劣等感
文学とは違うかもしれませんが、ご容赦ください。
普段は馬鹿な小説を書いています。
勢いで書いたものなので結構おかしいかもしれません。
劣等感とは、落ちこぼれの抱く上への羨望である。
憧れ、妬み、羨ましがる。
優秀だやれ天才などともてはやす裏では、人は劣等感を抱く。
それは、いつしか誰だって抱くものであり、そして、それを持たない人間などいない。
例えば、この僕。僕の両親はできのいい人間である。
才色兼備で、文武両道、多少ガサツなものの家事だってできる。
まさに、なんだかんだで完璧に近い、いや、完璧と言ってもいいだろう。
時に優しく時に厳しい。
そんな両親は、確かにいい。ほかの子だってそういうだろう。だけど、僕は違う。
僕はどうしようもなく……両親が大好きで、そして何よりも嫌いだ。
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僕という存在が世間に生まれて十数年。
高校に入学して、新たに学校生活を謳歌しようとせんとす新学年だ。地元のそこそこの高校に通っている。そんな周りの保護者たちは僕のことをもてはやすが、僕から見てこの高校はせいぜい全国偏差値に毛が生えた程度の学力しかない。
だが、それよりも上となると、普通に頭がいい。
つまり、僕は中途半端だ。
中途半端でいい加減。自分勝手でわがまま。
そんなふうに思っている。僕は、やりたいことの才能がなくて、やりたくないことの才能がある……のではないかとよく見ている。僕の将来の夢は、人の感情を動かしたいという欲求から小説家や漫画家。そんなものを目指していた時期があった。
小説の投稿サイトにさらしても、残るのはただのアクセス数。ポイントは伸びない。普通に伸びていないと謙遜する作家よりも伸びていない。
世の中不公平だ。
そして僕は、ほかの作家を嫉妬した。
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そんな僕に降りかかった火の粉は、やはり両親だった。僕は両親がうらやましくて、同時に憎たらしい。
「また、こんな成績とって!」
両親の怒鳴り声が響く。
僕の中間テストの点が悪かったことを怒っているのだ。
「だからあれほど勉強しなさいと言ったでしょ!?」
その話は中学生の頃化から耳にタコができるほど聞いた。そんな心無い言葉が余計に僕のやる気をそいでいくとも知らずに。そして、一番嫌なのが……。
「母さんたちが高校生の時はこんなことはなかったわよ!」
僕が両親を一番疎ましく思う理由は、これだ。
過去のことを話す時だ。
父さんと母さんは、いわゆるできた子だった。僕はそれが不思議でならなった。母さんは『一生懸命頑張って』いたそうだ。数学の偏差値は高く、ほかの教科の偏差値も高かった。
そんな母さんは、僕の自慢の母であると同時に僕の劣等感を生み出していた。
父さんもそうだった。
父さんはむしろ僕に近い側だと思っていた。
高校ではそこまで頭が良くなかったらしく赤点をよくとっていたらしい。だが、それが僕よりも偏差値のいい高校でなければよかった。やはり父さんもできた子だったのだ。
そして、『一生懸命』勉強して、いい大学に入ったらしい。
一生懸命ってなんなんだ?
そんな疑問が僕の中によぎる。
頑張るってなんなんだ?
今僕が将来のためにしていることは何だというのか。
もう、何が何だかわからない。
「また、点の悪い点数を取ったのか。大学で受かれば問題ないだろ? なら、勉強しかないな」
軽々しく、勉強を頑張れだなんて言わないでほしい。
「母さんが高校生のときはね。それはもう勉強して、偏差値を上げたのよ」
軽々しく、僕の道を示さないでほしい。
「高校生ならやっぱりバイトしないとね。お小遣いは自分で稼いでね。半分は貯金しなさいよ」
勝手に僕のことを決めないでほしい。
「もう、嫌だ」
その言葉はどこから漏れただろう。
口か? 心か?
どこだっていい。今の僕には、この劣等感を、ストレスを晴らす方法なんてどこにもない。
「ふざけんなよ……」
「何? 言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」
「ふざけんなよ!」
「あなたの将来のためを思って……」
「もううんざりなんだよ! 母さんの自慢話も、父さんの頑張った話ももう聞きたくない!」
正確には両親の話は中学の時面白半分で聞いたことだった。
だが、その時点でもう、だめだった。高校生になった今、高校時代の両親と比べる対象へと追いついてしまったのだ。
すぐれていた両親と出来損ないの自分を比べるための状況が整ってしまった。
「僕は母さんたちじゃないんだ! 僕に軽々しく言わないでよ! 頑張るってなんだよ! 一生懸命ってなんだよ! 僕が将来の夢に頑張ってることは『頑張ってる』じゃないのかよ! 『一生懸命』じゃないのかよ!」
一気に叫ぶように怒鳴る。
今までの僕は否定されていたのか。
そう思ってしまうほどに劣等感の下にいた。できる両親の出来損ないの息子は、常に嫌な思いをするのか。みんなに話すと、僕と比べる。両親も僕と比べる。
もう嫌だ。何もしたくない。
もう寝たい。誰とも話したくない。
世界は僕の敵だ。できた両親と比べて僕を笑うつもりなのだ。
「うちの高校はバイト禁止だって言ってるだろ!」
「うちの高校だってそうだったわよ!」
「なら、自分が働けよ! できた大人なんだからさぞ給料もいいだろうな! 僕なんかと違って!」
「いいわ。出ていきなさい。そんなに家が嫌なら出ていきなさい」
「ああ、そうさせてもらうね。できた親がいなくなって落ちるところまで落ちてやる」
そういって勢いのままに家を飛び出した。
携帯も持ち出したが両親から電話がかかることもなく、ただ、一人で町を歩いていた。
誰かの家に泊めてもらおうにも迷惑だろうし、僕にはそんな友達もいない。
どこか、雨風しのげる場所で寝ようと思っていたとき。
「君、学生だね? ちょっといいかな?」
警察に捕まってしまった。
今は深夜十一時。こんな時間に子供が出歩いていたら警察が出てくるだろう。
「なんですか?」
「少し交番まで来てもらえるかな?」
「……はい」
だが、あんなことを言っておきながらどこか両親を本気で嫌いになれないのはなぜだろう。
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結局両親に電話がいった。あの両親はどうやら心配はしていたものの、余計な手出しは無用と思ったらしい。
「もう、こんな時間に外を出歩いちゃいけないよ?」
「……はい。すいませんでした」
両親が警察に頭を下げているが、両親も僕もお互いに目を合わせようとしなかった。
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車の中で母さんは言った。
「辛かったの?」
「……言いたいこと言ったらすっきりしたよ。でも、やっぱりいろいろと無理そう」
「無理そうって何よ?」
吹き出しながら母は言った。
「よくわからないけど、そうなんだよ」
「はいはい。もう、心配させないでね」
「……じゃあ僕に威圧しないでね」
「善処するわ」
「……なら僕も頑張ってみるよ」
そういってこの会話はそこで途切れた。
後は無言で家に車が向っていった。
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次の日。
家に帰って、いつも通りにくつろいでいると、
「バイトしないと小遣いないわよ」
「ああ? めんどくさいよ」
「うるさい。嫌なら小遣いなし」
「なら、教師に許可証とってくれよ。一週間も学校反省なんて嫌だ」
いっそのこと停学処分にしてくれたほうが楽だ。
「面倒だから自分でして。私は教師の前で普通にレジ打ちしてたわよ」
「今と昔を一緒にするな」
どうやら、僕はまだまだ劣等感にさらされそうである。
よければ感想をよろしくお願いします。それをできるだけ反映させていきたいので。




