表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蜥蜴の忠誠、貴方に誓う。  作者: 岩月クロ
第2章 騎士団 入団編
25/87

25

 ターゲットが切り替わった。

 そう判断した瞬間、ルドヴィーコは横に跳躍していた。他の面々も、攻撃に対処するために動く。それらの残像を、大型魔物が長い手で引き裂いた。

 着地と同時に地面を転がりながら体勢を整える。肩の蜥蜴も無事に引っ付いている。

 手を振り回して暴れている魔物の様子を確認しながら、二班の姿を探す。

 視界は依然として悪い。今は無理に対峙するよりも、無事に生きて帰ることを重視しなければ。

 不定期に止む砂嵐のお陰で、各団員の大体の位置は把握できた。負傷者一名は、既に戦線離脱している。ジェラルドも無事だ。撤退の合図を見たルドヴィーコは、魔物の動きに注意しながら、魔物の背後に回り込み、上手く移動する。


 よし、と心の中で呟いた時だった。


 恐怖に押し負けたのか。それとも、好機と見たのか。

 騎士の一人が、魔物に剣を振り下ろした。

 斬りつけられた魔物は奇怪な悲鳴を上げて、両腕を高速に振り回し始めた。攻撃を仕掛けた騎士の身体が吹っ飛ぶ。

「くそったれ!」

 誰かが叫んだ。仕掛けた騎士は、日頃の鍛錬のお陰か、辛うじて受け身を取れたようだ。その身体を別の者が引っ張り起こし、無理に立たせる。魔物は、自分と距離が空いた人間を追わずにぐるりと視線を彷徨わせると、最も近くにいたジェラルドに目をつけた。

 一気に距離を詰めた上で振り下ろされた魔物の腕を、ジェラルドが寸でのところで回避する。直後に追撃が迫った。もう片方の腕が、彼を目掛けて落ちていく。剣で防御体勢を取ったジェラルドに、勢いのある一撃が入る。凄まじい音がして──


「なっ……!?」


 ──ジェラルドの足元が崩れた。

 元々脆くなっていたところを、何度も叩かれたため、耐えられなかったのだろう。

 それにしたって、このタイミングはない。誰もがそう思った。


 この下は、おそらく坑道──魔物の巣窟だ。

 魔物の目が、次の獲物(ルドヴィーコ)を捉えた。

「ルドヴィーコ!」

 クルトの声がした。撤退を命じられる、と直感する。

 だから(・・・)、その命令を聞き終える前に、ルドヴィーコは行動した。

 横に回転する腕をあえて受け止め、望む方向へ飛ばされる。赤い目とかち合った。不気味な赤い目。くそったれ、と言いたい気持ちは共感できる。倒せないことが無念だ。

 そう思いながら、ルドヴィーコは自ら大きく空いた穴に飛び込んだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 地上から地下へは、思ったほどの距離は無かった。

 着地と同時に、横に跳ぶ。……どうやら、落ちた瞬間に魔物と遭遇、という事態は避けられたようだ。

「……お前、なんで」

 ジェラルドが、ルドヴィーコの姿を認め、目を見開いた。

下手を打って(・・・・・・)俺も落ちた。今年の新人はつくづくついてないらしい」

 に、と笑ったのは、マスクごしでも分かったようだ。仕方なさそうに肩を竦めたジェラルドが、「無事に戻れた暁には、二人揃って罰が科せられるだろうな。便所掃除の追加か?」と嫌そうに顔を顰めた。

 この状況でそれくらいで済んだら儲け物だろうな、とラウラは周囲を気にしながら考える。ラウラの張った警戒網には、至る所で赤信号が点滅している。本来の姿であれば強行突破ハイ終了! と相成るが、そうもいかない。


