわ」そう言うと、封筒を持って、うれしそうに駆け出しながら、母のいるキッチンへと向かって行った。

 何故、あんなにも楽天的なんだろう? 裏があるようにしか僕には思えなかった。

 「京都文化芸能大学付属高校」略して「京都文芸高」は日本でも指折りの進学校で、毎年、東大や阪大、京大など、偏差値の高い大学にたくさんの生徒が進学するような高校である。そのような高校に何故、僕のような特別勉強が出来るでもない、運動で目立った活躍もない、芸術の才能に秀でたわけではない、のに、どうして推薦が来たのだろう。

 特別なことは、人とは少し違う境遇で育ってきた、ということだけだ。


 しばらくして、お母さんが慌しくノックし、返事をする間も無くドアを開いた。

 「あんた京都文芸高から推薦って凄いやないの!! 今日はご馳走や」そう言うとすぐドアを閉め、一目散で買い物へ出かけていった。

 母も浮かれ気味のようだ。那実も受験勉強をしないで高校にいけるので、上機嫌である。僕はというと少々不安だ。上手い話には裏がある、そういうことだ。

 回転寿司にしても安さの理由は奇形魚やその類であり、安い野菜のほとんどが中国産だ。何事もなければそれで良いのだけど・・・。

 そう思いながらも、久々のご馳走に舌と腹を満たしたのは事実だった。


 けれどこのときはまだ思いもよらなかった、そのような類の学校が本当に存在するということに。

「始まる以前」を読んでいただきありがとうございます。

第一章は伊佐兄弟の過去のことを重点に話しを進めますので、知りたくなければ第二章(その8)に飛んでいただいてもらっても結構です。気になればまた見返してもらえればそれでうれしいです。


もしよろしければ、小説の評価をいただけるとうれしいです、どんな適当な言葉でも良いですので、それがあたしのやる気にも繋がりますので。おねがいします

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