 気を緩めるなよ、と一声鳴けば、ルドヴィーコが周囲を見渡す。今のところ、視界に映る範囲では魔物はいない。

 坑道では砂嵐の心配はしなくて良いが、いつ外に出てもいいように、着用したままの方が良いだろう。そうでなくとも、魔物が何を吐き出すか知れない。防具は必要だ。


「この坑道に巣食う魔物って、主になんだったか……」

 講習で聞いたような気がする、と頭を捻るルドヴィーコに、大して気負ってもいなさそうなジェラルドが、視線ひとつ動かさないまま答えた。

「哺乳類よりも、爬虫類が多そうだな」

 完全に自分の中のイメージを話しただけのジェラルドを一瞥する。

「でも、さっきの大型魔物は、哺乳類からの変体っぽかったよな。皮質的に」

 剣で腕を受け止めた時のことを思い出す。爬虫類の硬い感触では無かった。


 魔物は、動物がなんらかの理由で変異したものだと言われている。悪感情に乗っ取られた状態だ、と。個体としての意識があるのか、もはや怪しい。

 本当か嘘かは分からない。あくまで、学校の授業ではそう習う、というレベルだ。


 しかしそれならそれで、少し不思議だ。ああいう生き物は、魔界には基本的にいないのである。魔物を利用(しえき)している屑は時折いるが。

 まあ、悪感情で魔物が生まれるなら、今頃あちらの世界は大変なことになっている。


 ──それとも、人間界が内包する欲望と、魔界のそれは、似て非なるものなのか。


「さて、どうする。この穴を登るか、それとも別の出口に向かうか」

 大型魔物は、地上でドゴドゴと大きな足音は立てているものの、ルドヴィーコたちを追って坑道に入ってくる気配は無い──あるいは、単にあの巨体では穴を通れないだけかもしれないが──。

 逆に真上でこれだけ暴れているからこそ、この穴の付近には魔物がいないのかもしれない。


 地下に潜っていったものが自分の獲物だという認識はあるのか、穴の周辺から離れる様子は無かった。

 アレが徘徊するところに向かうことは、自殺行為だろう。班で立ち向かうならばまだしも、ここにいるのはあくまで新人二人だ。

 かといって、すぐに救援が来る可能性も低い。隊長は冷静だ。おそらく“予定通り”撤退をしている。──非情なのではなく、あくまでそれが最善と判断したのだ。

 仲間を増やし、準備を整えて戻ってくるには、時間が掛かる。そもそも救援が来るかどうかも、分からない。

 どうにか、自力で対応しなければならない。


 果たして、地上に出る、という選択肢は有効か、無効か。

 最終判断のために、試しにジェラルドが穴から射している光に躍り出ると、穴の上が騒がしくなった。

 じ、と上を見上げて立っていた彼であったが、急に後ろに飛び下がった。それまで立っていた場所に、粘着性のあるとした“何か”がべちゃりと落ちた。シュウシュウと煙を上げている。

 危なげなく着地したジェラルドが、「上はしばらく無理そうだぞ」と言った。「そうみたいだな」とルドヴィーコも返した。ラウラも同感だ。

 生きたまま溶かされるのは、嫌だ。


 とすれば、取れる手段はひとつだった。


「蜥蜴っ子、魔物が少ない方向、分かるか?」

 訊ねられ、グルル、と答える。

 もう行くのか、とルドヴィーコの目を見ると、彼はその思いが分かったように「行こう。暗くなる前にここを抜けたい」と告げた。

 服を噛み、進む方向を指示する。

 第一陣は小さい魔獣の群れだった。ルドヴィーコとジェラルドは隣り合わせになりながら、剣で対抗する。魔物たちは中間期ということもあり、動きが若干鈍い。これが満月であったなら、こう上手くはいかなかっただろう。

 走り抜けながらの、第二陣の到来。同じ生き物の群れだ。こちらも同じように対応し、なんとか撒いた。


 近くには大型魔物の気配がするが、道さえ間違えなければ、鉢合わせることは無いだろう。

 ラウラは細心の注意を払いながら、ルドヴィーコたちを誘導していった。




改めて読み直すと、なんか文章が纏まっていない……。

が、発熱で頭が働かないので、このままで。

申し訳ないです。

流れは変わらないですが、地の文、後日修正したいですー。


★同日21時

修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